私が住む町の助け合いの絆
朝、玄関を開けたら2リットルのペットボトルのスポーツドリンクがドーンと10本、ビニール袋に入った状態で置いてあった。
『Amazonで頼んだかな?』
頭の中でここ数日の自分の行動を振り返ってみたが覚えがない。ビニール袋だし、伝票らしきものもついていない。スーパーの1枚5円で売っている白い買い物用のビニール袋。しばらく送り主不明のビニール袋を見ていたが、受け取って良いものやら悪いものやら判断がつかず、見なかったふりをして玄関を締めた。スマホを見るとママ友からメッセージが届いていた。
「コロナ大変だよね(涙)。ご飯もなかなか喉を通らないと思うから、水分とって元気出してね! 無理しないでね」
スポーツドリンク合計20リットル。自分だけでは運べないので、子どもに手伝ってもらって買ってきたとのこと。私は喘息とあいまって入院寸前の体調の悪さだったし、精神面でも不安なときだった(外出できない息苦しさ。子どもを置いて入院になるかもしれない不安)。そんな弱っているときに、友達が真冬に歩いてこの重たい荷物を運んできてくれたかと思うと、優しさに涙がにじんだ。
「コロナになったことを友達に知られたくない」特に若い女の子に多いと聞く。当時はコロナは隔離されて重症化率が高い病気だった。そして隔離期間を終えて回復した後も「コロナになった子」というイメージが付きまとう。それで朝一緒に登校している友達など、どうしても学校を休む理由を説明しなければならない最低限の相手にだけ事情を説明した。
スポーツドリンクの翌日は、別のママ友から焼き菓子の詰め合わせが届いた。案外元気な子どもたちは、すごい勢いで焼菓子を頬張る。コロナにかかったこと自体はかなり大変なことだった。でも、次々と届く差し入れを見て、すがすがしい気持ちになった。自分の身近で支えてくれようとしている人がこんなにもいるのかと、改めて気付かされたのだ。
コロナの流行のピークが開けるまでに、ご近所では複数軒のお宅がコロナに罹患した。一度自分が経験してみると、色々と差し入れしたいものが思いつく。スポーツドリンクのほかにも、「あのときはご飯を作る気力もなかったから、栄養補給ゼリーもあったほうがいいかな」、「子どもなら果物の差し入れは喜ぶかもしれない」、「久しぶりに焼きたてのパンが食べたいかもしれない」などなど。すっかり回復してからお礼に来てくださった方もいた。「しんどい中助けてもらいました」と頭を下げられた。「いえいえ。私も同じことをされたので、同じことをしているだけです」と心のなかで思いながら、私も頭を下げた。
私の周りには、たくさんのパートナーがいる。思いやりのリレーが上手な、頼れる人たちが同じ町に住んでいることに感謝して、ささやかながらお返しができたらと思いながら毎日を過ごしている。
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