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LF/HFは自律神経系のバランスを正確に反映しない

私達は普段テンションが上ったり下がったりと忙しいが、これを調整しているのは自律神経系である。交感神経はテンションを上げ、副交感神経はそれを戻す働きがある。

また自律神経指標に心拍変動がある。心拍変動とは心拍のゆらぎのことで、一般に交感神経が優位になると心拍は時計の針のように一定間隔で波打ち、副交感神経が優位になると、早かったり遅かったりというゆらぎが生じる。

さらに心拍変動を示す指標にLF/HFがある。LFは心拍変動の低周波成分で一般には交感神経の活動を反映すると考えられている。またHFは高周波成分で、これは副交感神経の活動を反映すると考えられている。

そのため、LF/HFは交感神経活動/副交感神経活動ということになり、どれだけ交感神経が強く(あるいは弱く)働いているかの指標となる、とも考えられている。しかし、今回取り上げるのは、この考え方は間違いだと論じるものである。

LF/HF 比は心臓の交感神経と迷走神経のバランスを正確に測定するものではありません
The LF/HF ratio does not accurately measure cardiac sympatho-vagal balance

この論文によると、LF/HFが自律神経バランスの指標として成り立つためには、
(1)心臓の交感神経活動は、心拍数のパワースペクトルのLFピークの原因となる主要な因子である。

(2)心臓の副交感神経活動は、心拍数のパワースペクトルのHFピークにのみ関与している。

(3)心臓の交感神経活動および副交感神経活動の相互の変化を引き起こす(すなわち、心臓の副交感神経活動の亢進は、常に心臓の交感神経活動の低下を伴い、その逆も同様である)。

(4) 心拍変動(HRV)に対する心臓の交感神経活動と心臓の副交感神経活動の影響の間には単純な直線的相互作用がある。

という前提が必要であるが、これら全てにおいて誤っていることが実証されており、そのためLF/HFは自律神経バランスの指標になり得ないとのこと。

また実際には以下の図のような非線形的関係にあるとのこと。


論文 figure 1を参考に筆者作成

Q: そもそも心拍変動はどのようなもので、どのような指標があるのか?

明日目を通す論文:
心理学における心拍数の変動: HRV 指標のレビューと分析チュートリアル
Heart Rate Variability in Psychology: A Review of HRV Indices and an Analysis Tutorial


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