ゲームシナリオサンプル 『わたし、勇者やめました!』

#ゲームシナリオ #サンプル

ライトノベルとして書こうと思っていた作品を、ゲームシナリオのサンプルとして書いてみた。
いずれはPDF化して、ポートフォリオに載せる予定。
ゲームシナリオの書き方が分からない方などは参考にしてみてください。


約10KB

タイトル「わたし、勇者やめました!」


■書式 文字数:32 文字×3行
地の文あり
主人公の立ち絵表示あり

■立ち絵指定 キャラ名 表情 立ち位置の順で記載します。 表情は【通常・喜び・照れ・悲しみ・呆れ・真面目・驚き】の7パターン想定。 立ち位置は【左・中央・右】の3箇所想定。(表情だけが変わるときは記載なし) 例:▲▲▲st (キャラ名)立ち絵 通常 中央

■ゲームジャンル:ノベルゲーム

■簡単な物語のあらすじ
【勇者】(女性)が卑怯にも不意打ちで【魔王】を倒し、世界は平和になった。

凱旋した勇者は町の人々に温かく迎えられ、今までの苦労を発散するように豪遊三昧。

しかし、魔王討伐のために作った莫大な借金で路頭に迷うことになる。
そんな勇者の前に魔王が現れ、勇者をあざ笑う。魔王は莫大な金によって恩赦をもらっていたのだ。

魔王が自由になり、勇者が借金地獄に陥るこの状況に勇者は絶望し、泣きながら自分の胸の内を魔王に吐露する。
誰かに認められたい。その一心で頑張ってきた勇者に共感し、魔王は勇者を異性として意識する。

自らが魔王となって人間たちへの復讐を誓うのだった。

======================================================★以下本文
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タイトル『わたし、勇者やめました!』

>ナレーション
「魔王。それは人類に仇なす打ち倒すべき敵。
勇者。それは魔王を打ち倒すために生まれた人類の希望」

>ナレーション
「魔王と勇者。その因縁の二人が今、魔王城にて最後の戦いを繰り広げようとしていた」


◆◆◆CG 魔王城・玉座の間
▲▲▲st 勇者立ち絵 真面目 左
▲▲▲st 魔王立ち絵 通常 右


>魔王
「よくぞここまでやってきた。勇者よ」

>勇者
「……」

>魔王
「フッ。鬼神の如き活躍を見せた勇者が、まさかこれほど若い女だったとは。夢にも思わなかったぞ」

>勇者
「私も。魔王ってもっとおじさん臭いやつかと思ってたけど、とんだ青二才でびっくりした」

▲▲▲st 魔王立ち絵 真面目

>魔王
「……言うじゃないか。ならその青二才の力、とくと味わわせてやる」

>勇者
「望むところ。……あ、ちょっと待って。靴ヒモがほどけてるわよ」

▲▲▲st 魔王立ち絵 驚き

>魔王
「え、マジ? 今朝、ちゃんと確認したと思ったけどなぁ」

>勇者
「隙ありっ!!」

>魔王
「ぐはああああ!!」

>ナレーション
「一閃。
魔王は空中で身体を三回転させ、ビタンと大の字に倒れた」

>魔王
「お、お前……勇者のくせに、不意打ちとか……」

▲▲▲st 勇者立ち絵 喜び

>勇者
「なに? 魔王が勇者様に説教しようって言うの?
騙される方が悪いのよ!」

▲▲▲st 魔王立ち絵 真面目

>魔王
「く、くそ……。
どこぞの小悪党が言いそうなセリフを言いやがって……っ!」

>魔王
「俺はこんなところで負けるわけにはいかないんだ。
先祖代々、魔王の一族は魔物を率いる責務を負ってきた。
その歴史は長く──」

▲▲▲st 勇者立ち絵 真面目

>勇者
「隙ありーーっ!!」

▲▲▲st 魔王立ち絵 驚き

>魔王
「ぐはーーーーー!! って、なんで斬るんだよ!!」

▲▲▲st 勇者立ち絵 通常

>勇者
「いや。話、長くなりそうだなーって思ったから」

>魔王
「そんな理由で人を斬る奴がいるか!?」

>勇者
「だってアンタ、魔王だし」

▲▲▲st 魔王立ち絵 通常

>魔王
「……まあ。そうだけど」

>勇者
「……」

>魔王
「……」

▲▲▲st 勇者立ち絵 真面目

>勇者
「隙ありーー!!」

▲▲▲st 魔王立ち絵 驚き

>魔王
「もはやただの弱いものいじめだろ!!」

>ナレーション
「こうして、勇者は見事、魔王を討伐し、世界は平和になった」


▲▲▲st 魔王立ち絵 削除
◆◆◆CG 町・昼
▲▲▲st 勇者立ち絵 中央 喜び


>勇者
「うーん! ひさしぶりの我が故郷! 懐かしいなぁ。
……ん? なんだか妙に騒がしいわね」

>地の文
私が自分の故郷へ凱旋を果たすと、そこで待っていたのは、町の人々からの割れんばかりの拍手だった。

>町人A
「ありがとう勇者! いつかやってくれると信じてたぜ!!」

>町人B
「勇者様はこの町の誇りだ! 勇者ばんざい! 勇者最高!!」

>地の文
そんな浮かれた町の様子を見て、私は見事に調子に乗った。

>勇者
「ハハハハ! みんなありがとー! 勇者様だよ~! サインは1回1万ゴールドねー!」


◆◆◆CG 酒場


>地の文
どんちゃん騒ぎは夜まで続き、酒場は大盛り上がり。
私の周りには、町の人間が覆いかぶさるように集まっていた。

>勇者
「みんな、じゃんじゃん飲んじゃってー! 今日はオゴリよー!!」

>村人D
「うおおおおお!! さすが勇者だぜ!! 
みんな、オレ達の勇者様を胴上げだ!!」

>全員
「わっしょい! わっしょい! わっしょい!」

>勇者
「うおー! たかーい!! 楽しいー!!」

>地の文
その日の宴は、全て私のオゴリとなり、それは深夜まで続いた。
私は、それまでの鬱憤を晴らすように、それはそれは大いに楽しんだ。
この後、何が待っているのかも知らずに。

>勇者
「勇者やっててよかったー!! ワハハハハ!!」


◆◆◆CG 役所


>地の文
翌日

>勇者
「……借金?」

>役人
「はい。魔王討伐にあたって、あなたのしでかした行動により、多くの町から請求書が送られてきています」

▲▲▲st 勇者立ち絵 通常

>勇者
「なるほど。夢を見てるのね。それか、きっと幻聴だわ。
二日酔いで頭が割れるように痛いし。とりあえず深呼吸して……。
すぅー、はぁー」

▲▲▲st 勇者立ち絵 喜び

>勇者
「で? なんですって?」

>役人
「膨大な借金があります。国によっては逮捕状もでているとか」

>地の文
……なんか悪化した。

▲▲▲st 勇者立ち絵 怒り

>勇者
「ちょっと待ってよ! 
借金とか逮捕状とか、聞いてないんですけど!? 
だいたいそんなの、身に覚えないし!!」

>役人
「無銭飲食は当たり前。宿には10ゴールドしか払わない上に、
人の家へ勝手に侵入してタンスを漁ることもしばしば。

>役人
「武器、防具屋の最も高価なものを、
いつもタダ同然で奪い取って行くとの苦情が
大量に送られてきています」

>役人
「それに対し追及すると、いつもこう切り返すのだとか。
『わたし、勇者だから』」

>勇者
「……」

▲▲▲st 勇者立ち絵 呆れ

>勇者
(身に覚えがない……って言いたいけどめちゃめちゃある~~! いつも恨み言を言われてたもの。いつも高笑いで返してざまあみろとか思ってたもの!)

>役人
「というわけですので、借金1000万ゴールド。明日までに全額返済していただきます。ちなみに、魔王討伐の報酬は既に借金返済に当てられておりますので、そのつもりで」


◆◆◆CG 町・夕方
▲▲▲st 勇者立ち絵 悲しみ

>勇者
「はぁ……」

>地の文
私はとぼとぼと道を歩いていた。
昨日までの元気が嘘のようだ。

>勇者
「というか、お腹へったなぁ……」

>地の文
借金のことを考えながらさまよっている間に、夕方になっていた。
朝から何も食べていないので、お腹がぐぅぐぅ鳴って仕方がない。

>勇者
「でも、お金ないしなぁ」

>地の文
思えば、今までお金の心配をしたことがなかった。
だってわたし、勇者だもん。
勇者だと名乗って、軽く脅せば、みんな言うことを聞いてくれた。

>地の文
でも今は──

>勇者
「はぁ……。ホント、どうしよ」

>地の文
チャリン

>地の文
そんな音を、私の耳がとらえた。

>子供
「あぁ~。ママ、落としちゃった」

>母親
「あらあら。しょうがないわねぇ。ママが拾って──」

▲▲▲st 勇者立ち絵 驚き

>勇者
「金えぇえ!!」

>母親
「きゃあああああ!!」

>地の文
地面を這いつくばるように高速移動し、金が落ちたと思われる付近を必死に探す。

>子供
「マ、ママァ~!!」

>母親
「だ、だいじょうぶ!? 早く逃げましょう!!」

▲▲▲st 勇者立ち絵 喜び

>勇者
「ん~……あ、あったぁ~~!!」

>地の文
私の後ろで親子が必死に逃げている気がするけど、そんなことどうでもよかった。
たった1ゴールド。されど1ゴールドだ。

>勇者
「よかったぁ。これがあれば、パンのみみくらいは買えるかも……」

???
「ぶはははは!」

>地の文
私がゴールドに頬ずりしていると、突然、後ろから下品な笑い声が聞こえた。

▲▲▲st 勇者立ち絵 怒り

>勇者
「何奴!?
勇者を笑うなんて、魔王城までぶっ飛ばしてやるわよ!?」

▲▲▲st 勇者立ち絵 驚き 左
▲▲▲st 魔王立ち絵 喜び 右

>魔王
「ほぉほぉ。勇者様でございましたか。そりゃ失礼。落ちたゴールドを必死になって拾うような勇者がいるとは思いもしませんで」

>地の文
私は目をぱちくりさせた。
そこにいたのは、魔王だった。

>勇者
「なっ!? なんでアンタがここに!?」

▲▲▲st 魔王立ち絵 通常

>魔王
「ただの観光だけど?」

>勇者
「観光って……、アンタ魔王でしょ!? 捕まったんじゃなかったの!?」

>魔王
「恩赦を買った。お前と違って金はあったからな」

>地の文
そんな馬鹿な……。
魔王にはお金があって、勇者にはお金がないなんて……。

>魔王
「魔王討伐で忙しかったお前は知らなかったかもしれないが、オレが魔王になってからは人間との付き合い方を変えてな。商売相手として、割と良い関係を築けてたんだ」

▲▲▲st 勇者立ち絵 怒り

>勇者
「う、嘘よ! だって魔王を討伐してくれたって、みんな喜んでたんだから!」

>魔王
「ああ。それはアレだよ。勇者生誕の地ってことで、観光資源にしたかったんだろ」

>地の文
私の前を、看板を持った町人が横切っていく。
その看板には『勇者を育てた町。入場料1000ゴールド』という字がでかでかと書かれてあった。

▲▲▲st 魔王立ち絵 喜び

>魔王
「クックック。しかし哀れなもんだな。せっかく魔王を倒したのに、残ったのは借金だけか。それもこれも、あんな不意打ちなんかするから──」

▲▲▲st 勇者立ち絵 悲しみ

>勇者
「……うっ。ぐすっ」

▲▲▲st 魔王立ち絵 驚き

>魔王
「……え?」

>地の文
気付けば、ぼろぼろと大粒の涙がこぼれていた。
仇敵を前にしながら、情けないことに、涙が止まらなかった。

>魔王
「あ、あの~……」

▲▲▲st 勇者立ち絵 怒り

>勇者
「私だって! 必死だったんだもん!!」

>勇者
「両親に捨てられて、ずっと孤児院でこき使われて。何をやっても、誰も認めてくれなくて。だから、魔王を倒したら、きっと認めてもらえるって。そう思って、たった一人で……必死に……必死に……」

▲▲▲st 魔王立ち絵 悲しみ

>魔王
「……な、泣くなよ」

>勇者
「うるさい!」

>地の文
涙をごしごしとこすっていると、ふいに、魔王がハンカチを差し出してきた。
私はそれをひったくると、盛大に鼻をかんだ。

>勇者
「チーーーーーン!!」

▲▲▲st 魔王立ち絵 通常

>魔王
「お前……ちょっとは遠慮しろよ」

>地の文
私が、ふんとそっぽを向いていると、ふいに魔王が、私の頭をなで始めた。

>勇者
「……なによ?」

>魔王
「別に」

▲▲▲st 魔王立ち絵 悲しみ

>魔王
「……ただ、その……。オレも、同じだったから」

>魔王
「魔王の息子ってだけで敬遠されて、親父もオレなんて見てくれなくて。ずっと、一人だったから。だから……」

▲▲▲st 勇者立ち絵 通常

>勇者
「……もしかして、慰めてるの?」

▲▲▲st 魔王立ち絵 照れ

>魔王
「わ、悪いかよ」

▲▲▲st 勇者立ち絵 喜び

>地の文
顔を赤くする魔王に、私は思わず吹き出した。

>勇者
「私は勇者で、アンタは魔王よ? それを慰めるって……。とんだお人好しね」

▲▲▲st 魔王立ち絵 驚き

>地の文
私がそう言って微笑むと、魔王はぽかんとした表情で、じっと私を見つめていた。

▲▲▲st 勇者立ち絵 通常

>勇者
「どうかした? ぼーっと私の顔を見つめて」

>魔王
「へ!? べべ、別に!? お前なんかに見とれてねえし!?」

>地の文
何を言ってるんだろう、コイツは。
やはり魔王というだけあって、変わった奴だ。

▲▲▲st 魔王立ち絵 照れ

>魔王
「……あ、あのさ。どうせお前、金ないんだろ?
も、もしよかったら、オレと──」

▲▲▲st 勇者立ち絵 喜び

>勇者
「決めた! 私、勇者をやめて魔王になる!」

▲▲▲st 魔王立ち絵 驚き

>魔王
「……は?」

>勇者
「そうだ。せっかくだからアンタも協力しなさい! ふふふふ。私を無碍(むげ)にしてきた報いを受けさせてやるわ。見てなさいよ人間ども!」

>魔王
「いや、お前も人間だろ!?」

>ナレーション
「こうして、勇者と魔王の戦いは幕を閉じた。
しかしその数年後、この二人が再び世界を震撼させる大事件を起こすことになるのだが、それはまた別のお話」


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