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ADHDの診断インフレがもたらしたもの

かつての

注意欠陥・多動性障害(以下ADHD)は、

明確な問題をかかえた、ほんのひと握りの子どもたち

に限られて診断が下されていた。

本来ADHD周辺の問題は、

ごく幼いうちにはじまり、多くの状況下で、

見まがいようのない困難を引き起こすものであった。

ところが突然、

学級崩壊が教育ではなく、医療の対象となり、

だれかれかまわずADHDの診断が下され、

米国では2013年時点ですでに10%もの(→わが国でも2023年現在、それに近い数値になりつつある)子どもたちが、

ADHDだと見なされている。

なぜ、

かつてならば、「人生の一部」や「正常な個性の一部」と見なされた注意や行動の問題が、

今や「精神疾患」と診断されているのであろうか。

原因は

1.DSM-4における表現が変化したこと

2.医師に対するマーケティングを製薬企業が盛んに行ったこと

3.一般の人びとに対する宣伝を製薬企業が盛んに行ったこと

4.メディアが詳細に報道したこと

5.特に3と4の影響により、教育現場で困り果てた教師が自身の手に負えない子どもをなんとかしたくて社会に圧力をかけたこと

6.特に3と4と5の影響で親が不安になってしまったこと

7.ADHDと診断された子どもは特別な支援が受けられたこと

8.処方箋が必要な精神刺激薬が単に能率を上げたり、元気を回復させるため「だけ」に広く乱用されたこと。

である。(→上記の8つは、わが国とわが国がよく悪いところは見て見ぬふりで、皮相上滑りに模倣したがる米国における原因たちである)


とりわけ、

子どもたちがADHDと診断されるかどうかは、生年月日と非常に深く関わるという事実、

詳しく述べると、

12月31日時点の年齢によって学年が変わるという理由だけで、

12月生まれの男児は、1月生まれの男児よりリスクが70%高くなる。

クラスでもっとも幼い子どもほどADHDの診断をくだされやすい。

この誕生日効果は、女児にもほぼ適用される。

つまり、月日の差による幼いゆえの自然の未発達が、

人工的に区切られることにより、利用され、

薬で治療する病気にされてしまっているのである。

このような事実が海外(欧米、どうせわが国は模倣したがるので似た事態が起きるであろう)における2010年前後の大規模な研究によって示されている。


これは、ADHDの診断インフレの強力な証拠である、と同時に、

子どもが変わったのではなく、子どもに貼るレッテルが変わっただけであることを示している。

DSM-4におけるADHDの定義を語句を少し変えることにより、

女子にもあてはまりやすくしたことが原因かと、DSM-4に携わった人たちのなかのひとりは、衝撃を受けた。

(広範なフィールドトライアルを行っていたので)有病率の上昇は15%には留まると予測していたにもかかわらず、

一枚上手の、いや彼が言うには、「狡猾な」薬のマーケティングのせいで、有病率が(米国において)約3倍になったからだ。


DSM-4が発表されて数年が経過すると、

新しく特許権を認められた高価なADHDの薬が市場に現れて、政府は製薬企業の……


あれ?この辺りからその後の経過もわが国、日本における新たな認知症治療薬を取り巻く構造と似ていないか?

というところは、別の回に描くとして、

ADHDであれ、認知症であれ、生まれ出でてから病になり老いて死んでゆく自然な営みを、

きわめてありふれているのに見落とされがちでも支障が無かった行動を

必要以上に深刻な病に変え、

DSMのことばを悪用し、

在りもしない学級崩壊を防いで、家庭の危機を解決してくれる魔法の薬があるかのように偽って売りさばく製薬企業の戦略に、親も教師も医師も、そしてそれを視ている私たちも巻き込まれてしまっているのかもしれない。

ここまで、読んでくださり、ありがとうございます。

今日も頑張りすぎず、頑張りたいですね。

では、また、次回。

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