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【短編小説】 嘘じゃないよ

「好き」って言えたらどれだけ楽か。
そう思いながら蓮は2月の空にため息をついた。

もうすぐ大学生。推薦で大学は決まっていた。
勉強には自信があるけれど、恋愛となると自信がなくなり、なかなか一歩が踏み出せない蓮。

月日が過ぎるのは本当に早いな、、
そう呟きながら蓮は"あの日”を思い出しながらいつも通り学校へ向かう。


"あの日"は高校の入学式だった。今でもあの日の記憶は鮮明に覚えている。
僕は、黒髪ショートボブがよく似合う女の子から目が離せなくなった。

-僕、朝倉蓮は入学式の日に太陽のように美しく輝くあやみに恋をした。-

あやみは明るいく優しい女の子。あやみは聞き上手でよく誰かの相談に乗っていた。だから、あやみの周りにはいつも友達がたくさんいた。しっかり者に見えるけれど、たまにおっちょこちょいなところがあって黒板消しを落として制服を真っ白にしたり、ライブが当たったって喜んでいても振込を忘れたと落ち込んでいる時もあった。だけど、僕にとってはそんなところも愛おしかった。
あやみが落ち込んでいる時はいつも、あやみの大好物の苺大福を買ってあげる。そしたら、あやみの表情はパーっと明るくなってひまわりのような笑顔で「ありがとっ」と言ってくれる。
その「ありがとっ」がなんとも言えない可愛さで、僕はあやみから目が離せなくなった。あやみに「ありがとっ」と言われるたびに嬉し過ぎて自分の顔は真っ赤になっていたと思う。でも、あやみにこの気持ちがバレたくなかったから、僕はいつもクールな顔をして「おうっ」と言うだけだった。



僕はサッカー部に所属し、エースとして活躍していた。自分でいうのもあれだけど、顔もいい方だと思う。だから、バレンタインにはたくさんチョコをもらったし、告白もされた。
だけど、僕はあやみが好きだったから、気持ちは嬉しかったけれど全部断ってきた。

"あの日"
「運命って本当にあるんだ。」
そういう感覚に陥った瞬間から僕の目にはあやみしか写っていなかったから。


僕は幸運にも3年間あやみとクラスが同じだった。10クラスもあるのにすごすぎるだろ。神様ありがとう。クラス替えの度に空に向かって神様にお礼を言った。


明日は2月14日。
今年こそはあやみに逆チョコを渡すぞ。
もう明日を逃したらきっと僕は言えないまま卒業してしまう。だから、僕は何があっても明日あやみに気持ちを伝えることをずっと前から決めていた。

どこでも寝ることができるのが特技なのに今日だけは
緊張しすぎてこれじゃ夜も眠れないよ。。
と思いながらも、結局10分くらいでいつも通りぐっすり眠りについた。

2月14日の朝。
この気持ちに嘘はない。
胸のこの痛みはもうあなたが最後かもしれない。
そう思いながらいつも通り家を出た。

前日の帰りに今日の放課後会う約束をしていた。
胸がドキドキしすぎて正直授業内容は全く頭に入ってこない。当てられても聞いていないから何にも答えられない。
蓮の頭の中は気持ちを伝える前にどんな話をしようかずっと考えていた。
直ぐにいうのは心の準備ができていないから、、まずはあやみが好きなDisneyの話と、、そう考えている間に授業はあっという間に終わってしまった。


ついに放課後が来た。

教室には僕たち2人しかいない。なんだよこのシチュエーションラッキーすぎるだろ。神様本当にありがとう。蓮は何度も神様にお礼を言った。
いや、そんなことを言っている場合じゃない。
「とりあえず何か話さないと。。」蓮は何を話そうかとぐるぐる考えていた。授業中あれだけ話す内容考えていたのに。緊張で全部忘れちゃったよ。。


夕日が2人を包み込む。
あやみもどこか緊張した表情に見えた。
先に口を開いたのはあやみだった。

あやみの手にはチョコがあった。


「蓮くん、あのね、私ずっと蓮くんのことが好きでした。入学式の日からずっと。」


蓮は嬉しすぎてあやみを強く抱きしめた。



「僕もだよ。あやみ。だいすきだよ。」


そして蓮はあやみの唇に優しくキスをした。

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