見出し画像

【最終話】独立(解説編)/あのスタッフなぜ辞めてしまったのか?

やる気にあふれ、有望だったスタイリストが、
理想を求めて自分の城を構えることを選んだ。
経営者はその独立を、なぜ止めることができなかったのか?
第3話 独立 ストーリー編よりご覧ください。

文・解説/多田 暢[melt]

第3話 独立 解説編
離職のサインはどこにある? 気付きポイント解説

登場人物
オーナー………今もフルタイムでサロンに立つ、
       開業15年のベテランプレイングオーナー。
スタイリスト…7年前に新卒で入店し、
       若手の中で一歩抜きん出たスタイリストに成長。

1.客層のバランスから生じるひずみ

➀オーナーの視点
最近は求人しても応募がない年もあり、新しい風が入って来ないことに少し焦りを感じていた。
➊スタイリストの視点
オーナーや店長のお客さまであふれていて、活気がある。お客さまの年齢屡は比較的高いサロンだと思う。
👇
解説
固定のお客さまであふれているのは良いことですが、特定の年齢層に偏ると、求人面では不利な場合も。継
続的な発展を望むなら、時に客層のバランスを見直すことも大切です。
離職警戒レベル 💣


2.見せてしまった店の限界

➁オーナーの視点
「自分はSNSが弱いため、そのスタイリストをどうサポートすればよいか分からない」と言う。
➋スタイリストの視点
店長は困惑しているように感じた。
👇
解説
店長の困惑により、スタイリストは「天井」、つまり、サロンでできることには限界があることを理解します。
組織のトップは常に、この天井を高くしていく努力が必要です。
離職警戒レベル 💣

3.見据えるべきビジョン

③オーナーの視点
皆に声を掛けたら、全員から元気なあいさつが返ってきて、「いい雰囲気だな」とうれしくなった。
➌スタイリストの視点
何となくだが、自分の考えていたことが肯定されているような、かすかな実感があった。
👇
解説
オーナーが感じたように、参加したスタッフの様子から、彼も自分の得意分野を生かせる可能性に気付いたはずです。彼の目指す方向性を受け入れ、新たなサロンの形を模索できるかどうかがポイントです。
離職警戒レベル 💣💣

4.反抗心ではないのに…

④オーナーの視点
彼は、自分のやりたいことを実現するためには、今のお店では難しい、と言う。
➍スタイリストの視点
僕は、SNS を通してデビュー後のスタイリストが確実に成長できる環境にしていきたい、と伝えた。
👇
解説
こんなとき、オーナーはスタッフの言葉に過剰に反応してしまう傾向が。彼が求めたのは、環境の変化です。動揺もあるとは思いますが、彼が伝えたいことの大事な部分をいったん受け止めて気持ちを整理し、日を改めて話し合うのも得策です。
離職警戒レベル 💣💣💣

5.スタッフの成長に応じて意識改革を

⑤オーナーの視点
何とかその場は、彼を引き留めて終わった。
➎スタイリストの視点
オーナーはしっかり聞いてくれていたが、その後も何も変わらなかった。
👇
解説
今回、オーナーが取るべきだった行動は、彼を引き留めることではなく、彼の能力や役割を認め、サロンの発展にどうつなげていくかを考えることでした。今後、彼と共に若手も成長できる環境をつくっていくという道もあったかもしれませんね。
離職警戒レベル 💣💣💣💣

発展か、衰退か?

 このスタイリストは、失いたくない有望な人材でした。自ら努力して実績を伸ばし、その経験を他のスタッフにも役立ててほしいと思っている。さらには、若手が成長できる環境をつくりたいとオーナーに直談判。

 しかし、オーナ—は「新しい風」を待ちわびながらも、彼の提案に耳を貸さないばかりか、サロンに風穴を開けようとする彼の真意に気付くことができませんでした。

 キャリアがある分、オーナーは自分のやり方や経験に固執してしまっています。けれど、発展を望むなら変革は必須です。「新しい風」となり得る意見やアイデアは、スタッフから生まれることも多々あるでしょう。

 あなたのサロンにも、有望な人材が眠っているかもしれません。〈了〉


PROFILE 多田 暢(ただ・のぶる)/1988年生まれ。東京都出身。日本美容専門学校卒業後、都内の大規模店に就職。6年間在籍し、広報部門やプロジクトリーダーなどを担当したことで、人事や労務、働き方に興味を持つ。
2015年、吉祥寺に「melt」をオープン。その後、’18年に2号店の「emis」、’20年に3号店の「cofy」を同じく吉祥寺に出店。「スタッフの生活水準の向上」と「質の良い働き方」をテーマにサロンを運営中。

美容の経営プラン_2021_02月号_150dpi-1_page-0001