ユニットバスによるフルリフォームが一般的
ユニットバスによる浴室のフルリフォームが普及しはじめたのは、20年ほど前からです。
ユニットバスが登場するまで、大手ハウスメーカーは、主力商品である戸建住宅の在来工法による浴室だけを採用していました。
その浴室は高級感のある石やタイルなどを使った、独特の作りです。
そのような作り方にこだわりがあったメーカーとしては、「住宅の躯体に合わせた設備を作れないユニットバスは利用したくない」という考えを持っていました。
確かに、住宅の躯体に合わせて石やタイルなどで作った在来工法の浴室は高級感があります。
一方、ユニットバスは「ただのプラスチックの板」をプラモデルのように組み合わせただけなので、在来工法のような高級感を出すことは難しくなるでしょう。
メーカーとしては、「ただ組み立てるだけ」の浴室ではなく、あくまでも「その家オリジナルの高級感のある浴室」にこだわっていたのです。
ただ、石やタイルなどの高級な素材を使った在来工法の浴室は、メンテナンスに苦労します。
それらの素材には「水垢」が付きやすいからです。
なかでも、うろこ状になった独特の水垢が付きやすくなります。
しかも、それは「無機系」と呼ばれる汚れに分類され、同じ無機系である石やタイルと付着の相性がよいのです。
そのため、水垢が素材にくっつくとなかなか取ることができず、お手入れが難しくなります。
ましてやそれが大きな浴室になると、さらにお手入れの範囲が広がって大変になるわけです。
そのため在来工法にこだわっていたメーカーでも、20年ほど前からお手入れしやすい「ユニットバス」に切り替えるようになりました。
また、時代の流れとともに戸建住宅に住む人の価値観が変わったことも、ユニットバスが普及したことに影響したのでしょう。
昭和一桁の時代に生まれた人たちは、在来工法で作られた浴室で育ってきたという時代背景もあり、「在来工法の浴室が当たり前」というイメージを強く持っています。
そのため、在来工法で作った浴室にステータスを感じていたはずです。
一方、現在の子育て世代はユニットバスの家で過ごすことが当たり前になっているので、むしろ「在来工法の浴室は特別」というイメージを持っています。そもそも、自宅の浴室を高級にしようとも思わないでしょう。
このほか、フルリフォームをスピーディーに実施できるという利点もあり、「ユニットバス」でのフルリフォームが一般的になりました。
小林誠司 紹介VTR
(TV番組「密着ドキュメンタリー分岐点」より)