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新しい時代を迎えた連赤本『虚ろな革命家たち』

本書の主役の森恒夫は1944年生まれ。著者は1992年生まれ。50年近い開きがあるからか、世代論的なところの多い本だった。
私は世代的には連赤当事者と著者の中間にいるわけだが、著者の方に世代間ギャップを感じた。昭和と平成ではずいぶん考え方が違うようだ。

この若い著者は「森恒夫は、なぜ、あんな事件を起こしたのか?」という問いを抱えながら、森の高校時代の友人や連赤の生き残りを訪ねて回る。森の育った町や連赤事件の起きた山岳ベースにも足を運ぶ。コロナで中止になったが、森の旧友から話を聞くために北朝鮮にも行く予定だった。
「森恒夫と自分では生まれた時代が違う。だけど、連赤時代の森と今の自分は同年代。だから、自分には森の気持ちがわかるはずだ」
そんな思いが著者を駆り立てたのだろう。

が、これだという答えは得られなかったようだ。「おい、もうちょっと頑張れ」とも思ったが、この50年、多くの人がこの問題について語ってきたが、納得のいく答えを出したものはいない。だから、著者を責めてもしょうがない。この問いに答えはないのかもしれない。

本書に「答え」はなかったし、「新情報」のようなものもなかった。
が、この本には新鮮なものを感じた。なんと、陰惨な描写がないのだ。これは、連赤本としては画期的である。
事件から50年が過ぎ、連赤本も新しい時代を迎えたのだろう。


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