カリキュラムとは

カリキュラム(curriculum)と言う言葉は、
日本では学習過程とか教育課程と訳されます。
そして、その中身は
学校では学習指導要領の内容、各コマの授業案
社員研修では研修の内容、日程表
と解釈されています。

ただし、学習過程には、目に見えないものもあります。
これはhidden curriculumと言われます。
生活の中でも、学校や研修の中でも存在します。
hidden curriculumを敢えて日本語訳すると、
無意識的な教育効果、意図しない教育効果
と言えると思います。

1.生活の中のhidden curriculum

信号のない横断歩道を渡ろうとしている歩行者がいても、
横断歩道の前で一時停止しない車が多いです。
交通量の多い道路だと、歩行者が延々待たされます。
事故で怪我をしたくないから待つのです。
この場合
「車の方が強いから弱い者は諦める」
というhidden curriculumになります。

2.学校の中のhidden curriculum

イジメも同じ構造です。
強い者に逆らうと自分が虐められるから、
逆らわずに傍観者になります。
イジメは一人の被害者と、数人の加害者、
そして多数の傍観者で成り立っています。
もし「イジメはやめろ」と一人が言えば、
今度はその子もターゲットになります。
イジメをやめさせるには、
多数の者が「イジメはやめろ」と声を上げる必要があります。
これも多数という「力」になります。

3.家庭教育の中のhidden curriculum

家庭で、子供が静かに遊んでいると、
親の仕事(家事)が片付いて喜ばしいことですが、
親は子供に何も言いません。
子供が悪さをしたりすると、
親は仕事を中断して子供を叱ります。
子供が泣き始めると、
親は仕事を中断して子供に寄ってきます。
ここで、子供は何を学ぶか。
「悪さをする(泣く)と親が注目してくれる」
「悪さをすると親とコミュニケーションがとれる」
これもhidden curriculumです。
親の注目を得たいために悪さをするようになります。
昔から言われている
「子供は親の背中を見て育つ」
もhidden curriculumの一つです。

4.会社の中のhidden curriculum

セクハラに続いてパワハラの規制法も今年4月に施行されました。
「力を背景にして業務上必要な範囲を超えて社員に苦痛を与えるもの」
学校の部活(特に運動部)の指導でも存在しますが、
力(権力だけでなく、多数という力も同じ)を背景にして
業務上必要な注意や叱責を超えて、社員に苦痛を与えることは、
パワハラ防止法で規制されるようになりました。
今迄は規制されておらず、
力の強い者の横暴なことを抑止できませんでした。
これも
「力があれば許される」
というhidden curriculumになって、
自分が上司になったとき(力を持ったとき)に、
同じように弱い者に接するようになります。
学校の部活の上級生が下級生に行う暴力は、
下級生が上級生になったときに行うようになります。
パワハラの定義である「力」とは、
上長者の権力だけでなく、
部下による集団的な力も含む概念です。
「力があれば許される」というhidden curriculumは、
生活の中(先述した自動車と歩行者の事例)にもありますから、
力のない者がこれを受け入れる土壌ができてしまっています。
そこで規制法を制定する必要があったわけです。

5.新人研修の中のhidden curriculum

私は新人研修の中で「怒鳴る」(演技)をすることもありますが、
その場合は後でフォローをして諭します。
普段笑顔(私は与太郎顔と言っています)の私が、
怒ると怖いものがあります。
ただ、その前には必ず信頼関係を築いているので、
ある受講生からは
「早く、元の常道さんに戻って」
と思っていたと言われました(笑)
当然、休憩時間にフォローして、
信頼関係に基づいて諭しています。
上の発言はその休憩時間に言われました。
これも
「普段優しい人が怒ると怖い」
というhidden curriculumになっています。

また、私は研修の中で
受講生の質問に答えられない場合(めったにありませんが)、
「申し訳ないけど、今すぐに答えが出ないので、
 調べて答えます」
と言います。
あるいは、私が遅刻したとき(めったにありませんが)
「遅刻して申し訳ありませんでした」
と謝罪します。
新人研修では、講師は「上司役」なので、
ここをきっちりすることで、
「上司であっても間違いがあったら謝罪する」
ことを教育(hidden curriculum)しています。

6.結論

学校でも職場でも研修でも、
意識された教育(curriculum)しか考えないことが多いですが、
hidden curriculumを考えることが必要で、
意識されたものよりも、時に強く心に残ります。
特に「力のある者が、ない者を従わせる」ということは、
日常的に様々な所にあるので、心に残る結果になります。
私は教育課程学、教育方法学を学んでいますから、
ここを加味した講義を行っています。
意識して俎上に挙げているので、
厳密に言えばhidden curriculumではありませんが・・・。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?