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トーハクで女装を探してきたよ!12月号  浮世絵の歴史に占める女装の多さよ!ダイバーシティ江戸

だいたい毎月、トーハクの常設で女装っ娘を探しに通ってます。定点観測地点の浮世絵コーナーでは「浮世絵の歴史」(11月22日〜12月25日)という、浮世絵の集大成的なテーマ。さて、どれくらい女装が展示されているでしょうか?

いきなり来ましたよ!
一つだけしか展示されない向かって右側のケースは、懐月堂グループがなぜかほぼ専有(ナニカの利権?)していますが、2ヶ月ぶりに懐月堂の総帥、懐月堂安度がこのコーナーを奪還!
しかも、女装というより男の娘(禿)の作品ですよ!

懐月堂安度 遊女と禿図 18世紀

続いて、見返り美人の菱川師宣の「吉原の躰(てい)」。

こっちは純女?


吉原は、遊女(純女)だけですが、吉原の躰(てい)をした、ほかの風俗営業のところ(たぶん品川とか)では、純女だけでなく、女装も接客してたんですかね?純女と女装を見分けるのは、オデコに剃りあとを隠すヘッドバンドをしてるかどうかくらいしかありません。たぶん、この娘は女装でしょう。

下は鳥居清長の「立美人」。剃りあげたオデコを隠す法則からすると、この美人は純女ではなく、歌舞伎の女方の可能性もありますね。

鳥居清長 立美人

奥村利信の「初代佐野川市松のべにうりおまん」は、歌舞伎女方の佐野川市松が、紅(化粧品)を売るおまんという娘を演じたときの絵。当noteでは歌舞伎役者も、趣味女装も、幅広く「女装」を定義してますので、これは確実な女装浮世絵です。

初代佐野川市松のべにうりおまん

歌舞伎俳優が続きます。石川豊信の「初代中村喜代三郎の炬燵(こたつ)に腰をかけて文を読む美人」。石川豊信も、中村喜代三郎も知りませんでしたが、構図がいまいち不自然な感じもじすが、女装ならではのスッとした色気を感じて、とても気に入りました。

初代中村喜代三郎の炬燵に腰をかけて文を読む美人

鈴木春信の「紅葉舞」。1765年(明和2年)頃にこの舞が流行したようで、歌舞伎役者の可能性があると説明されていました。江戸は女装と遊女が最新カルチャーの発信元だったのですね。
これも、女装ならではの男性的な運動能力の高さとともに色気を発して、見事な女装絵と勝手に認定します。

紅葉舞

鈴木春信の「縁先物語」。年上の純女が、年下の美少年を誘っている様子です。右の美少年は若衆と呼ばれる男の娘ですね。

縁先物語

東洲斎写楽の「三代目瀬川菊之丞の田辺文蔵妻おしづ」(重要文化財)。歌舞伎の女方。ここまでデフォルメされちゃうのは女方としてはどうだったんだろうか?と女装的に思いました。

東洲斎写楽の「三代目瀬川菊之丞の田辺文蔵妻おしづ」重要文化財


こちらは、女装ではありませんが、有名な浮世絵なので、一応紹介。今年、團十郎を襲名した市川海老蔵ですが、こちらは5代目市川團十郎で当時は蝦蔵。

東洲斎写楽 市川蝦蔵の竹村定之進 重要文化財


そういえば、浮世絵は基本、版画なので複数あるはずなので、重要文化財は珍しいですね。(懐月堂グループは肉筆)

今季の白眉は、向かって左の展示ケースの菱川師宣の「北楼及び演劇図巻」。めちゃくちゃ面白かったです。北楼は吉原、演劇は芝居小屋で、まぁ現在の歌舞伎町みたいなところのこと。江戸2大悪所と呼ばれていて、つまるところ、めちゃくちゃ人間っぽい場所だったわけです。
そこには
・男
・女
・女装(美少年含む)
の3種類の人間がいます。

上の座敷には左から純女、純男、若衆(美少年)歩いてるのも、この3種類がおりますね

次は純男(真ん中)が、左下の純女に見とれています。それに対して右の女装が「ちょっと!おまはボクとデートでしょ!」って嫉妬してる図。菱川師宣サイコーですか?

つぎも良い場面ですよ。

女装2人の疑似姉妹が休んでるところに純男が「お姉さんたち、かわいいね」ってナンパしてるところです。まだ女装歴の浅い妹分(右)は、「男ってばれたらどうしよう」ってオドオドして、お姉さん(女装)の後ろに隠れています。ホント、菱川師宣、女装のことを分かってらっしゃる。

これも最高の、男、女、女装の3種類が、飾らない素を出し合ってる、ハッテン場の様子です。

吉原は女装出禁と思ってましたが、純男と一緒のお客として、または三味線奏者という体(てい)では入れたのかなぁ?それとも、吉原以外の芝居小屋のことなのか、これはいつか調べてみたいと思います。



上の左から2番目の男の娘は、立派な刀を二本差してしますから、ちゃんとした武士です。江戸時代は、社会に迷惑をかけなければ武士がふだん女装することが許された、今から考えても先進的な社会でした。(男装は厳禁だったそうな)

社会に迷惑をかけるのは、こういう露出したりする男。

鳥居清長の「品川座敷の遊興」も、純男、純女、女装が入り乱れて、ハッテンを思い思いに楽しんでいます。ダイバーシティ江戸!








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