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外交の場で用いられるフランス語

こんにちは!
フランス語は第一次世界大戦まで外交舞台での公用語として用いられ、その伝統は今もなお外交の様々な場面で目にすることができます。

今回は、実際の外交の場で用いられることの多いフランス語の単語を、少しだけ紹介しようと思います。

1.アグレマン

アグレマンはフランス語では「agrément」と書かれます。これは外交団の長(主に大使、それから領事団の代表ですが総領事や領事)に、外交団を迎える国(「接受国」と言います)が与える承認のことを言います。

日本で言うなら、駐日米国大使が新たに着任する際に、その着任前に在日米国大使館の担当者が、日本政府(外務省)とやり取りをして、事前に取り付けることになっています。この場合、大使館の所在する日本が「接受国」、米国が「派遣国」となります。

このアグレマンがなかなか取れないと、大使がなかなか着任できない、、、という事態になります。

 英語の「agreement」に形も意味も似ている単語由来なので、イメージがしやすいのではないかと思います。

2.リエゾン

フランス語を習ったことのある人なら必ずと言っていいほど聞いたことのある「リエゾン(liaison)」

外交の場面で用いられる場合は、「連絡役」というような意味で使われます。

大きな国際会議や首脳の外国訪問の際、要人と共に同行し、情報を逐一連絡する重要な役割を担う人物です。

また、G7やG20のような大規模国際会議が開催される際には、「各国リエゾン」という人も登場します。これは、それぞれの国の代表団の担当窓口となる人を指します。

例えば、日本でG7サミットが行われるとすると、日本の外務省から「米国リエゾン」「ドイツリエゾン」などの担当者が選ばれ、各国の代表団との細かな行事次第・日程等の連絡事項の伝達や様々な調整を行うことになります。

会議開催中は朝から晩まで代表団と日本側本部との間の連絡係を担うので責任重大、ワークロードも大きいですが、その分やりがいも大きい役柄です。

3.テタテ

カタカナだけで見ると「何のこと?」と思うかもしれませんが、これはフランス語の「tête-à-tête」から来ています。英語で言う「face to face」ですが、外交の場では「マンツーマン」のような意味で使います。

何が「マンツーマン」なのかと言うと、二国間会談の場で両首脳(両大臣 etc.)と通訳だけで会談が行われる、という意味です。

通常、首脳会談や大臣会談となると、代表団がテーブルの両サイドにずらりと並びますが、そうではなく、二人だけの「差しの会話」をするときには「会談はテタテで行います」という風に表現されます。

さて、ここからは、外交の場で使う「英語の中のフランス語」を紹介したいと思います。

外交団(diplomatic corps)

まずは、「外交団」を表す英語「diplomatic corps」です。

これは、フランス語の「corps diplomatique」(コール・ディプロマティック)から来ています。「corps」は「体」という意味ですが、ここでは「団『体』」というような意味で使われています。

東京で「外」という青いナンバープレートを見かけられたことのある方がいらっしゃるかもしれません。あれがいわゆる「外交官ナンバー」というものです。

ドイツでは、「外」の代わりに「CD」という略語が外交官の車のナンバープレートに記されていますが、これは「corps diplomatique」の頭文字をとったものです。「領事団」は「CC」と言い、これは「corps consulaire」の略です。

昔、ある先輩が「diplomatic corps」の「corps」を、「コープス」と読んでいて、周りの誰も訂正せず、僕も言えずにいたのですが、英語の「corps」も「コア」「コール」と読みます。「コープス」は「corpse(死体)」の発音ですね。語源は一緒なのに、「e」があるかないかで大違いです。

「外交官の屍」と言うのは、まあ、あの労働環境を見れば、当たらずとも遠からずでしょうが…。

ちなみに、ドイツ語では「diplomatisches Korps(ディプロマティッシェス・コーア)と、Cの代わりにKで書きます。

この「Korps」も「ps」は発音せずに「コーア」と読むのですが、全く同じ発音で「コーラス」を表す「Chor」があります。

「外交団」のことを「diplomatischer Chor(外交合唱団)」と書いている人がいて、こちらは何だか可愛らしかったです。会議は踊る、されど進まず(?)。

次席 chargé d'affaires

取りあえず今回の最後は、大使館の「次席」を表す単語です。これは見た目からして明らかにフランス語ですが、英語の外交文書でも普通に用いられ、「シャルジェ・ダフェール」と読みます。

前半の「charge de(d')」の部分は英語の「in charge of」に当たる言葉、後半の「affaires」は英語の「affairs」に当たります。

全体で「業務責任者」と言った感じでしょうか。

大使が大使館の外向きの顔だとするなら、次席は大使館の中の事務作業を統括する中の顔。次席の役割が、この単語に明確に表れています。

女性の場合は「chargée」と、後ろに「e」を1つ足す必要があります。

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いかがでしたでしょうか?

他にも外交の場で使われているフランス語やフランス語由来の表現はあるので、またの機会に紹介することができればと思います。

ここまでお読みくださいましてありがとうございました!

【画像】USA-Reisebloggerさま【Pixabay】


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