愛と権力と国際関係
本を読んだりものを書いたりするが、その根底にあるのは「人間とはなにか?」という問いである。この問いがあるゆえ、大学では国際政治学を学び、おじさんになってから大学院で脳科学の研究に足を突っ込むことになる。
今、取り掛かっているテーマは人間の所属欲求である。人間は社会的動物であり、孤独に耐えることができない。どんな状況でも繋がりを求め、仲間を作り、どこかに身を置きたいと欲する生きものである。その所属欲求に関する文献を読み込む中、ある著名な国際政治学者の名前を見つけた。
ハンス・モーゲンソー、たしかに聞き覚えがある。昔、何かの授業で読んだ覚えもあるし、ひょっとしたら卒論で引用したかもしれない(ゼミはモーゲンソーと同じゴリゴリの現実主義のところだった)。
このモーゲンソーが国際政治学の学術雑誌に寄稿したエッセイが、人間の所属欲求に触れた心理学の論文で引用されていたのだ。
どれどれと思って覗いてみると、愛と権力の関係についてのものである。
愛と権力は矛盾するようだが、共に孤独感から生まれたものである、と論じる。人は孤独に耐えられず、愛を求めることになる。他者との愛は常に不完全で不安定なので、それをどうにかしようとした人は権力を行使することになる。しかし、その権力は愛そのものを腐敗させてしまうリスクがあるのだと。卑近なところだと束縛愛やDVなどがこれに当たるのだろうか。
どんな権力者であっても愛を強制できない、という一文が響いた。
孤独と愛と権力の関係は、一般社会や政治学でも通用するスキーマかと思うが、イヤイヤ期や反抗期などの心理学でも当てはめられるのかなとも思う。
人生は長い。不完全や不安定の橋を無事、バランスを取りながら渡りきりたいものである。
【参考文献】
MORGENTHAU, HANS (1962a) Love and Power. Cominentaiy 33 (3): 247‐251.
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