【ドイツ語】前置詞「auf」いろいろ
今回はドイツ語の前置詞「auf」の色々な意味を見ていきたいと思います。
はじめに
「auf」は、語源の上では英語の「up」に相当します。
ドイツ語の方言に「uf」(ウーフ)という言い方が残っているように、昔は「au」の二重母音は「u」という長母音でした。
「uf」のほうが「up」に似ていますよね。
英語の「up」も「up the stairs」のように前置詞として使うときはありますが、どちらかというと副詞のイメージですね。
ここが英語とドイツ語の、似ているけれどズレているところです。
一番基本は、「~の上へ/で」
なぜ英語の「up」の話をしたかと言うと、
ドイツ語の「auf」の一番基本的な意味は「~の上へ/で」だからです。
英語の「up」と結び付ければこの意味が分かりやすいと思ったためです。
Ein Buch liegt auf dem Tisch. (その机の上に、1冊の本が置いてある)
Er sitzt auf dem Stuhl. (彼はその椅子の上に座っている)
「auf」の場合は「~の上へ/で」と、高低差のニュアンスが入ってきます。
これが一番基本的な意味。
上かどうかは無関係な「~の場所へ/で」
もう一つ、全く別の意味で、「~へ場所に/で」という意味があります。
ここには高低差のニュアンスはありません。
「Ich gehe auf die Post」(郵便局に行きます)と言って、郵便局が山の上にあるわけでも、ましてや郵便局の屋上に登りにいくわけでもありません。
この「ある地点に向かう/いる」という「auf」の意味は、「in」の持つ「空間の中に入る、いる」という意味と対照をなしています。
早い話、この「auf」は英語の「at」に近い意味なわけです。
なので、「auf dem Markt」という時も、実は「市場の上に立っている」というよりも、単に「市場という場所にいる」という程の意味なのです。
他にも「auf dem/das Rathaus」「auf dem/den Bahnhof」「auf dem/das Büro」「auf der/die Toilette」と、単に「場所」を表すときに「auf」を使う例は意外にもたくさんあります。
一方で「auf dem Musem」「auf dem Theater」というのは古めかしい表現だそう。確かに、これらの単語は今では「in」と一緒に学びますよね。
行事に参加する場合
また、上記と関連する意味で、「何かの行事に参加している」ときには「auf」を使います。
何を以て「行事」と言うかですが、ここで例にするのは
「Kongress(会議)」「Hochzeit(結婚式)」「Fest(祭り)」更には「Besuch(訪問)」「Reise(旅行)」「Arbeit(仕事)」などです。
確かに、会議をするための議場は存在しますが、「会議」という場所は存在しませんよね。「結婚式」や「訪問」もそうです。
こういう、一時的にだけ存在するものに向かう/いるときには「auf」を使います。これは「上」という意味とは全く無関係な「auf」の使い方です。
狙いを定める「auf」
では、ここからが応用編です。
「auf」の基本的な意味は「up」にあるように「~の上に/で」であると話しました。
この上に向かう動き、例えば皆さんが猟師だとして、飛ぶ鳥に銃を構えるとします。
この場合も、猟銃の銃口は下から上に動きますよね。
しかし、この動きは「狙いを定める」ための動きとも解釈できます。
この連想から、「auf」に「~に向かって」という意味が生まれます。
この場合「auf」の後に来るのは4格の名詞になります。
今いる場所と、狙いを向ける場所、2つの場所が必要なためです。
この「~に向かって」という意味で使われるときは、
元々の「~の上に」というニュアンスは消えます。
つまり、「見上げる」のでも「視線を落とす」のでも、どちらでもOK。
「Er sah auf die Uhr」(彼は時計を見た)というとき、教会の時計台の時計を見上げるのでも良いですし、腕にしている腕時計に視線を落とすのでも良いのです。大事なのは「狙いを定める」ですから。
この「狙いを定める」の「auf」は、実は分離動詞との組み合わせでよく使われます。
一緒に使われる分離動詞の定番な前つづりは「ein」や「zu」です。
Er kam auf mich zu. (彼は私を目指して近づいてきた)
これと Er kam zu mir. (彼は私の方にやってきた)の違いは何でしょうか?
「auf mich」の方が、「私に狙いを定めて」の意味がハッキリ現れているのです。明らかに彼は私に何か用があって近づいてきているんですね。
一方「Er kam zu mir」はもっと広い意味です。単に私のいる場所に近づいてきただけ。もしかしたら私の隣の空いた席に座りにきたのかもしれませんし、単に通り過ぎるだけかもしれません。
またここから更に連想が広がり、「目的」や「理由」という意味で「auf」が使われることもあります。
コロナ禍に「auf Corona testen」という言い方を聞いたことがある方もいるかと思います。これは「コロナに狙いを定めてテストをする」=「コロナの検査をする」という意味です。
また「auf Wunsch (の希望により)」「auf Bestellung(注文により)」「auf Befehl(命令により)」のように、何かの行動をとる理由を述べるときにも「auf」が使われます。
このように、これらの派生的な意味は根本的には「上へ向かって」という「auf」の根本的な意味と繋がっています。
「auf」には細かく分けると更に多くの意味があるのですが、今回はもう長くなってしまいましたので、この辺で。
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