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刀剣短歌本のこぼれ話

刀剣短歌の本を出した後にスペースで話していたようなこぼれ話を文字に残すことにしました。ついでに装丁についてもまとめています。


「ひとふりのうた」乱藤四郎短歌本

2023年3月発行。

装丁について

印刷:おたクラブ様
表紙:パールスノープラチナ235kg
本文:上質90kg
遊び紙:カラートレペライトピンク
口絵:トレーシングペーパーにカラー印刷
その他:表23印刷あり、ピオニーの香り付き、ノベルティとして封筒に入った揃いのデザインの名刺。

表紙用紙は期間限定の斤量でした。厚くて固めです。
遊び紙と口絵が透けて扉が見える仕様。
おそらく他の印刷所で扱っている遊び紙と勘違いしていたのかと思いますが、カラートレペが想定よりも濃く鮮やかな色でした。これはこれで可愛いのですが狙い通りではなかったのが少し心残りでもあります。

香り付けにはアロマオイルを利用しました。本とノベルティを、アルマオイルをコットンに沁み込ませたものと一緒に密封しておくと香りが移ります。

こぼれ話

自分が自分らしくあろうとする時それを妨げようとする誰かの視線や価値観に晒されることと、そうした時に乱ちゃんがどうするのかを描きたかったため、外からの視線を意識している歌がいくつかあります。
タイトルにもした「唯一の音色で響けお砂糖でできてはいないひとふりのうた」はその答えの総集のようなつもりで最後に載せた歌でした。「お砂糖」は前の章の「砂糖菓子みたいに甘くてあどけないボクが好きでしょきっと、ごめんね」を受けています。解題は修行の内容に触れるので避けます。といっても〈修行の内容に触れる〉ということが解説になるのでは…と思うのですがいかがでしたでしょうか。この本は、あまりわかりにくいのではなくてすっと心に入ってくる歌たちだったらいいなと思います。
乱ちゃんがキラキラしているとこちらまでキラキラできるような元気をもらえるのが彼の魅力だと思っています。そんな彼の歌らしく、御守りになってくれるような本になっていたら幸いです。


「愛は透明」一文字則宗短歌集

2023年6月発行。みそひともじのきっさきで参あわせ。

装丁について

印刷:本文プリペラ様、表紙のみ自宅印刷
カバー:クラシコトレーシング-FS 35.5kg
表紙:クラフトペーパーデュプレN 124kg
本文:モンテルキア 39kg
その他:自宅製本。本文には原稿用紙風の飾り枠を印刷。ノベルティとしてポストカード。

原稿用紙風の枠を作って短歌を流し込む、できればそれを則宗さんの短歌でやる、という案自体は本の内容を考える前に持っていて、飾り枠を作っていました。飾り枠をペラ一枚に印刷したものに短歌を手書きして遊んだりもしています。
その後クラフトペーパーデュプレに惚れて、ぜひこれを使いたい!と印刷所を調べたのですが丁度良いところが見つからなくて自宅での表紙印刷・製本を決めました。
この紙を扱っていて、(無線綴じ用原稿をつくるのが面倒だったために)中綴じを希望で、お手頃の値段で、できればトレペカバーを付けられて…と欲張りすぎたのでそれはそう。自宅製本にしたおかげでトレペカバー付きも叶いました。
本文を印刷所に頼んだ後カバーと表紙の紙を購入し、事前に試し刷りをして、自宅印刷でも問題はないことを確認したついでに軽く色校正みたいなこともしました。
大雑把な私にはホチキスできれいに綴じるのが難関でしたが、則宗さんならいびつなものを愛してくれると言い張ってなんとか作り上げました。仕上げに化粧断ちをしています。

こぼれ話

表紙には"Je veux que tu sois aimée."と書いてあります。これは「あい うぉんと ゆー とぅー び、らぶど」のフランス語のはずです。愛を語るならフランス語と言うからフランス語です。
タイトルは「あい うぉんと ゆー とぅー び、らぶど 希釈したわけでもなくて愛は透明」から。この章では愛を説く側でありながらも愛に対してどこかなじみの薄いような、ひらがなのたどたどしさが似つかわしい則宗さんを描きたかったのでした。
各章の則宗さんは別個体かもしれないな、と想定していました。後書きに書いた通り、各章は独立したものでありながらつながったものです。それぞれの則宗さんに個体差はあるかもしれないけれど、みな一文字則宗であるという共通項を持っています。

「花とふきよせ」刀剣短歌まとめ本

2023年8月発行。

装丁について

印刷:REDTRAIN様
カバー:HS画王130.5kg
表紙:マットポスト180kg
本文:b7トラネクスト86kg
見返し、遊び紙:紀州の色上質厚口浅葱

せっかくのまとめ本なので、厚い本をフルカラーで、一度使ってみたかった微塗工紙の本文用紙、一度やってみたかった見返しとカバー付き、とちょっと贅沢をしました。

こぼれ話

タイトルは「花のように吹き寄せて」の意味。巻末の「思い出は花とふきよせ言の葉はこぼれこぼれてあなたをおもう」より取っています。
再録本なのですが、短歌自体は既出でも画像は新しく作ったものの割合が多くなったので再録と呼ぶのもなんだか違う気がしてまとめ本と呼んでいます。
本文データをオンラインで公開しつつ紙の本も頒布するという形をとったために少部数だったのですが、すぐに完売してしまって申し訳なかったです。

「闇の中でも陽気に踊る」江短歌集

2023年10月発行。ミュージカルの要素あり。

装丁について

印刷:おたクラブ様
表紙:ハイマッキンレーポスト220㎏ クリアPP
本文:書籍用紙90㎏
遊び紙:アストロブライトグリーン
その他:表23印刷あり

江の本を作っているけれど装丁は決まっていない、というときにフォロワーさんとやってみたい装丁の話をして、アストロブライトを使ってみたいという話になったので使いました。ちなみにそのフォロワーさんもアストロブライトを使った本を作ることになりました。
ところで、それぞれのメンカラの紙を使った7冊セットの江アイドル本という案もあったのですが実現する方がいたら是非教えてほしいものです。

こぼれ話

タイトルは「踏み鳴らす足がなければ手を叩き闇の中でも陽気に踊る」から。江とお化けは見たことがない、お化けには足がない、という言葉遊びのようなものでした。
短歌にも2回出てきて章タイトルでもある「カラフルな闇」というフレーズについての補足として、闇と言うのは光がなく色がないからこそ闇なのですが、本当に何も見えないのか、実はのっぺりとした闇の中にも埋もれているものがあって、目で見えないなら手を伸ばせば何かわかるんじゃないか、といった前向きなニュアンスを込めたつもりです。
9月中に脱稿するという目標があったのですが、事情があって急遽9月末に家を空けることになり、結構な割合を旅先で詠みました。ちょうどすえひろがりの期間中だったこともあって原稿中のbgmは刀ミュのトラックでした。
息の詰まった感じの歌が多くなって、そういうのがやりたかったといえばやりたかったのですがもっとのびのびとした歌も詠みたくなりましたのでまた江の、今度はミュージカル要素なしの連作も作りたいです。



おわりに

次にまた刀剣短歌本を出すのは来年になると思うのですが、そのときにはまたこうしてnote記事にしてみようかなという気持ちでいます。
最後に、「愛は透明」、「闇の中でも陽気に踊る」については執筆中の現在在庫がありますので宣伝させていただきます。

以上、お読みいただきありがとうございました。

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