英語に似ているドイツ語*15
こんにちは!
「英語に似ているドイツ語」の更新がだいぶ空いてしまいまして、失礼いたしました。
今回はドイツ語の「wohl」と英語の「well」を比較したいと思います。
使う場所が違うことが多いので、なかなか接点のないこの2単語ですが、親戚関係にある単語です。
確かに、よく見ると「w+母音+l」と姿形もよく似ています。
それでは、早速見ていきたいと思います。
1.「健康」を表す「wohl」と「well」
「well」は「良く」という意味(副詞)で一番よく使われますが、「健康な」という意味(形容詞)もあります。
「You look well. (元気そうですね)」で使われる「well」は、「健康な」という意味の形容詞です。
「良く」の意味から、「調子が良さそうですね」と解釈しても日本語では納得してしまうのですが、これは「健康な」という意味なんですね。
この意味と「wohl」の関係で直ぐに思いつくのは、ドイツ語で乾杯の時に言う
Zum Wohl! (健康を祈って!)
という表現です。
ドイツ語の「wohl」にも「健康に」という意味(副詞)があります。
副詞「wohl」の名詞形は「Wohl」というわけです(単純)。
健康、という意味の二つの単語の類似点。確かに言われてみれば、「福祉」を意味する、
welfare と Wohlfahrt
も形がそっくりですよね。「fare」と「fahrt」はどちらも「行く」という意味の動詞から来ています。
「健康に」やって「いく」⇒「福祉」、という発想でしょうか。
2.「wealth」は「well」の名詞形
また、「Wohl」には「健康」の他に「繁栄」という意味もあります。「wohlhabend(wohlを持っている)」という形容詞は、「裕福な」という意味を持つドイツ語です。
「wohl」のこの意味も「well」と関係があるのかというと、例えば「well-off」という形容詞。「裕福な」と意味も同じです。
そして、よく考えると、「富」を表す英語の「wealth」って、スペルは違えども「『ウェル』ス」と読みますよね。実はこの「wealth」は「well」の名詞形なのです。
「warm」の名詞形が「warmth」、「deep」の名詞形が「depth」であるように、形容詞「well」に「th」をつけて「wealth」です。
3.「良く」を意味する「wohl」
こんな感じで、ドイツ語の「wohl」に似た意味が、英語の「well」にはあるのです。
では、ドイツ語の「wohl」にも、英語の「well」の持つ「良く」という意味はあるのでしょうか?
実は、ドイツ語の「wohl」は、「多分」という意味の副詞として使われることが多いです。
なので、文章で出てくるとき、僕はどうしても「多分」という意味を最初に思い浮かべるのですが、実はドイツ語の「wohl」にも「良く」という意味はあります。
例えば、
wohlbekannt
という、よく使われる表現があります。
これ、何度も見てきたのですが、恥ずかしながら僕は無意識に「多分知られている」と脳内で解釈して、「何か文脈に合わないなあ…」と思っていました。
しかしこれは、英語の
well-known
の親戚なのです。
語の作り方も、well≒wohl、bekannt≒knownで、綺麗に一致。「多分知られた」みたいな自信なさげな意味ではなく、「『よく』知られた」という意味だったのです。
他にもこの「『wohl』が『良く』という意味で使われる」という場合はいくつかあります。
wohlgemeint 善意の(「良い意味で言われた」)
wohlüberlegt 熟慮の上での(「良く考えられた」)
wohlverstanden 十分に理解した(「よく理解された」)
これらはほんの一例ですが、どれもずっと無意識に「wohl」を「多分」と置き換えたため、意味がモヤッとしていた表現たちです。
このように、「wohl」と「well」は、一見遠そうで、実は非常に接点の多い単語でした。
語学では、点と点の知識が線で繋がると、記憶に残りやすいです。これからも既存の知識の補助線になるような記事を書くことができればと思います。
ここまでお読みくださりありがとうございました!
(画像:Pixabay)
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