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「元を忘れず末を乱さず」
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関西育ちの私は潮来に地縁がなく、親戚も知り合いもいなかったため、とりあえず毎日違う飲食店に行くようにしました。知らないお店に一軒ずつ顔を出し、常連さんたちに「潮音寺です」と挨拶を続けて三ヶ月が過ぎたころ、気が付けば向こうから声をかけてもらえるようになっていました。そこで知り合った方の勧めで青年団体や法人会などに入会し、見る見るうちに茨城県内の知人が増えていきました。
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かなり最近まで私はこのことを「自分の努力によるもの」だというつもりでいましたが、実はそうではなかったのだと思うようになりました。例えば街中で慈母観音と言えば「自分は慈母幼稚園出身だ」とか「橋本登美三郎さんにお世話になったからお参りに行く」などという声をよく耳にします。願主が三十三回忌を迎えた今でも、です。
また驚いたのは、所属している青年団体で大変お世話になった土浦の方が「入会当初に潮来の先輩の誘いで潮音寺に研修に来た」ことがあり、その記憶から親しく感じてくださっていたのだそうです。まさに先輩が、創建願主が、慈母観音様が積み重ねてくださった上に生かされているのだということを痛感しました。そしてだからこそいい加減な生き様で先達の顔に泥を塗るようなことはできないと知りました。
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父母恩重経にも「常に報恩の心を抱き、片時も忘るることなかれ」と説かれている通り、「母と子を護らせ給え」という思いを託されたこのお寺に最も必要なのは親子の絆、恩を学ぶ場だと信じています。そこで広く諸団体に門を開き、花あかりや万燈会といったお寺としての行事だけでなく様々な企画が催されました。ゴールデンウィークにはお寺が遊園地に変わり、大勢の親子の笑顔が見られました。他にも夏祭りにハロウィーン、来年はなんと成人の日に振袖のファッションショーまで開催される予定です。生きた思いが受け継がれていてとても嬉しく、有難く思います。
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有難いと言えば本年は開山会に両親が遠方より駆けつけて参列してくれました。恵まれた時代に養ってもらった恩も忘れて迷惑ばかりをかけてきた父母に見守られながらの法要は、震災で亡くなられたご家族や現在のウクライナなどではどんなに願っても叶わないものであり、身に余る幸せを頂戴したと思っています。
そのような恩に報いるということは、いただいた命の連続の末席にいることを自覚し、恥じることのないように生きていくということに他なりません。この潮音寺により多くの縁が結ばれ、心の安らぎを得る人を増やすことが私にとって最高の恩返しです。また、皆さまが気付きや学びを得て前向きに生きていくことも皆さまにとっての親孝行になるのではないでしょうか。
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