【Zatsu】マスク2.0
いまこそ鼻マスクの真実を語ろう。
ときは2020年、新型コロナウイルスが猛威を振い世界中で対策が急がれるなか、この国では深刻なマスク不足に悩まされていた。コンビニの棚に並ぶのは「再入荷未定」の札ばかり。ドラッグストアの店頭にはどこで聞きつけたのか、わずかばかりの入荷を期待して早朝から人々が列をなした。
転売ヤーの跋扈するマスク市場は取引価格も小豆相場なみに跳ね上がり、いつしか大手通販サイトですら定価の倍額をつける始末。使い捨ての不織布マスクは洗濯再利用があたりまえで、毛羽立ちが限界にきてようやく交換したものだ。手作り布マスクが流行ったり、アベノマスクが登場したのもこの頃のこと。
パンデミックにあおられて、みんながマスクを求めていた。毎日のようにネットで検索してはため息をついていた方も多いと思う。
そんなさなか、おれはひとつの商品に熱い視線を送っていた。
ノーズマスクピット
いわゆる「鼻マスク」である。これがなかなかの数で売れ残っていたんだ。しかも定価で。
念のため鼻マスクをご存じない方に説明しておくと、通常のマスクが口と鼻を覆うのに対し、これは鼻腔に直接差し込むタイプ(鼻栓のイメージに近い)。以下を見ればご理解いただけるだろうか。
両鼻をつなぐリングも細い透明シリコン製なので目立たない。
オシャレ!
この商品がゴッソリあまっていたんだ。おれは思ったね。これは天啓であると。1パックで45日ということは8パックで1年分か。それくらいあればこの惨禍もしのげるだろう。
だってさ、思い出してもみなよ。あのマスク日照りのご時世にだよ? だれもが喉から手が出るほどほしくて、転売ヤーから不当な高値で歯ぎしりしながら買ってしまった人もいるあの時代にだよ? 正規ルートから適正価格で購入できるなんてもう奇跡に近いんだよ(モノは鼻マスクだけど)。
当時、とある大手WEB通販サイトで鼻マスクがなぜかマスクのカテゴリから抜けていた時期があるんだ。どこのサイトでもトップページに感染症対策コーナーが設けられており、「在庫切れ」の文字で埋めつくされていた。たいていの人はそこで諦めちゃうんだな。
「マスク」でキーワード検索すれば鼻マスクも出てくるんだろうけど、入荷チェックなんてもう毎日のルーチン作業と化していたから、トップページを見て、ああ今日もないか、で終わりなんだ。
5分後、注文完了。ありがとうございました、の画面を見て思わずニンマリと頬を緩める男がいた。
やや得意になっていたことを告白しよう。なんなら、普通のマスクを探し求めている人々に対してささやかな優越感すら抱いていたことも。
あなたたち、そんなフツーのマスクばかり探し求めていて、わかってないなぁ。勝者は常に目の付け所がちがう。次の時代はこれよ。ノーズマスクピット。これがくるんだよ。
使い始めてから、ひとつわかったことがある。
当時って鼻出しマスクでさえ忌諱されたじゃない? いまみたいに立体型も十分に流通していないから、みんな息苦しさを我慢してフラットなマスクで口と鼻を覆っていたんだ。
そんな中、ほぼ鼻むき出しで歩いてみなよ。周囲から袋叩きに合うこと間違いなし。
だから、鼻マスクするでしょ、で、その上からフツーのマスクするでしょ。・・・なんだろうか、この割り切れなさは😷。
おれが購入した当時、通販サイトには在庫がたんまり残っていた。それがいま、おれの手元に在庫が眠っている。
ほぼ未使用のまま😵💫