広域展開で高まった社内オペレーションがコロナ禍で効力を発揮/FORTE(東京都港区)
東京・神奈川・静岡の3拠点でサロンを展開する『FORTE』(鈴木浩一朗社長)。かねてから進めていた経営および教育システムの改革により、新型コロナウイルス感染防止に対応しながら、スタッフはステイホームの時間も効率よく過ごした。
編集担当/美容界編集部 大頭 禅
新人スタッフ全50人が2ヵ月間の自宅待機
コロナ禍においては、系列46店舗中(ネイル、エステ、まつ毛エクステ併設サロンも含めた延べ数)、銀座・原宿・青山など都内の美容サロン店舗は約1ヵ月、エステティックサロン全店舗は約2ヵ月、4月中旬から5月にかけて休業、静岡と横浜の店舗は、時短営業の対策を取った。
「とにかく何が正しいのか、まだ情報が乏しかった頃ですから、まずはスタッフをウイルスから守ることを優先しました」
今年4月8日の緊急事態宣言発令時の店舗対応について語るのはFORTE・鈴木浩一朗代表だ。4月入社予定だった新人スタッフ約50人については、静岡店舗のスタッフも含め、4~5月の2ヵ月間、自宅待機の措置を選択したという。以降、営業再開までに展開したFORTEの社内オペレーション、特に教育面において進化させてきたオンラインによるシステムが、存分に機能した。「やはり1都2県にまたがって店舗展開していますので、会議のために月に何度も幹部スタッフが1ヵ所に集まるのは非効率的だと考え、数年前からオンラインでのビデオ会議を導入していました」 同様に教育活動のオンライン化を推進。自社の教育カリキュラムに沿ったプログラムも構築されており、今年の新人スタッフは、当面サロンでの実務経験を積めなかった分、自宅での研修に集中した。プログラムの一部であるオンラインセミナーや、社内クラウドに蓄積された学習動画を視聴した後のディスカッションには、先輩スタッフも新人と一緒に参加。鈴木代表やベテランスタッフによる実技デモンストレーションのライブセミナーには、最大で100人ほどが集まるなど、有意義な教育活動が展開されたようである。
Zoom を活用した研修活動を展開
ちなみに今年は、人材採用に関しても、美容学校生に向けたオンライン説明会を開始。従来より広範囲で、美容学校生徒とのコンタクトが取りやすくなるとの期待も膨らむところ。しかし新型コロナウイルスの影響で美容学校自体がどのような状況になっているか、把握しきれていないため、来春の採用については白紙の状態であるという。
新たに芽生えたスタッフ成長の種
「業績としては大打撃であったのですが、スタッフが美容の仕事を見つめ直し、その価値に誇りを感じられる良い機会になりました。お客さまがサロンに来てくださるありがたさを改めて実感でき、それがサロンワークに生かされることを思えば、決して無駄な時間ではなかったと強く感じています」と自粛期間を振り返る鈴木代表。スタッフの内面的な成長を感じ取った様子だ。
ゴールデンウィーク明けに休業店舗は営業を再開。各店舗、コロナ対策として、フロントデスクにはクリアボードを設置して飛沫を遮断。セット面は透明のシートで区切り、スタッフはフェイスシールドとマスク着用を徹底した。また、来店客に対しては、検温と手指消毒の協力を求め、手袋を無償提供するなど、考え得る対策を全て取り入れた。その徹底ぶりを、顧客は好意的に捉えたらしく、6月には通常の8割くらいまで業績が回復した。
コロナ感染防止を徹底するサロンの姿勢に理解を示し、顧客数も回復傾向に(写真はFORTE GINZA)
「周りの話を聞くと、5月下旬から6月にかけて、かなり景気が良さそうなのですが、消費マインドが都心に向いていないのと、時間帯ごとの客数を制限していることもあって、完全回復には今一つ足りていません」
売上の低下分をどのように補填していくかが、with コロナにおける課題というが、可能性は、やはり同サロンが進める社内改革に含まれていた。一つは、Eコマースの充実による、店販比率の拡大。より専門的な知識が必要と、技術者以外のスタッフが専属となって部門の充実を図るためマーケティングを学び、店頭販売とは違ったアプローチを仕掛けていくという鈴木代表。
「with コロナという意味ではもう一つ。サロンの滞在時間の短縮も、顧客ニーズの一つになると考えられます。そのための技術のスピード化、または新たな短時間メニューの開発も考えていきたいと思っています」
株式会社フォルテ 鈴木浩一朗社長