Pfizer社製Omicronワクチンの承認プロセスを誤解させる投稿:専門家達の見解

米国がオミクロンの変種を標的としたPfizer-BioNTech社製の新しい二価ワクチンを承認した後、Facebookユーザーは、「8匹のマウスから得た予備データ」を使ってテストしただけだと主張しました。しかし、専門家はAFPに対し、これは重要な背景を無視していると指摘しました。新しいワクチンはマウスを使った試験の後に承認されましたが、これは臨床試験を受けた以前のOmicronワクチンをベースにしています。科学者が二価ワクチンを承認するために、以前のワクチンの試験データを使用することは、インフルエンザの予防接種の手順と同様、「確立された方法」であるということです。

この主張は、2022年9月22日、オーストラリア・クリスチャン・ロビー所長のMartyn Iles氏がFacebookの投稿で紹介したものです。

1,500以上の「いいね!」と数百のシェアを獲得しています。

その内容は以下の通り: 「Pfizer製の最新のBA.4/5ブースターが、FDAに認可された。(彼らの言葉によると)『広範な安全性と有効性のデータ』を収集した後とのことだ。どの程度の広範なデータか?8匹のマウスから得た予備的データだ。」

9月26日にキャプチャされた、誤解を招く投稿のスクリーンショット( Kate TAN )

8匹のマウスから得られたデータに基づいてワクチンが承認されたという同様の主張は、オーストラリア米国カナダフランスで数千回にわたって共有されています。

しかしながら、専門家はAFPに対し、この投稿はワクチンが承認された方法に関する重要な文脈を無視していると述べています。

AFP通信によりますと、COVID-19ウイルスが変異するにつれて、ワクチンメーカーは新しい変異体をターゲットにオリジナルのワクチンに手を加えてきたとのことです。

PfizerーBionTech社は、まずオリジナルのワクチンに手を加え、BA.1亜種に見られるスパイク・プロテインを含むようにし、同時にオリジナルの株をターゲットとしました。

その後、更に微調整を加え、BA.4とBA.5の亜種に見られるスパイク・プロテインを含むようにしました。

専門家によりますと、BA.4亜種とBA.5オミクロンを標的とした二価ワクチンは、臨床試験を受けたBA.1亜種用の古いワクチンをベースにしているとのことです。

新しい亜種に対する防御

Pfizer-BioNTechの二価ワクチンでは、8匹のマウスを3つのグループに分け、3種類のCOVID-19ワクチンを注射しました。 ワクチンメーカーによりますと、二価ワクチンを投与されたグループが最も優れた免疫学的反応を示したとのことです

欧州医薬品庁のワクチン戦略責任者Marco Cavaleri氏は、BA.1を標的としたワクチンの試験データにより、その類似性から最新の二価ワクチンの有効性を理解することが出来たと述べています。

彼は、9月20日の記者会見で、両ワクチンは基本的に「同じ組成」であると述べました。「両者が異なるのは、異なるが密接に関連したオミクロン亜種のmRNAを含んでおり、数個のアミノ酸のコーディングに違いがあることです」

更に彼は、あるワクチンの知見を別のワクチンに適用することは、「広く受け入れられている免疫学の概念に基づく、科学の分野で尊重される確立されたアプローチ」であると述べました。

フランスのNecker-Enfants Malades研究所の研究部長であるClaude-Agnès Reynaud氏もAFPに、このアプローチは「論理的」であり、時間の節約になると語っています。

「mRNAワクチンの目的は、ウイルスの亜種に適応出来るようにすることです。臨床試験を行なえば、6ケ月で結果が出るでしょう。その頃には、別の亜種が存在しているかも知れません」と彼女は語っています。

Pfizer社の広報担当者はAFPに対し、このアプローチにより、既存及び新規のCOVID-19変種に対する高いレベルの防御を提供することが可能になり、「この進化するウイルスに対する警戒を続けることが可能になります」と述べています。

Pfizer社の二価ワクチンは、9月12日に欧州医薬品庁(EMA)から認可されました。

EMAはその勧告の中で、「オミクロンの亜種のmRNA配列が僅かに異なることを除けば、『Comirnaty Original/Omicron BA.4-5』と『Comirnaty Original/Omicron BA.1』は同じ組成であり、非常に類似している」と評価しています。

しかしながら、米国でこのワクチンが承認された際、一部の専門家は、臨床試験を通じてのみ測定可能な、これらの更新されたワクチンが提供する有効性の強化の程度を疑問視しました。

「政府機関は臨床試験を要求することも可能でしたが、迅速な対応を優先させ、もし、これらのワクチンの効果が一価ワクチンより低いことが判明した場合にも、国民の信頼を得るために危険な賭けに出ました。勿論、その可能性は低いですが、現時点ではまだ検証していません」とジュネーブ大学グローバルヘルス研究所のAntoine Flahault所長は述べています。

インフルエンザワクチン

専門家は、最新のCOVID-19二価ワクチンの開発を、毎年流行している変異型をターゲットとして更新されるインフルエンザワクチンと比較しています。

WHOは、毎年2回の会議を開催し、北半球と南半球の冬にそれぞれ予定されている来シーズンのインフルエンザワクチンの構成について推奨を出しています。

Flahault氏によりますと、最新のCOVID-19二価ワクチンの開発には、インフルエンザワクチンと同様の手順が用いられているとのことです。

「インフルエンザワクチンの組成は年毎に異なります。インフルエンザは季節性で、寒い季節に1波しか発生しないため、メーカーは臨床試験でその効果を評価する時間的・物質的余裕がないのです。」と述べています。

データの重要性

欧米の製薬会社は、二価ワクチンに関する見解は、より多くのデータが入手可能になった後に更新される可能性があると指摘しています。

AFPの取材に応じた全ての専門家は、ワクチンの潜在的な有害作用に関するデータを収集することを可能にする医薬品安全性監視への関心も強調しています。「医薬品安全性監視は重要であり、我々を前進させるものです。今日、我々は常に観察しているのです」とClaude-Agnès Reynaudは述べています。

EMAの Marco Cavaleri氏も9月20日、「新しいワクチンが秋冬の感染症や深刻な病気から人々をどれだけ守るのか、またその効果を持続させるのか理解するために、実生活での性能に関するデータを収集することが重要です」と強調しました。

AFPは以前、同様の主張がフランス語で流れた後、これを論破しています。

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