「伝え方」のあゆみ 【3】インターネットの登場
おつかれさまです、鶴橋です。
今回は昨年からゆっくりと続いている連載の 3 回目となります。
本日は、通信方法が発展しインターネットという仕組みが生まれた黎明期についてご紹介したいと思います。
合いの手はいつものコマツさん。
コマツです!今年の夏は猛暑続きで本当に厳しいですね。うちは猫がいるので、熱中症になってしまわないように特に気を配っています。でもうちの子は寒いのが嫌いみたいで、わざわざ窓辺で日光浴してたりするんですよね。人の気も知らないで…。もったいないので私がエアコンの側に陣取ってひんやりするようにしてます。よろしくお願いします!
よろしくお願いします。
電話
19世紀に急速に普及した電信のうち、第2回ではモールス符号と電信機を用いた通信方法までご紹介しました。
その後、こういった符号を介したやり取りではなく、もっと直感的にわかりやすく情報伝達をしたいと考案されたのが「電話」です。
音波を電気信号に変換して伝送することで遠くに声を届けることができる電話機は、欧米で何人もの発明家が開発に挑戦しました。
一番有名なのは、1876年2月14日にアメリカで特許を取得したグラハム・ベルです。
ベルの電話機は特許成立の同年に開催されたフィラデルフィア万国博覧会に出展され、世界中に広まりました。
ベルの他にも電話機を作っていた人がそんなにたくさんいたんですか?
ベルよりも先・あるいは同時期に電話機の開発を進めていた人は何人もいます[*1][*2]。
イタリアのメウォッチは1854年には試作機を完成させていました。しかしその試作機で仮の特許まで取得したものの本特許出願に必要な資金がなく、数年間は仮特許を更新していたものの最終的には失効してしまいます。
ドイツのライスは1860年に試作機を完成させ、62年にはギリシャ語のtele(離れた) と phone(声)という単語を組み合わせて「telephone」という言葉を造りました。しかし彼の機械には欠点も多く、特許取得には至りませんでした。
アメリカの発明王エジソンも電話の開発に取り組み、ベルよりも1ヶ月早い1876年1月に特許の出願をしました。しかし出願書類に不備があり不受理となってしまいます。
アメリカのグレイは、ベルと同日の1876年2月14日に特許を出願しました。しかしベルの出願よりも2時間ほど遅かったため、受理されなかったと言われています。
2時間差!そんなにシビアな特許戦争があったんですね…。
そうですね。よく知られているだけでこんなに発明家がいるので、実際この頃はもっと大勢の人々が電話機の特許を目指して争っていたんでしょうね。
こうして誕生した電話は世界中に急速に普及し、各家庭に置かれるようになりました。
通話をするためには電話機と電話機を電線で繋がなければなりませんが、各家庭と家庭の間に専用線を引くのは現実的ではありません。
そこで生まれたのが電話局です。
各家庭から電話局に向けて電線を敷き、電話局にいる交換手が手作業で各家庭の電線を繋ぎ合わせることで家から家への円滑な通話を実現させ、巨大な電話網が完成しました。
コンピューターとネットワーク
コンピューターはそろばんのような計算器具から発展しました。
1643年には歯車を手動で回して足し算・引き算を行う計算機「パスカリーヌ」が誕生し、その後四則演算も可能な機械式計算機が生まれます。その後19世紀の終わりに小型の電気モーターが発明されてからは歯車を自動で回すことができる電動式卓上計算機に、20世紀の初めに真空管が登場してからは電子式計算機(電卓)に発展していきました。[*3]
1940年、アメリカでとある公開実験が行われました。[*4]
ニューヨークに設置したコンピューターと、約400km離れたニューハンプシャー州の大学に設置したテレタイプ端末(通信のために使うタイプライター)を電線で繋ぎ、遠隔でコンピューターに計算をさせるという実験です。
これは1950〜80年代に発展したメインフレーム(汎用コンピューター)とダム端末(入出力だけを行う)の仕組みと同じ構成となっています。
1台しかないコンピューターをみんなで使えるんですね。コンピューターを買うお金も節約できるし便利そう!
いくら遠くにいても使いたい時だけ使えるのは便利ですよね。
ただ、当時のコンピューターは複数人で同時に使うことができないので、使いたいタイミングが被ると順番を待たなければなりませんでした。
前のパートで出た電話局に似ていますね。電話局も、交換手(電話局の中で電線を繋ぐ役割の職員)が誰か別の人の対応をしている間は他の人は大人しく順番待ちをしていなければなりませんでした。
そうなんですか!
でもさっきの実験みたいに遠方から操作するなら、他の人が今コンピューターを使っているかどうかなんて分からないですよね?
そうですね。
1台をみんなで使う運用には限界があることと、コンピューター機器自体の進歩が目覚ましかったこともあり、新しい通信方法とネットワークの構想が持ち上がります。
その通信方法が現在も使用されているパケット通信であり、世界で初めて運用されたパケット通信コンピュータネットワークが『ARPANET』です。
世界初のインターネット『ARPANET』[*5][*6]
ARPANET(アーパネット)はアメリカの国防総省傘下の高等研究計画局(ARPA、現在のDARPA)が1969年から開始した実験的ネットワークです。
先述のメインフレームは1台のコンピューターに複数の入出力端末を接続する構成だったのに対し、ARPANETは各地に設置されたコンピューター同士を接続するものでした。
この構成はコンピューター同士を複数の経路でメッシュ状に繋ぐことができます。これによって経路上の電線やコンピューターがどこか故障したとしても、別の経路から迂回させてパケットを送ることができ、故障に強いネットワークになりました。
ARPANETは1990年には解体されますが、この約20年間の取り組みを通して、パケット通信以外にもネットワーク通信の先駆けとなる仕組みや考え方が固まっていきました。
開かれたネットワークの概念
プロトコル「TCP/IP」
エンドツーエンドの概念
ベストエフォートの概念
その後、同年1990年には世界初の検索エンジン「archie」が登場し、1991年には世界初のWebサイトが誕生します[*7]。
現在も当時を再現したページを見ることができます。
こうして私たちがよく知るインターネットの世界が出来上がっていき、現在に至るまでのわずか30数年間で急速に発展していったのです。
さて、3回に渡って通信の歴史を紐解いて解説させていただきました。
コマツさん、どうでしたか?
新しい技術の話はよく聞くけど、昔のことを知る機会はほぼ無いので新鮮でした。
一つの情報を伝えるためにも、ご先祖様はいろいろな工夫や発明をしてきたんですね。
今では当たり前になっているメールやネットの通信やITインフラの仕組みはこういった歴史の上に成り立っているんですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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