【英語】定冠詞のキホン(3)

こんにちは。
前回は、「the door of the room」のように、「名詞A of 名詞B」となる場合に、「名詞A」に「the」が付く場合を見てきました。

今回は、「名詞A」に定冠詞が付かない場合、その中でも特に「無冠詞」となる場合を見ていきたいと思います。

無冠詞とは、つまり全く冠詞が付かないことです。
冠詞は私たちの母語・日本語にはない概念なので、どうしても必要以上につけてしまいがちですが、実は冠詞を全く使わない場面は意外と多いんです。

さて、その話に入る前に、今さらですが「名詞A of 名詞B」の形の持つ2つの意味を紹介したいと思います。

(the) assistance of the people

上の表現を、皆さんはどう考えるでしょうか?

「人々からの支援」でしょうか?
それとも「人々への支援」でしょうか?

そう、このように、「名詞A」が動詞的な意味を持つ場合、
「名詞B」はその「主語」である可能性(人々からの支援)、
その「目的語」である可能性(人々への支援)、
この2つの可能性があるのです。

なお、この記事では、「人々からの支援」の場合には「assistance」に「the」がつき、「人々への支援」の場合には「the」がつかない、
という話をします。

では、本題に移りましょう。

ちょっと今、サミュエル・ハンチントンの「文明の衝突」を英語で読んでいる関係で、引用文が政治・外交っぽいものとなりますがご了承ください。

Alignment with the weaker side enhances one's influence within the resulting coalition, because the weaker side has greater need of assistance
(拙訳:国は、比較的立場の弱い他の国と連携することで、その結果生じる連合関係の中で影響力を持つことができる。なぜなら、立場の弱いほうの国の方が支援を必要としているからだ。)

上の「greater need of assistance」は、名詞Aにも名詞Bにも定冠詞がありません。

名詞Bに定冠詞がつかない(不定冠詞 or 無冠詞)ことは結構ありますが、この記事で重要なのは名詞Aに定冠詞がつかないことです。

さて、ここの名詞A「need」は、動詞から生まれた名詞です。
意味も、「必需品」のような形のあるものではなく、
「必要とすること」のように、動作のニュアンスの残る抽象的なものです。

結論を言うと、
「名詞A=他動詞、名詞B=目的語」
という関係になるときには、
名詞Aには定冠詞がつかないことが多い
です。

「greater need of assistance」を使って文を作ると、次のようになります。

(The weaker side) needs more assistance

他動詞にとって、目的語はなくてはならないものです。
「必要としている」と言うだけでは、「何を?」という疑問が残ります。
そしてこの「何を?」というところが、一番注目の集まるところ、
つまり文の中で際立つところになるわけです。

面白いことに、「際立つものには定冠詞」というルールからは外れて、
際立つのが名詞Bの場合は、定冠詞は必ずも必要ではありません。

名詞Aが際立つ場合であれば、十中八九定冠詞が付くのとは対照的です。

次の例を見ていきましょう。少しややこしくなります。

Chinese hegemony in East Asia is unlikely to involve expansion of territorial control through the direct use of military force
(拙訳:東アジアにおいて中国が覇権を得るには、軍事力を直接的に使用した領土支配の拡大が必要であるとは考えにくいだろう)

隔世の感がある内容ですが、この記事では「of」の部分にだけ注目します。

「expansion of territorial control」の「expansion」には定冠詞がありません。

これも、

(Chinese hegemony) expands (its) territorial control

のように、「他動詞 - 目的語」の関係が成り立っています。
そのため、あくまで際立たせたいのは「領土支配」の方で、「拡大」ではないわけです。

次に、「expansion」に定冠詞がつく場合を見てみます。
上の付かない場合とニュアンスを比較してみてください。

Russian accceptance of the expansion of the European Union and NATO to include the Western Christian states of Central and Eastern Europe,…
(EUとNATOが中東欧の西欧キリスト教国を含む形で拡大することをロシアが受け入れること)

ここでは「expansion」の動詞形「expand」は自動詞です。
なぜそう分かるかと言うと、「the expansion of the European Union and NATO」を文に直してみると、次のようになるためです。

The European Union and NATO expand. 

主語と自動詞からなる「名詞A of 名詞B」の構造では、
自動詞に相当する名詞に注目が集まります

「EUとNATOがどうするの?」と。
その結果、自動詞に相当する名詞Aに定冠詞が付くのです。

最後に、1つ前の引用文でスルーしていた「the direct use of military force」を見てみましょう。

「use」の動詞形「use」は他動詞で「use military force directly」という関係が成り立つので、「use」に定冠詞がついているのは変ですよね。

ここで定冠詞がなぜ「direct use」についているかというと、
ここでは焦点が「直接使用」の方にあるからです。

「何を直接使うの?」ではなく
「軍事力をどうするの?」が際立たせたいポイントだからです。

このように、際立たせポイントの置き方次第で、
同じような構造でも定冠詞がついたりつかなかったりします。

逆に言えば、定冠詞のあるなしから、書き手のメッセージを汲み取る必要があるというわけですね。

以上のように、「名詞A of 名詞B」が「他動詞 + 目的語」となる場合は、「名詞A」には定冠詞がつきませんし、無冠詞にすらなることがあります

次は、今回スルーしている「Chinese hegemony」や「Russian acceptance」など、「国を表す形容詞 + 名詞」で定冠詞が付かない場合を見ていきます。

ここまでお読みいただきありがとうございました!


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