羽生結弦氏の「春よ、来い」にみる祈りと、人の本来あるべき姿
私はオリンピックを観てないし、フィギュアスケートについても疎いけど、羽生結弦氏の演技がどんどん祈りや神事に近づいているのを感じています。「陰陽師 SEIMEI」からでしょうか? 詳しくないので違っていたらごめんなさい。
今回のエキシビジョンでの「春よ、来い」はとくにその色合いが強かったように思います。私がそういう感じが好きなので、そう観てしまうのかも知れせんが。
演技が演技を超えて祈りに到達しているなーと観てて思いました。祈りになることで、演技が一つの儀式や神事として成り立っているのを感じました。彼自身もそういう思いはあるんだと思います。
オリンピック選手というより、人としての祈りを、彼はフィギュアスケートを通して表現しているのかな、と思いました。それを表現力、演技力と言うのかもしれませんが、今回の演技は「祈りを表現している」のではなく、演技そのものが祈りでした。そうありながら、観客に見せる演技だという視点もしっかりと踏まえているところはさすがです。
天と地と人と。
この地球は決して人間が好き放題すべきものではなく、森羅万象と響き合ってこそ、人は本来の人としての機能を発揮できるのではないか…?
そんなことを思いました。
森羅万象と共鳴する。
そのための祈り。
祈りと言っても手を合わせて拝むことではなく、いろんなカタチがあります。
羽生氏はフィギュアスケートの演技というカタチでそれを表現しました。
自分ができることを通して、天と地とのつなぎ役、触媒となり、地の思いを天に、天の思いを地につなげ、人体という媒体を通してそのエネルギーを解き放ちます。自分はこれを言いたいという自己主張的な自己表現ではなく、感謝の気持ちとともに天地への奉納です。天地や自然と同化し、すでに精霊がかっていながら、とても人間味に溢れています。
神楽は「神が楽しむ」「神を楽しませる」という意味があります。太陽の力が弱まる冬至頃に、神を喜ばせるために、地上で神の物語を再現して太陽の力を呼び戻そうとする呪術的祭礼、と聞いたことあります。きっと昔はそこに神と人とが交流する場があったのでしょう。と言っても情報的に、ですけど。
今回の羽生氏の演技(舞と言ってもいいぐらいですが)は、春を待ち望み、歓迎する様を表現することで、それが呼び水となり、春の精霊(エネルギー)を目覚めさす類感呪術的な要素をもっていると思います。「陰陽師」あたりから、自然界との霊的な関わりを示唆する神事としての演技になってきているなあと感じています。
オリンピックというと、点数や勝ち負けを競う競争のイメージがありますが、彼はそういうレベルを超え、別な境地に至っているようです。自分と自然と宇宙との聖なるコラボレーションであり、彼の世界観であり、彼の表現方法なのでしょう。
観客に見せる演技だという視点もしっかりと踏まえているところはさすがです。
オリンピックのフィギュアスケートで、そういう視点をもったスケーターは私が知っている限りではいません。と言ってもあんまり知らないのでなんですけど。
全世界に注目されている選手がそのような姿を見せてくれたのはとても大切なことではないかと思います。人としてどうあるか?本当に大切なことは何か?を見せてくれたように思います。
現代社会では、人の心の美しさが忘れられてしまった感があります。
羽生氏が表したのは、感謝であり、苦悩や困難であり、生きる喜びであり、優しさでもありました。
人生における数々のこと。決して楽しいことばかりではなく、大変なこと、辛いこと、しんどいこと、悲しいこともたくさんあります。それらをひっくるめて慈しむことができたら、そこには感謝と慈愛と畏敬の念が生まれるのではないでしょうか? それはそのまま祈りとなります。
祈りは響き、波動です。それが伝わることによって事象が動きます。
最近、児童書の「水の精霊」がまた読みたいなーと何度か思い出していたのですが、今また思い出しました。物語の最後の方で、少年と少女の純粋な霊的覚醒により、光の風が吹き渡ります。その表現がとても純粋でさわやかなのですが、今回の羽生氏の演技と似ているように思います。その覚醒の風を感じ取った者が今度はそれを体現していく側、広げていくことが示唆されます。
羽生結弦氏の「春よ、来い」も春の精霊を呼び起こし、一部の準備ができた人たちを覚醒させる力を秘めていたのではないでしょうか?
人生やこの世界ではいろんなことがあります。だから「春よ、来い」と春を待ち望みます。この「春」はもちろん季節の春だけではなく、人生の「春」にも例えられます。
今年の冬は寒さが染みました。閉塞的な気持ちを味わっている人も少なくないでしょう。羽生氏の春を呼ぶ”儀式”は、多くの人の心にも春の兆しを含んだ風を吹かせたのではないでしょうか?
「春よ、来い」の歌自体が心に響く歌ですから、選曲もよかったですね。
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