見出し画像

アルツハイマー型オカンと 「笑って暮らすぞ!」】その9 「リモコンて何や!?」

みなさま、こんにちは。

さて、オカンのサービス付き高齢者住宅(以下 サ高住)での生活が、
いよいよ始まりました。

このとき、がらやんは、
これで大丈夫や、やっと終わった!と、
安直に考えていました。

なぜなら、朝・昼・夜の食事は、
サ高住のほうで用意して持ってきてくれるし、
ヘルパーさんの利用回数や内容も、
デイサービスも全てこれまで通り。
食事以外、何にも変わらないように段取りしたのだから、
問題なんてあるわけない!と、安心していました。

これでやっと仕事に集中できる!
・・・訳なかったんですよね。

頭の片隅には、
エアコンとか、IHコンロの使い方とか、
覚えられなくて、とまどうかもな・・・
と、どこかで気づいていた部分はありました

そして、その予想をはるかに超えて、
がらやんを困らせる事態が次々起こってしまうのでした。


サ高住への入居翌日、
オカンの様子を見に、がらやんは仕事帰りに立ち寄ります。
コロナ流行の真っ只中だったので、
食堂は利用中止となっていて、
自室でひとり晩ご飯を食べていました。

おいしい?と聞くと、全然おいしくない!と
ちょっと怒り気味に答えるオカン。
もともと、甘めの味付けは嫌いで、
塩分多めが好きだったので、
まあ、それは仕方ないかな、と思ったのですが、
白ご飯とちょっとした漬物だけを食べて、
残りはすべて食べずにお膳を返そうとするではありませんか。

いくら何でもそれは栄養バランスが悪いし、
お金だってもったいない、
作ってくれてる人にも申し訳ない、
お願いだから食べて、と、どれだけ言っても、
頑なに食べてはくれず、
最後にはまたケンカになってしまうという、
いつもの親子ゲンカパターンが始まりそうになりました。

けれども、オカンがサ高住に入居するにあたり、
がらやんは、
なるべく怒らない、
なるべく否定しない、
なるべく笑って過ごす、
と心に決めた
ので、
(その割には前日に怒鳴り散らしてたのですが)

「残念やなあ、もったいないなあ、おいしいでー?」
「もう一口だけ食べへん?」
「ちょっと醤油入れたら、おいしいかもよ?」
などなど、必死で食べてもらおうとしたのですが、
全ての努力が水の泡。

確かに高齢者向けの食事は
減塩・薄味で、オカンの口には合わないだろなあ、と納得し、
ちょっと塩辛いものを食べれるように、
冷蔵庫にいつも明太子やら佃煮やらを常備するようにしました。
食費の半分以上を無駄遣いするような感じでしたが、
それよりも、がらやんが普通の職業人生を送るためには、
仕方のない出費だと思うことにして、
とりあえずの対策で冷蔵庫にオカンの好きな塩辛い系の総菜を、
常備しておくようにしました。

1日目はそんな感じで、最後は穏やかに終わり、
がらやんも、これぐらいはあるあるだわね、と思いながら、
自宅に帰りました。

2日目。
当然、同じように、おかずを残していましたが、
これはもう、がらやんとしては納得して解決している件なので、
怒らず、笑って過ごしました。

が!
もともと持っていた家電が、
とことん使えなくなって
いて、例えば、

電子レンジは、どのダイアルを回せばいいのかわからない、
そもそも、怖いから、電源はすべて抜いてあって、
どれをコンセントに差したら動くのか、もわからない


・全てのことに興味が一気になくなって、
テレビを見ようともしないし、
どこを触ればテレビがつくのか、
チャンネルは何を触ればよいのかわからず、
リモコンのCSボタン(ケーブルテレビ用ボタン)を押してしまって、
何にも映らなくなって、壊れてる、と訴えてくる


寒いからエアコン付けようとするけれど、
リモコンのどこを押したら動くのかわからなくて、
あちこちボタンを押し、結局冬なのに冷房をつけていた。

などなど。

2日前まで使えてたよね?
認知症、そんなにひどかった?
いやいや、ひどくなかったはずやん?
さすがに2日ぐらいで、そんなに進むはずないよな?
たまたま重なってるだけやんな?

と、がらやんは自分を納得させるように、
多分大丈夫なはず、と思いこもうとしました

家電に関しては、ひと通りの使い方を説明して、
覚えられなそうなことはメモを書いてテーブルに貼り付けて、
2日目もとりあえず終了しました。

しかしこの日、さすがにがらやんは良くない雲行きを感じていました。
高齢者には新しい環境が大きなストレスになり、
認知症が進んでしまうことがある、という、
よく聞くお話が、今、がらやんの目の前にやってきているのかも
、と。

けれど、引っ越しは完了しているし、
すべての手続きも終わっているので、
がらやんとしては、介護や引っ越しで、
休みを多くとらせてもらっていた職場に、
しっかりと恩返しをしていかないと、と、
オカンと仕事の両方に対して、
どんなに大変でも対応していくしかない状況でした。

そして3日目の夜、
2日目の夜とほぼ同じことを聞いてくるオカン。
テーブルに貼りつけていたメモは、
はがしてどこかにしまい込んでいて、
わからなくなっていたり、
リモコンもあちこちに収納していて、
すぐに取り出せないようにしていました。

これはちょっと危ないかも。

と思ったものの、特に何をしておいたほうがよいか、は思いつかず、
昨夜と同じように、リモコンの使い方を簡潔に書いたメモを、
テーブルに再びしっかりとはがせないように貼り付けたり、
夜でしたが、気分転換の散歩にも連れ出したりして、
なんとかやり過ごし、
がらやんは夜10時すぎに自宅へ帰りました。

お風呂に入ったり、晩御飯を食べたりして、
さあ、寝ようと思ったとき、
オカンから電話が入りました。

「エアコンがつかへんねん!
どないしたらええのん?」

時計を見ると、深夜0:30。

このころ、がらやんは仕事が立て込んでいて、
朝7:00には会社に到着して業務を開始していました。
毎日、起床はたいてい5:30です。

さすがに、勘弁してくれ、という気持ちになり、
ちょっと邪険な対応になってしまうがらやん。
「机の上にリモコン置いてたはずやから、
まず、それを見てくれる?」と、伝えると、

「どれのことや?」と聞いてきました。
耳が遠いこともあり、わかりにくいのかな?
と、もう一度同じことを、ちょっと怒りモードで言うと、
オカンもイライラしたようで、

「リモコンてなんやーー!?」と激怒。

「リモコンてなんのことかわからんわ!
なんとかして!」と続けて叫ぶオカン

リモコンが何かわからなければ、
エアコンの操作など、できるはずはありません。
やっぱりまた腹がたってきて、
「今から行くから待っとけ!!」と怒鳴り、
深夜にオカンの家に急行。
どかどかと部屋に上がり込んで、
リモコンを探し当てて、
「リモコンはこれや!しまうな(収納するな)!」と、
怒鳴りながら操作して、
「もう朝まで触ったらあかん!」と吐き捨てるように怒鳴って、
すぐに自宅に戻りました。
オカンは、がらやんが来たことにホッとしたのか、
それほど逆上しておらず、
がらやんが帰るときには、
ありがとう、という言葉をかけてくる
ぐらいに、
落ち着いていました。


がらやんは、
ああ、また怒ってしまった、
怒鳴っても仕方ないのにな、
たぶん認知症のせいで、もうリモコンが何なのかもわからなくて、
助けてほしくて電話してきただけやのにな、
と帰り道、激しく後悔
していました。

自宅に戻ってからも、
リモコンが何かもわからないのか・・・
サ高住に入居してたった3日で、
認知症がすすんでしもたんやな、
それほどまでにオカンにはストレスで、
つらいことなんやな、と、
ベッドに入ってからもずっと考えていました。

オカンの認知症の引き金を、
がらやんが引いてしまったことは間違いなく、
当然もう元には戻るはずもないので、
サ高住に住んでもらおうという決断は、
正しくなかったのかも
なあ、
自分の仕事を優先しすぎたかもなあ、と、
ちょっとだけ反省モードに。


この、反省モードが、ちょっとだけ、だったのは、
オカンが毎日ものすごい強気で、
しょっちゅう、がらやんを怒らせたり、
サ高住のスタッフさんのことを悪く言ったりしていたので、
つい、がらやんも誓いを忘れて、
きーっ!と言い返してしまうことが時々あったからなのでした。

強気オカンは、さらにこの数日後、
デイサービスの送り出しに来たサ高住スタッフさんを延々説き伏せて、
勝手にデイサービスを休んで
しまいます。

次回、その10 「デイサービスには行きません」です。
オカンを送り出しに訪れたプロのスタッフですら、
あきらめてしまうほどの執念の説得です。
お楽しみに!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?