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欧州ビジネススクールでの修士号に思ったこと *非MBA

こんにちは!アクセス頂きありがとうございます。
今回は、22年9月-23年6月まで私が通い、修士号を取得したベルギーのビジネススクールという存在について、経験に基づいてお話しようと思います。

ヨーロッパでの就職を目指し、その前段階として現地での修士号取得を目指していた私は出願準備段階で諸先輩方の体験談等をネットで漁りながら情報収集をしていました。しかしMBA経験談は多々あるものの、非MBAでのビジネススクールの修士について(特にSupply Chain Management)は多くなく、学校選定や入学準備は手探り状態だったことを記憶しています。実際オンラインで相談に行った大手留学エージェントにはほぼ門前払いを受けてしまいました、金にならない客と判断されたのだと思いますが・・・

私が行っていたところはお世辞にもトップ校と言えるものではなく、何だよこれレベル低・・・と思われる読者の方もいらっしゃるかと思います。あくまで私の個人的経験ベースになりますが、今回の記事では非MBAでのヨーロッパ(ベルギー)ビジネススクールのPro/Conを中心に、その存在について個人的に思ったことを書き綴ってみようと思います。進路検討されている方へ、少しでも参考になれば幸いです。

※私の専攻はアカデミアな大学院でも取得可能な大学院があり、ある程度の比較がしやすい点、またMBAとは様々な前提が異なる点はご留意頂けますと幸いです。


メリット

まずは私が思ったビジネススクールで非MBA修士号を取るメリットから。

・卒業後の現地就職へのアクセス

まずはやはりこれでしょうか。基本的にビジネススクールは、学術的な研究には主眼を置いておらず、ビジネス界で管理職/経営幹部となれる学生を輩出することに比重を置いています。そして卒業生に各界で活躍してもらうことにより、学校の価値も高まります。そのため、卒業後への就職支援は非常に手厚い印象です。キャリアセンターとのパーソナルなバックアップ、校内のキャリアイベント、企業訪問、Aluminiとのネットワークイベント等々、チャンスとなる場は豊富に提供してもらえる傾向です。

個人的ケースになりますが、驚いたのは外国人の学生向けに、市と国のビザ発給に関する担当者が2度も学校へ出向いてくれ、卒業後の求職ビザおよび労働ビザについてのSessionを設けてくれたことです。ビザ周りの役人へのダイレクトなアクセスは難しく、時間のかかるものだと思っていたため、非常に助かったと同時に、学校の調整力へ驚きもありました。

※国によっては卒業後の求職ビザの取得で滞在延長が可能になる点もあります。これはビジネススクールに限りませんが。

・業界のコネ

就活とも重なりますが、縦横のコミュニティ。非MBAの場合は業界や仕事がより絞られることになるため、今後同じ世界で生きていく上で間違いなく財産となるものです。特にローカルの同級生については、その国の将来を引っ張っていくような人たちです。そういった人間と1年間をともに過ごせるのは良い時間でした。学校側としてもコミュニティの形成に主眼を置いており、クラス内の繋がりが深くなるようなプログラム、チームビルディング等々が多く組まれていましたし、ビジネススクールの傾向ではないかと思います。

・負荷

これは必ずしも良いとは限りませんが、アカデミアの大学院と比べて相対的にクラスの負荷はコントロールしやすいと感じています。私のケースだと足りないと感じた分野については自分でインプットを埋めなければいけないほどでしたが、目的が現地就職であった私にとっては、就活に全力投球できたのは助かりました。(※当然学校により差はあります)

・入学難易度

後述するデメリットでも触れますのでコインの表裏ではありますが、比較的入学しやすいのではないでしょうか。特にInternationalを売りにしている学校だと、MBA外でのヨーロッパのビジネススクールにいる日本人はマイノリティのため、ペーパー基準を満たせれば比較的入りやすいかと思います。

デメリット

続いてデメリットになります。正直なところ、こちらの方が濃いかもしれません。

・プログラムの質のばらつき

基本的にビジネススクールはビジネス界で管理職/経営幹部となれる学生を育てること、そしてコミュニティでの人脈形成が主な目的だと私は考えています。

そのためソフト面に注力することが多く、アカデミアな大学院と比べて学術的なインプットのレベルは相対的に低い傾向にあると思います。ざっくり言ってしまえばMBAと同じ傾向なのですが、取れる学位はMBAではありません。

そのためハードスキル面は質も量も納得いくものではなく、自分の思い描いていたインプットに比べてと足りないと感じる部分は自分で埋めていく必要がありました。極端な例ですが、データ分析を名乗るクラスがあるにも関わらずSQLやR, Pythonは1mmも教えてもらえなかったのでDatacampで勝手に勉強しました。フルタイムコースとして学費を払っているのに、時間とお金を余計に使わなくてはいけなかったのはそれなりのストレスでした。

ビジネススクールにはペルソナとなる、基本的なターゲットとなる学生の層があります。このプログラムは学部新卒向けなのか、数年の業界経験がありマネージャーを目指す人向けなのか、管理職向けなのか、セカンドマスターやキャリアチェンジを志向する人向けなのか。当然ですが、自分の現状/今後のパスとマッチするプログラムなのか見極めることは非常に非常に非常に重要です。ここを失敗すると時間とお金をドブに捨てかねません。

オフィシャル情報で判断つかない場合、Linkedinで在校生に直撃して質問するのが手っ取り早いです。学校の窓口に聞いても好意的な返事しか来ないケースが多いので。

・学生のレベルのばらつき

これも面倒です。この点について細かく語ろうとすると無限大の文章になってしまうので、簡潔に要点を述べると、Requirementの難易度と学生の質は当然ですが比例します。ビビらず妥協せず、出願時点では目一杯背伸びして難しい学校にApplyすべきです。

特に留学生は玉石混交のケースが多いのではないでしょうか。例えば私のケースですが、プログラムマネージャーから卒業前に色々と裏話を聞き、彼らは入学生獲得に際してKPIを課されており、その中には学生の数と国籍の数が入っていると教えてくれました。Internationalを推してるプログラムでしたので、まあそうだろうなと思いつつも、マイノリティな国籍の候補者はペーパーの基準さえ満たせば実質フリーパス。そのため、レベルのばらつきはお察しの通りでした。(GAFAで働いていたような超優秀な人から、英語もおぼつかないような人まで)

一方で、ローカルに当たるベルギー人は、入学前に最低1つの指定された大学でのマスターの取得を義務付けていました。ビジネスエリートは2-3つ修士を持っているのはよくある国とはいえ、彼らを入れることで学生の質の担保、そしてベルギー人同士縦横でのコミュニティの強化を志向しているんだろうなあと考えていました。逆に留学生はお客様であり、悪く言えば金づる的存在かもしれません。

ビジネススクールという存在

その国、またヨーロッパでの社会階層における上位のエリートたちの人脈作り、コミュニティ形成の手段としての機関であるという印象です。プログラムの中身を充実させるよりも、ブランディングに力を入れている学校も多いのではないでしょうか。例えば実際に卒業式では同級生の家族の方々が来ていましたが、私でも名前の知っている会社の社長、副社長、母国の元通産大臣、現役農林水産大臣等々がずらり・・・ The High-Classという家庭ばかり。こういった教育機関では私のような平凡なアジア人留学生はお客様、またはマスコットです。扱いに期待しすぎず、うまく学校のリソースを利用することが重要だなあと感じました。

また、彼らの中にある社会階層への意識、エリート自覚のような感覚は、今回の留学で学んだことの一つでもあります。私は修論にあたるプロジェクトを24年間旅行以外ベルギーから出たことのないコテコテのローカルエリートとペアで臨み、8週間を共にしました。彼らは就職に際して、Masterを2つ持っているならこのランクの会社、1つならここ、Hogeschoolが最終学歴の人がホワイトカラーで働いている会社には入らない、などなど、日本以上に学歴への拘りと社会階層への意識が強いように感じました 。もちろん個人差はありますが。この階層社会に平凡なアジア人留学生として入り、以降のキャリアをどのようにデザインしていくかは引き続き自分の中で消化していかなければいけないと感じています。

以上が私の個人的経験として、欧州ビジネススクールについて思ったことになります。個人的には修論含めて負荷としては低く、アカデミアの大学院でサバイブされている方と同じMSc修士号を持つのは少し恥ずかしい気持ちもありますが、ヨーロッパで学位を取って現地就職したい、と考えていた私にとっては生存戦略でした。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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