ザメラ

燦々と陽光照らす太陽の下、クルーザーに揺られる8人の若者がいた。
誰も咎める者のいない洋上で彼らは大音量で音楽を流し、あるものはアロハシャツ、あるものは水着、又は何も身につけず絡み合う男女の姿もあった。

船尾で酩酊する金髪の女子大生は、いつ吐いても良いように海面を覗き込んだ。
「んー?」
彼女は海面を滑る何かを見た。もう一度目を凝らして確認しようとした時、それはもう目の前に現れていた。

バシャーン!

「あ?」「明菜ー?」
「やべんじゃね?落ちたの?」
「え、ちょっと、海赤くない?」
その瞬間だった。

ガシャーン!!

船体が海から突き出た巨大な腕に掴まれたのは。
「キャーッ!?」
何が起きたのかも分からぬまま、若者達は船体ごと巨大な口に飲み込まれた。

ギャアアアアオオオン!!

海上に顔を出し咆哮するそれは、再び海中に沈むと背びれを海面に滑らせ泳ぎ始める。

それは抑えられぬ食欲に身を動かされ、日本へと近づいていた。



#逆噴射小説大賞 #逆噴射プラクティス

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?