【総天然色】川の大怪獣イクラドン

きっかけは果たして、巨大製薬会社の薬品流失のせいだったのか。それとも密漁者が無残に腹をかっさばいた死骸を大量に投棄したからであったのか。

責任の所在を問うものは、今は居ない。この国の人間は既に半分になってしまった。
「この世の終わりよ……」
「米軍が核兵器を使うって本当なのか?」
“水辺”に住んでいなかったわずかな生き残りは、身を寄せあうように恐怖に耐えている。

「あいつが、あいつが来るーーッ!」
遠くからの地響き。巨大な質量の災害が、一歩一歩、死を齎しに現れる。
奪われた我が子を取り戻すために。我が子を奪った人類に復讐するために。

【ゴアアア……ココココ……】

それは溯上する殺戮。裂けた腹から死を産卵する大怪獣。

川の大怪獣、イクラドン。

全てを語るには、それが東京湾現れ、首都を壊滅せしめた1ヶ月前から説明する必要がある。



#逆噴射小説大賞 #逆噴射プラクティス

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