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1980-90sの日本とTシャツとわたし/高橋 龍

第9回 日本生まれのあのカルチャーに、再び魅せられよう

 1980~90年代は、日本独自のカルチャーが大きく花開いた時代。そして今、その時代に青春時代を過ごし、センスを養ったクリエイターたちが、第一線で活躍しています。若者世代は、そんなバックボーンを持つ彼らがつくった服などに「エイティーズ」や「ナインティーズ」の新鮮さを感じ、身に付けているというわけです。今回はそんな、現在のトレンドキーワードの原点にある'80年代、'90年代の日本、東京のカルチャーにひもづいたTシャツを集めてみました。

 '80年代といえば、アイドル全盛期。女性、男性アイドルたちが音楽シーンを華やかに彩りました。その中でもひときわ目を引く存在だったのが、“キョンキョン”こと小泉今日子さんです。僕的には'80年代のイット・ガールといえば彼女。アイドルなのに髪をボーイッシュなショートスタイルにしたり、衣装も奇抜に仕立てたりして、アイドル然としていないところも魅力的でした。'90年代の裏原宿(通称・裏原)ブームをけん引した、UNDERCOVERの高橋 盾さんや藤原ヒロシさんとも親交があり、高橋さんと藤原さんがコラボしたAFFAというブランドで小泉今日子さんのTシャツをつくったのですが、それがかなりのレアものになっているようです。裏原と言えば、'90年代の裏原ブームを象徴するブランド、NIGOさんのA BATHING APEも欠かせません。記事の下に載せているのは、同ブランドが香港に出店した記念につくられたミレニアムTシャツです。写真家・ブルースウェーバーのパロディだそうです。

 SONYがMD(MiniDiscの略)、MDウォークマンを発売したのも'90年代のことでしたね。そのCMに起用されたのが、当時大人気だったイギリスのアーティスト・ジャミロクワイです。今、Suchmosが若者を中心に注目されていますが、彼らはジャミロクワイに大きな影響を受けているそうで、確かに2者の楽曲を聴き比べてみると通じるところがあります。Suchmos好きの若者がジャミロクワイに戻る現象も起きているとか。そうやって好きなアーティストの起源にさかのぼってみるのも楽しいですよね。ちなみに、OFFWHITEのデザイナーであり、2019年春夏よりLOUIS VUITTONのメンズウエアデザイナーを務めるヴァージルアブローが、2019年LOUIS VUITTONプレフォールでジャミロクワイにインスパイアされたコレクションを発表しています。リバイバルっていうのは、こうして連鎖していくんだな、と改めて実感しています。

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日本のトレンド発信地、東京・原宿で今日、彼女と一緒にスナップされちゃいました!(嬉)「ポイントはこのヴィンテージTです」なんてオレたち、超ツウじゃない?

[1980-90sの日本]Tシャツコレクション

懐かしい人もそうでない人も、今注目度が高いこの年代のTシャツは1枚持っておいて損はなし!「クールジャパン」の源をまとおう。

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小泉今日子
「花の82年組」の1人であり、松田聖子、中森明菜と肩を並べる'80年代を代表するアイドル。キョンキョンの愛称で親しまれている。このTシャツは、ファンクラブ会員向けにつくられたもので、デビュー以来36年間所属していたバーニングプロダクションのタグ付き。

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A BATHING APE
NIGOが1993年に立ち上げ、当時の裏原ブームをけん引したブランド。「エイプヘッド」というサルのロゴがトレードマーク。コーネリアスやスチャダラパーなどのツアーTシャツを手掛けたことで人気に火が付いた。このTシャツは香港出店記念につくられたもの。

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うる星やつら
高橋留美子原作の漫画で、テレビアニメは1981年から約4年半にわたって放送。1984年4月までは押井 守が監督を務めた。劇場版『うる星やつら オンリー・ユー』(1983年)に続く『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984年)は、同監督の出世作とされている。

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SONYとMD
SONYが1991年にMD(MiniDisc)を、その翌年にMDウォークマンを発売し、より手軽に音楽を楽しめるようになった’90年代。’97年にはアシッドジャズバンド・ジャミロクワイがMDのCMに起用された。Tシャツの影絵のようなイラストは、ジャミロクワイのシンボルマーク。

ヴィンテージTシャツの豆知識 vol.9

'80、'90年代のTシャツと言えば……
「ヴィンテージTシャツのタグは情報の宝庫!」と伝えてきたが、「SCREEN STARS」のタグを見たことがあるだろうか?「FRUIT OF THE LOOM」からプリンタブル用のTシャツブランドとして1980年にアメリカでリリースされたもの。「着る広告」としてさまざまなプロモーションにも使用され、'90年代には年間1億枚を全世界で販売していたが、現在は流通していない。いつかこのタグがヴィンテージの印になるかも?

解説_高橋 龍
たかはし・りゅう/映画、音楽、アートのヴィンテージTと90sカルチャーを感じさせる古着を専門に扱う「anytee」のオーナー。
instagram : anyteeshop

イラスト_Mizmaru Kawahara

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※本記事は、『ヘアモード』2019年11月号で掲載した記事を転載しました