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冠詞の使い方、勉強しませんか〔ドイツ語〕

こんにちは!今回から、断続的に、冠詞の使い方について考察を書いていきたいと思います。用意するのはドイツ語のニュースや新聞の記事。そこでなぜ定冠詞、不定冠詞が使われているのか、あるいはなぜ無冠詞なのかについて、一つひとつ見ていき、冠詞の使い方のコツを徐々に身に着けていきたいと思っています。

記事を書いている本人自身がドイツ語の学習者なので、推論が間違っている場合もあります。ご了承いただければ幸いです。

なお、ここでは、冠詞の使い方を、「定型表現」と「文脈で使い分けが必要なもの」に二分しています。ノンネイティブにとって習得が難しいのは後者の方です。前者は、丸暗記すれば良いやと割り切ることができますが、後者は、慣れるまでは意識的に使いこなさないといけないからです。

以下、ドイツのニュース番組「Tagesschau」からの引用です。

Kabinett billigt umstrittenen Haushalt

Weil die geplante Rekord-Neuverschuldung nicht komplett für die Corona-Kosten benötigt wird, verlagert Finanzminister Lindner 60 Milliarden Euro auf kommende Jahre. Das ist umstritten, wurde vom Kabinett aber gebilligt.

Das neue Bundeskabinett hat den von Finanzminister Christian Lindner vorgelegten Nachtragshaushalt gebilligt, der massive staatliche Investitionen ermöglichen soll. Mit dem 60 Milliarden schweren Budget will die Ampel-Koalition den Energie- und Klimafonds aufstocken. Am Donnerstag soll der Gesetzentwurf erstmals im Bundestag beraten werden.

それでは、1つずつ見ていきます。

Kabinett billigt umstrittenen Haushalt

https://www.tagesschau.de/inland/nachtragshaushalt-109.html

 新聞等の見出しには冠詞が用いられない傾向にあります。普通の文では、Das Kabinett billigt den umstrittenen Haushalt. となるのではと思います。これは、Kabinettが「社民党・自民党・緑の党の新連立政権内閣」であることが明確であるから(⇒定冠詞)です。
 Haushaltについては、文脈的に特定されれば定冠詞、読者にとって新情報なら不定冠詞ですが、「billigen(承認する」とあることから、以前から争点として話題になっていたことが読み取れるので、定冠詞でも読み手は「ああ、あの予算案のことね」と分かると思います。ドイツ内政の話ですし。

Weil die geplante Rekord-Neuverschuldung nicht komplett für die Corona-Kosten benötigt wird, verlagert Finanzminister Lindner 60 Milliarden Euro auf kommende Jahre. Das ist umstritten, wurde vom Kabinett aber gebilligt.

〔die geplante Rekord-Neuverschuldung〕➡これは、このテーマに関しては既出の情報なので、「定冠詞」だと考えられます。
「不定冠詞」であれば「計画されている何らかの記録的な国債額」というように言えると思います。

〔die Corona-Kosten〕➡これは、コロナに関するコストの全てを指しているので、「定冠詞」です。「あのコロナのコスト」という、「特定のもの」を指すのではなく、「全体」を指す定冠詞の用法で使われています。

〔Finanzminister Lindner〕➡役職+名前の場合は、冠詞がつきません。これは定型表現の1つと言って良いでしょう。

〔60 Milliarden Euro〕➡金額+通貨単位の場合は、冠詞がつきません。これも定型表現です。

〔auf kommende Jahre〕➡「今後数年間」ここは、「来年」「再来年」と具体的な年を示さず、漠然と「来る数年間」を表しているので、無冠詞です。

〔vom Kabinett〕➡前述の「新連立政権内閣」を意味しています。既知の情報なので定冠詞
 文法的には、von einem Kabinettでも間違いではありませんが、その場合は「ある何らかの内閣」となり、一般論になってしまいます。無冠詞では、「内閣という概念」という漠然とした話になり、これも不適切です。

Das neue Bundeskabinett hat den von Finanzminister Christian Lindner vorgelegten Nachtragshaushalt gebilligt, der massive staatliche Investitionen ermöglichen soll.

〔das neue Bundeskabinett〕➡前述の通り「新内閣」。既出かつ読み手もどの内閣のことを話しているのか分かるので、定冠詞です。

〔den von Finanzminister…Nachtragshaushalt〕
➡ここは、以前から話題になっている補正予算案であること、そして、関係詞節の説明に該当する補正予算案がこれしかないと書き手も読み手も理解しているので、定冠詞です。
 文法的には、「einen von Finanzminister…Nachtragshaushalt, der…」と、関係詞節の先行詞が不定冠詞を伴うことはOKです。
 が、その場合には、「リントナー財相が提示した、莫大な国による投資を可能にするとされる補正予算案の1つ」となります。予算案を2つも3つも提示することは考えにくいので、不定冠詞では不自然となります。

〔massive staatliche Investitionen〕
➡ここでは、漠然と、「国による様々な莫大な投資」と言っているので、無冠詞です。「投資」はドイツ語では可算名詞なので、漠然と何かを表す際には単数形ではなく複数形を使います。
 ここで「DIE massiven staatlichen Investitionen」と言うと、「それらの莫大な投資」という意味になります。文脈からどの投資か特定できるか、あるいはその後に関係詞節などで特定できるような説明がない限り、読み手は「『それら』って、どれ?」と困惑してしまいます。
 文全体の意味としても、「莫大な投資を可能とする」と漠然と言うのが自然で、「それらの莫大な投資を可能とする」とするのは、ある特定の莫大な投資について前に触れられていない限り、不自然に聞こえます。

Mit dem 60 Milliarden schweren Budget will die Ampel-Koalition den Energie- und Klimafonds aufstocken. Am Donnerstag soll der Gesetzentwurf erstmals im Bundestag beraten werden.

〔dem 60 Milliarden schweren Budget〕
(1)60 Milliarden➡Milliarden, Millionenなどの数の単位は無冠詞で使います。定型表現です。
(2)dem…Budget➡これは前述の「補正予算」を言い換えています。既出の情報なので定冠詞を用います。

〔die Ampel-Koalition〕➡「信号連立政権(社民党(党カラー:赤)+自民党(黄)+緑の党(緑)の連立)」。これも先ほどからの「新内閣」から容易にどの連立政権のことを言っているか分かるので、定冠詞です。

〔den Energie- und Klimafonds〕➡「エネルギー・気候基金」。これは、特定の基金を指していますが、気候・エネルギー問題では誰もが「どの基金を指しているか」が分かる有名なものなので、特に説明は不要。定冠詞です。
 ここで「EINEN Energie- und Klimafonds」としてしまうと、この600億ユーロ相当の補正予算は、ランダムに「とあるエネルギー・気候基金」の強化に使われてしまうことになるので、文脈的に不自然です。

〔am Donnerstag〕➡ドイツ語では「~曜日に」は定冠詞を用いて表現します。定型表現です。

〔der Gesetzentwurf〕➡これは直訳すると「法案」ですが、ここでは「予算案」のことを指していると考えられます。既出の情報で、読み手も「どの予算案か」が分かるので、定冠詞です。
 もしここが「ein Gesetzentwurf」になってしまうと、木曜日に連邦議会は「何らかの法案」について協議する、という、漠然としたスケジュールについて話す文になります。

〔der Bundestag〕➡「連邦議会」。ここは、特定しても、「どの連邦議会」を指しているか読み手もすぐに理解できるので(そもそも、連邦議会は1つしかないため)、定冠詞です。定型表現として覚えた方が楽なものです。

以上、長くなってしまいましたが、引き続き冠詞の使い方を見ていきたいと思います~。ここまでお読み下さりありがとうございました!






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