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「順接の『が』」と語学学習

「順接の『が』」とは、

①昨日大阪に行ってきたんです、凄い人でしたよ。
②折り入ってお話したいことがあるのです、今お時間宜しいでしょうか?
③お忙しいところ恐縮です、暫くお待ちいただけますでしょうか。

など、前段と相反する内容が後に来ない「が」のことです。
ちなみに英語では③を除き、順接の「が」の訳に「but」は使えません。
(なお、③で使える「I'm sorry, but…」の「but」は逆接の「but」とは別のもののようです。)

この「順接の『が』」、文章では避けるべきなんですね。
今更ながら知り、そして腑に落ちていません。

逆接だけでなく、「前置き」に使われる「が」もあると思うためです。

これは何を「文章」と定義するかによると思います。
文章であっても限りなく話し言葉に近いメールであれば、順接の「が」を使っても、個人的には失礼でもないし誤解も招かないと思います。

「が」を見ると逆接が続くと予想する人が多く、誤解を避けるために順接の「が」を使うべきではないということなのかもしれません。

ただ、僕は接続助詞の「が」の後に必ずしも逆接を想定していないので、この指摘が今一つピンと来ないのです。

一体、僕のこの語感はどこから来たのだろう?と考えてみました。

もしかすると、語学マニアの弊害なのかもしれない?と。

すぐに思いつくのは中学三年の英語の授業。
関係代名詞の「非制限用法」を勉強したときのことです。

非制限用法は、先行詞を修飾するというよりも「追加の情報」を伝える時に使われるものです。
次のような文を、皆さんは学生時代、どう訳されていましたか?

I have two sons, who live in the Bay Area.
(私には息子が2人いるが、彼らはベイエリアに住んでいる)

制限用法と非制限用法の違い!コンマつき関係代名詞の使い方をわかりやすく説明します (toiguru.jp)

先生は、非制限用法を訳す際には上記の例のように「順接の『が』」を用いて訳していました。

すると、クラスでどよめきと笑いが起こりました。
「先生!それおかしい!『が』なのに逆接になってない!」と。

今考えると、あの時先生を笑っていた学生たちの語感の方が「正しかった」んだなと思います。

ちなみに、ベネッセと進研ゼミのサイトを見てみると、「順接の『が』」は使われていません。今の現役生は「が」を使わなくなったのでしょうか。

I have a son, who lives in Tokyo. (非制限用法)
   「私には息子がいて、そして彼は東京に住んでいます」

関係詞|関係詞の非制限用法について|高校英語|定期テスト対策サイト (benesse.jp)

個人的には、これでは非制限用法の持つ「追加情報」のニュアンスが薄れて、「and」の文との違いが分かりにくい気がします。

もちろん、語学学習で使われる和訳には直訳が多いので、それ自体が自然な日本語とは言えません。

ですが、英語の非制限用法について言えば、そもそも原文に逆接の要素がないので、直訳であればむしろ「が」は出てこないはずなのです。

ちなみに、「順接の『が』」自体は、デジタル大辞泉では「接続助詞『が』」の第一義として掲載されています(「単に前の句をあとの句へとつなぐ意を表す」)。「逆接の『が』」は第二義となっています。

つまり、「順接の『が』」は存在しているし、古文の時代から続く歴史のある表現だと言うことです。

文法的に正しく、用法も間違っていないとなると、「順接の『が』は避けるように」は、単にスタイルの問題なのかな……と感じてしまいます。

誰が言い出したのか、その根拠は何なのか、語学好きとしては興味があります。

自分の中で腑に落ちるまでは、きっと指摘されても使い続けそうです。。。

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