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憎しみは怒りや恐れとは異なるのか?

集団間の憎しみは多くの悲劇をもたらします。しかしこの憎しみとは一体どのような感情なのでしょうか。今回取り上げる論文はイスラエル市民を対象にしたパレスチナ人に対する憎しみを調査したものです。憎しみという感情が怒りや恐れとどのように異なるものなのかについて示しています。

イスラエルの難治紛争における集団ベースの憎悪
Group-based Hatred in Intractable Conflict in Israel

この論文は3つの一連の研究をまとめたものになります。これらの研究ではイスラエル市民を対象にインタビューを行い、パレスチナ人に対する憎しみがどのようなものなのかについて掘り下げて調べました。結果として、憎しみは怒りや恐れとは以下の点で異なる独自の感情であることが示されています。

  • 着目点の違い:憎しみは相手の行為の意図性と悪の性質に着目するのに対し、怒りは不当性、恐れは対処の困難さに着目する。

  • 目的の違い:憎しみは相手への害意と排除を目的とするのに対し、怒りは改善を、恐れは安全を目的とする。

  • 動機づけの違い:憎しみは相手への攻撃、排除等の行動を動機づけるのに対し、怒りは改善、恐れは回避を動機づける。

  • 憎しみの独立性:憎しみのレベルは怒りや恐れとは独立して変動する。

  • 認知や行動への影響:憎しみに関連する認知や行動は、怒りや恐れとは異なる影響を与える。

総じて相手の本質の中に悪が存在するというのが憎しみの認識の特徴だとも述べられています。

Q: 憎しみは改善できるか?

明日読む論文:
集団間の関係を改善し、平和を促進するための、個別化された心理的介入の新しい枠組みに向けて
Towards a new framework of personalized psychological interventions to improve intergroup relations and promote peace

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