意識の流れとデフォルトモードネットワーク
私達の意識は現れては消える言葉の川のようなものである。
例えば、「ああ、腹が減った、そういえば朝ご飯は軽めだった、こんな食生活でいいんだろうか、腹八分目だというし・・・・・・」というように絶えず、言葉が流れては、消えていく。
このような心のあり方を心理学の泰斗、ウィリアム・ジェームズは「意識の流れ」と読んだが、脳科学的にはこれはどのようなものと考えられるのだろうか。
私達の脳はいろいろなことをやってのけるが、その中の一つに「ぼんやりする」というものがある。これは意識を内側に向けるような働きで、お腹の減り加減や過去の記憶、未来の計画など、自己意識全般を形作る営みである。
そして脳にはデフォルトモードネットワークと呼ばれるシステムがある。前頭前野や頭頂葉、側頭葉の幅広部分が繋がり合ってできたもので、自己意識に関わるものである。
またデフォルトモードネットワークの他に、外部に意識を向ける前頭頭頂ネットワークや、意識の切り替えに関わるセイリエンスネットワークがある。
気持ちがぼんやりしていても、ちょっとした物音や光で意識が外部に向かうことがあるが、この切り替えに関わっているのがセイリエンスネットワークである。
もう一つ付け加えれば、「ぼんやり」が関わるものは結構幅広いものになる。例えば、自分が何者かを意識したり(自己参照)、相手の心をそれとなく感じたり(社会的認知)、昔のことを思い出したり(エピソード記憶)、意味を把握したり(意味的記憶)などがある。
ぼんやりしているときは、これらがないまぜになって冒頭に上げた、とりとめのない言葉の川(内言)を生み出すことになる。
このデフォルトモードネットワークについて、2週間ほどかけて掘り下げてみたい。
【参考文献】
Menon V. (2023). 20 years of the default mode network: A review and synthesis. Neuron, 111(16), 2469–2487. https://doi.org/10.1016/j.neuron.2023.04.023