『1年は説いているが一向に成長が見られない選手』の対応

いただいた質問❶(質問箱より)
いただいた質問❷(質問箱より)

『1年は説いているが一向に成長が見られない選手』

昨日、質問箱で質問をいただいてからずっとこの選手について考えていました。
そこで思い出したのが、自分もかつては同じケースの選手を指導していたということです。
その時の解決策を思い出してみましたので、以下に記載しておきます。
キーワードは「サッカー指導+アドラー心理学」ですね。

【自分が失敗してしまったこと】

私もそのような選手と向き合った時に、「他の選手に負けるな!がんばれ!!!」などとひたすら圧をかけて励ましていました。
その結果、一瞬は選手のやる気が上がったように見えましたが、その後はすぐにやる気が下がってしまいました。

しばらくは指導者側も試行錯誤を繰り返していましたが、後になってわかったのが、ネガティブな感情をもった選手に「負けるな!」「がんばれ!!!」などと叱咤激励するのは、一見ポジティブな良い指導のように思えますが、実は選手の立場からしたら『一方的に突き放されている』という状態だったのです。

その選手と練習以外のところで本音を聞く機会をいただけたので、話を伺ったところ、「自分はサッカーが好きだから練習に出ているけど、いくらがんばっても上手くならない。それをコーチに負けるな!がんばれ!!!などと言われても、自分はがんばり方を知らないし、誰にも相談できないからとにかく辛いんです」ということを教えてくれました。

そうです。
その選手は、

❶がんばり方を知らなかった
❷一緒にがんばってくれる味方になる人が一人もいなかった

(監督たちは味方になってくれなかった)

だから、こちらが1年説いても一向に成長しなかったのです。

このことがわかり、まずは私がアプローチの仕方を間違っていたのだということに気がついてものすごく反省いたしました。

「自分たちが君の本音に気づかないで『がんばれがんばれ!』と圧力をかけて申し訳なかった」

ということを伝えると、その選手は泣きながらうなずいて私の話を聞いてくれました。

【指導者は何をすればよかったのか?】

その選手から本音を聞くことで、私も指導者が何をすればよかったのかがわかりました。

⓵まずはその選手の味方になる
⓶その上で選手にも理解のできる「がんばり方」を教える

ということがまずその選手には必要だったのです。

⓵まずはその選手の味方になる

その選手には、「オレは高1の頃、いくら練習をしても上手くなったという実感がわかなくて苦労したことがあるよ。だから◎◎が1年がんばってもなかなか上手くならないという気持ちはすごくよくわかるよ」と、私自身の過去の苦い思い出の話をしました。

※その選手が卒業してからわかったのですが、その選手が言うには、『今まで自分の味方になってくれる人が誰もいなかったから、佐藤さんのこの言葉にはすごく励まされた』とのことでした。

選手に心を開いてもらって、こちらのことをもっと信頼してもらいたかったら、こちらから選手に歩み寄って、「あなたの気持ちに共感してるよ」という共感の気持ちを伝えてあげることが必要に思います。

※意外とこの、指導者が最初に示すべき姿勢を伝えられずに、選手がいつまでも心を開いてくれないという指導者は多いと思います。まずは『共感』と『歩み寄り』の姿勢が大事です。

⓶その選手にがんばり方を伝える

⓵をすることで選手との信頼関係が築くことができたなら、次は選手に『がんばり方』を教えてみましょう。
指導者の方からしたら意外に思うかもしれませんが、中学生高校生の選手でも『がんばり方』を知らない選手は結構いるんです。

【がんばり方の教示】

まずは選手と、

①プレー面で「何ができているか?」の確認をする

選手は「自分に何ができているか?」の確認ができていないから、自分のプレーに自信がつかないのです。
ですから、まずはその選手が「自分に何ができているか?」の確認を一緒に行ってみましょう。1年も一緒に活動をしていれば、その選手の「何ができているか?」「いいところ」なんていくらでも見つかるはずです。

②プレー面での努力目標を設定する

その選手の「何ができているか?」「いいところ」がわかれば、そこからその選手がちょっとがんばって一週間くらいでできるようになることを『努力目標』にして、その選手が一週間後にできるようになったら、「ああ君は一週間練習をがんばったから、○○ができるようになったね!」ということを選手に伝えて、一緒にその成長を喜んでみたらいかがでしょうか?

どんな選手でも、練習をしてサッカーが下手になるなんていうことは無いのですから、選手がホンのちょっと成長したということも指導者が見逃さず、「ああ君は一週間練習をがんばったから、○○ができるようになったね!」ということを伝えていくことが必要に思います。

以上が、選手に伝えるべき『がんばり方の教示』になります。

最後に【ヲチ】

以上が「1年説いているが一向に成長しない選手」への対応の仕方になります。
こんなことを申し上げるのもなんですが、意外と対処法はシンプルで簡単ではないでしょうか。
この話に出てきた、

「まずはその選手に共感する」

という考え方は、アドラー心理学で用いられる、

◎その子どもが本来持っている能力を認める(信じる)
◎その上でその子どもの気持ちに『共感』してやる
◎『認める』と『共感』をすることで、その子どものもっている能力を引き出す『勇気づけ』を行う

これがアドラー心理学の考え方になります。
シンプルですが、意外とこの考え方を見失ってしまい、自分の感情や自分の都合を優先させてしまうから、指導が上手くいかないことがあるんじゃないかと思います。

●選手との信頼関係の構築が上手くいかない
●指導をしても、選手がなかなか上手くならない

とお悩みの方は、この、サッカー指導+アドラー心理学のプロセスをたどって、まずは選手を勇気づけることで、選手のやる気を上げることから始めてみてはいかがでしょうか。

ご清聴誠にありがとうございました。
ご意見や疑問点などがありましたら、なんなりとお知らせください。
よろしくお願いいたします。

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