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オキシトシンは本当にラブホルモンなのか?

私達の身体には様々なホルモンがあり、心身両面の機能を支えています。その中の一つに女性ホルモンの一種であるオキシトシンがあります。オキシトシンは通常出産前後に分泌が増加し、女性の母性を育むことから愛のホルモンとも呼ばれます。また母子関係だけでなく男女の絆や社会的つながりにも関わるとされいます。今回取り上げる論文は、このオキシトシンと愛の関わりについて深く調べたものになります。

オキシトシンと愛:神話、隠喩、そして謎
Oxytocin and love: Myths, metaphors and mysteries

この論文ではオキシトシンについて論じられた様々な文献を元に、愛とオキシトシンがどの程度関係しているかに論じているのですが、それをまとめたものが以下となります。


Carter, 2022, tabel 1
  1. MODERN (evolutionarily recent):オキシトシンと愛はどちらも比較的新しい進化の産物である。オキシトシンは哺乳類の進化に伴って出現し、愛も人間に特有の高次の情動といえる。

  2. Associated with SELECTIVE sociality & bonds:オキシトシンと愛はどちらも、選択的な社会性と絆の形成に関与する。オキシトシンは特定の相手への愛着を促し、愛も特定の相手との排他的な絆を生む。

  3. Supporting parental investment:オキシトシンと愛はどちらも、子育てへの投資を支える。オキシトシンは母性行動を促進し、愛は我が子を大切に育てようとする動機を与える。

  4. Metaphor for SAFETY:オキシトシンと愛はどちらも、安全の象徴となる。オキシトシンは脅威認知を低下させ、愛する人との絆は安心感を与える。

  5. Selectively rewarding:オキシトシンと愛はどちらも、選択的に報酬的に働く。オキシトシンは特定の相手との関わりを心地よいものにし、愛する人との交流は喜びをもたらす。

  6. Anti-inflammatory/Anti-oxidant:オキシトシンと愛はどちらも、抗炎症・抗酸化作用を持つ。オキシトシンは炎症性サイトカインを抑制し、愛情深い絆は健康を促進する。

  7. Anxiolytic/Analgesic:オキシトシンと愛はどちらも、抗不安・鎮痛作用を持つ。オキシトシンは不安を軽減し、愛する人との絆は痛みを和らげる。

  8. Allows immobilization without fear:オキシトシンと愛はどちらも、恐れなしに動けなくなることを可能にする。オキシトシンは脅威下でもリラックスを促し、愛する人との física de contactoは安心感をもたらす。

  9. Sexually dimorphic:オキシトシンと愛はどちらも、性差がある。オキシトシンの作用には性差が見られ、愛の表現方法も男女で異なる。

  10. Epigenetically tuned and Context dependent:オキシトシンと愛はどちらも、エピジェネティックな調整を受け、文脈依存的である。オキシトシンの効果は発達過程での経験によって変化し、愛も状況に応じて多様な様相を見せる。

このようにオキシトシンと愛には機能的に重複する点が多いのですが、愛はオキシトシン以外にも様々なホルモンの働きが影響するため、愛=オキシトシンとは単純に捉えられないことも述べられています。


明日読む論文:
Endorphins, oxytocin, sexuality and romantic relationships: an understudied area
エンドルフィン、オキシトシン、セクシュアリティ、恋愛関係: 研究が進んでいない分野


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