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【ドイツ語】分離動詞の使いどころ

ご無沙汰しております。暫く更新が途絶えてしまい失礼しました。

今回は、ドイツ語の文法の中の「分離動詞」について私の考えを書いていこうと思います。

そもそも分離動詞はなぜ必要なのか? という点について。

分離動詞にも色々種類があるようで、一概には言えませんが、
一つは、「文脈的に明らかな情報を省略したいから」があると思います。

例えば、「私は電車に乗ります」をドイツ語では、

Ich steige in den Zug. と言うことができます。

この時は、「steigen」は分離前つづりのない、普通の動詞です。

逆に、「私は電車から降ります」と言いたければ、

Ich steige aus dem Zug. とドイツ語で表現します。

でも、毎回わざわざ「『電車に』乗る」「『電車から』降りる」って言うの、面倒臭いですよね。

文脈的に、何の乗り物から乗り降りしたかは分かるときもあります。
もう少し情報を端折れないだろうか。

そんな願いをかなえるのが、分離前つづりです。

「in den Zug」ではなく、「ein」にしちゃいましょう。
「aus dem Zug」ではなく、「aus」一語にしちゃいましょう。

こうして、「私は乗車する」は、

Ich steige ein. 

「私は下車する」は、

Ich steige aus. 

だけで言うことができるようになるのです。

日本語の「乗車」「下車」も、厳密には何の乗り物を乗り降りしたかまでは分かりません。

でも、文脈的に分かるときや、あるいは大した情報じゃないので殊更に取り上げる必要がないときは、これで事足りてしまうのです。

これが分離動詞の肝、と言っても良いのではないかと私は思います。

他にもありますよ。

例えば、「部屋の中に(歩いて)入る」と言いたいときは、

Ich trete in den Raum. 

と言いますが、単に「中に入る」と言いたいだけのときは、

Ich trete ein. 

と言えば済みます。

「Ich trete in den Raum」の場合は、
「Ich trete in einen großen Raum」や
「Ich trete in den Raum meiner Schwester」のように、
「部屋」についてもう少し情報を付け足せますよね。

一方、「Ich trete ein」は、

「中に入る」

これだけしか言っていません。
が、文脈的には、これだけで情報としては十分の時もあるわけです。
いちいちくどくどと言っていたら面倒ですもんね。

ただ、ドイツ語の場合、ここが面白い点なのですが、
わざわざ情報を足してくどくすることもあります

最初の例「einsteigen」ですと、

Ich steige in den Zug ein. 

と言うことも実はできるのです。

日本語に直訳するなら、「電車に乗車する」でしょうか。

日本語でも違和感を持たない方もいらっしゃるかもしれません。
厳密にはこれ、「電『車』に乗『車』する」で、情報がダブっています。

Ich steige in den Zug.
Ich steige ein. 
Ich steige in den Zug ein.
 

この違いは一体どこにあるのでしょうか・・・。
興味深い問いではありますが、深掘りすると長くなりそうなので、ここでは「ダブらせて言うこともできるんだ」程度に考えておくことにしましょう。

恐らくは、「Ich steige in den Zug」は、「ホームから電車の中に入るまで」の動作に注目し、

残りの2つは、
「ホームから乗車し、今、車内にいる」と、動作だけでなく今の状態(=動作の結果)にも注目しているという違いがあるのではないかと思いますが、

ハッキリしないので次の話題に移りましょう。。。

***

さて、分離動詞の方が使い勝手が良いときは、他にもあります。
それは、「抽象的」「比喩的」な表現に使う時です。

例えば、先ほど取り上げた「eintreten」

「eintreten für A」で、「~の味方をする」という意味で使われます。

直訳すると、「~のために、中に入る」となります。

でもこのときの「中に入る」は、何か具体的な部屋とか場所とかを表しているわけではありません。

強いて言うなら、同じ考えを持つ人のグループだったり、あるいは政党だったり結社だったりするかもしれません。

が、正直、この表現は「何の中に入るか」に焦点を置いていません

まして、比喩的な意味で使うわけなので、実際にどこかの中に入っているわけでもないのです。

なので、そんなときには、「ein」(中へ)という、漠然とした意味の前つづりがとても打ってつけなのです。

従って、

Ich trete für die Demokratie ein. (私は民主主義を支持する)

というように使うことができるわけです。
「民主主義のために私は中に入る」が直訳ですが、元々は何の中に入るという意味だったかは、語源を調べると分かるのかもしれませんね。
面白そうです。

以上、分離動詞が便利なのは、

①文脈上、何を指しているか明らかなとき
②比喩的な意味で使われるとき

に、本動詞+前置詞の表現を分離動詞に置き換えることができる点でした。

ここまでお読みいただきありがとうございます!!

【画像】Lilenさま(Pixabay)


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