21.8.4. 重箱の隅の重箱

98.今日の一日
 せっかくの夏休みなのだ。何か生産的なことをすべきでしょう。とりあえずフランス単語を毎日少しずつ覚え直すことにしました。1日目はどうにか全うできました。
 昼食後に個別指導をして、夜は映画美学校の第二回の授業を受けました。お昼ご飯は十年以上ぶりのサイコロステーキでした。形成肉のチープで懐かしい味わいに箸が進み、思わずおかわりをしてしまいました。痩せたい。

99.重箱の隅の重箱
 中学受験を見据えた女子小学生も個別指導しています。国語担当です。知っていますか? 中学受験の国語はなかなかどうしてレベルが高いということを。自分の考えを自由に述べさせるタイプの記述問題もさることながら、小中高どの段階でも深掘りしないようなマニアックな現代語文法は特に難しい問題が多く、小学生でなくても苦戦してしまうものです。

 さて、以下の語群をご覧ください。どんなグループ分けだかわかりますか?

①雪国、水色、川岸
②冷水、風鈴、遊泳
③重箱、職場、額縁
④湯桶、敷金、豚肉

 正解。①は訓読みと訓読みの組み合わせです。対して②の音読み動詞の熟語。つまりグループ分けの規則は「訓音の組み合わせ」なのでした。ちなみに①と②の熟語は今僕が適当に並べました。言の葉の中でくらい涼みたい葉月。
 ③と④で避暑しなかったのは、単にそれが難しかったからです。訓音あべこべの熟語は母数が絶対的に少ないのだ。気になる人はここまでの文を読み返してみてください。登場する熟語はどれも音・音か訓・訓です。これらの珍しい組み合わせ方は、その典型例から名前を取ってそれぞれ「重箱読み」、「湯桶(ゆとう)読み」と呼ばれています。そして中学受験ではこれらを名称ごと覚えさせ、得点源とすることを求めるのですね。要求が異様すぎて、むしろこの概念の何が大切なのか気になってきます。いったいどうしてこんなことを勉強させるんだ。古き漢語でも大和言葉でもない、途中で生成された「間違っていたはずの」日本語だから、ということでいいのか。僕は面白いからいいけど、日本語アレルギーの小学生には酷なことです。言語学徒じゃあないんだから。重箱の隅を重箱でつつくんじゃない。

 それにしても訓読みが「しし」である「肉」が好きだなあ。

100.川柳

横風が 車窓の形に くりぬいた 雨粒の音 銀紙の爪

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