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外国語の学び方

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外国語に興味のある方、外国語の勉強法について悩んでいる方に対して、耳よりな情報を紹介しています。
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#語学

英語に「ネイティブらしさ」は必要?

どの言語を学習するときにも、 「ネイティブ(母語話者)の語感」は重宝されます。 何故でしょうか? 1つは、その言語の使用者の大多数がネイティブだからです。 そして、「何が自然な表現か」を判断するのもネイティブだからです。 どの言語であれ、文法上の条件を満たせば、ネイティブが考えているよりもずっと多くの表現が可能です。だから学習者は「正しいけれどおかしな表現」をたくさん作れるのです。 語学学習の難しさは、「ネイティブの語感」という、理屈では説明できない部分にあると思い

受験英語と「don't think」

こんにちは! 今回は「~と思う」を意味する「think」の否定形について書いていきたいと思います。 学校では、「私は彼は来ないと思う」という和文を英訳するとき、 I don't think he is coming (または he will come 等々). と訳すと習い、 I think he is not coming (または he will not come 等々). とは訳さないと習うと思います。 「『来ない』と『思う』」という日本語に引きずられて、

受験英語と「consider」

学校で学んだことと実際の英語は違うじゃないか! の好例が「consider」です。 皆さんは、学校で英語を学んだ時、 「consider」は第5文型の動詞と学んだのではないでしょうか? 第5文型では、目的語Oと補語Cがイコールの関係になっています。 主語Sと動詞Vと合わせて、「SVOC」と呼ばれますね。 つまり、「私はあなたを友達として見なす」という文の場合、 I consider you a friend. と言うふうに文を作ります。 「you」は動詞consid

受験英語マインドから脱するために

前回の記事では、受験英語が語学としての英語学習に与える「負の遺産」について書きました。 記事では「減点思考」や「正誤判定」という言葉を使いましたが、言い換えると「正しさへの拘り」と「間違うことへの恐れ」です。 受験英語は、語弊を恐れずに言えば、人生を賭けて人と争う点取り競争の種目の1つに過ぎません。 語学学習とは、そもそもそのアプローチからして異なります。 しかし、日本人の多くの方にとって、受験英語の学習が「語学学習」の原体験になっていることは確かです。語学学習と言え

語学学習は大変

「●●か月で〇〇語が流暢に!」という類の文句は、ものすごく胡散臭いです。 それから、色々言語を学び漁った経験から、「言語を●●言語も話せます!」という、多言語話者(ポリグロット)の謳い文句も、眉に唾を付けて聞くようになりました。 前者の「簡単に速く外国語が学べる!」について言いますと、 これは「どのレベル?」かを言っていないところが問題です。 そもそも語学学習は大変です。地道な努力が必要です。 簡単に楽しく学んでいるという人たちは、 楽しいことを通して言語を学んでいる

【ドイツ語】前置詞「auf」いろいろ

今回はドイツ語の前置詞「auf」の色々な意味を見ていきたいと思います。 はじめに「auf」は、語源の上では英語の「up」に相当します。 ドイツ語の方言に「uf」(ウーフ)という言い方が残っているように、昔は「au」の二重母音は「u」という長母音でした。 「uf」のほうが「up」に似ていますよね。 英語の「up」も「up the stairs」のように前置詞として使うときはありますが、どちらかというと副詞のイメージですね。 ここが英語とドイツ語の、似ているけれどズレている

【英語】「as such」≒「therefore」?

「as such」という表現を私の電子辞書にあるジーニアス英和大辞典で引くと (1)そういうものとして、それなりに (2)それ自体で(は)【主に否定文】 (3)厳密な意味での;というような御大層な代物【主に否定文】 という意味が並びます。 例えば、 というように、「such」は前に出てきた名詞を受ける形で使われます(この場合は「practical nurse」)。 これが学校英語で学ぶ範囲ですし、実際オックスフォード英英やケンブリッジ英英、コリンズ英英などを見ても、大

【ドイツ語】steigen ≠「登る」

こんにちは! 「steigen」というドイツ語の動詞を「登る」という意味で覚えている人、多いのではないでしょうか? 僕もその1人です。 ですが、これは「steigen」の持つ意味の一部しか表していないんです。 「steigen」の意味は、「高低差のある場所を移動する」です。 つまり、「低いところから高いところに移動する」と、「高いところから低いところに移動する」の両方を表す動詞なのです。 基本動詞の1つですが、日本語にはない概念を表す動詞なのです。 「山(Berg)

【英語】インフルエンザと「the flu」

こんにちは! 今、日本でも、私の住んでいるドイツでも、コロナやインフルエンザがとても流行っています。コロナ禍が一応の終りを迎え、人の往来が再び増えている中、病気の往来も増えてきています。皆様もどうぞご自愛ください。 最近英語の冠詞について、もう一度勉強しています。 冠詞に関して、以前、次の2つの本にとても感銘を受けました。 ただ、最近英語史関連の本、つまりは英語の専門家の本を読んでから改めてこの本を読んでみると、「ん?」と思う場所がいくつか見られます。 全体的には読みや

【英文法】sheepの複数形は?

皆さんに質問です。 「1頭の羊」は「a sheep」。 では「3頭の羊」は何というでしょう? 「1匹の魚」は「a fish」。 では「5匹の魚」は何というでしょう? 「sheep」や「fish」に複数形はないと習ったのは私だけでしょうか? 何でも、群れをつくる生き物には単数と複数の概念がない?とか何とか。 ※※※ さて、冒頭の質問の答えです。 「3頭の羊」は「three sheep」。 「5匹の魚」は「five fish」。 何だ、やっぱり複数形はないじゃないか

【英語】定冠詞のキホン(1)

英語の定冠詞には色々な使い方があります。 この記事ではその中でも特に重要な2つの使い方を紹介します。 ずばり、 「同じものの中で、ある特定のものを際立たせる」 「異なるものの中で、ある特定のものを際立たせる」 です。 ここから先は「the orange」という言葉を例にして、それぞれの使い方を順に見ていきたいと思います。 ①同じものの中での特定1つ目は、「同じものの中で、どれか特定のものを際立たせる」です。 上のように、たくさんのオレンジがある場面を想像します。 実際

やはりリスニングって大事なんだなって

最近、急にフランス語が聞こえるようになりました。 先週くらいからかな……先々週までは聞こえなかった気がする。 いつものように討論番組を聴いていたところ、 内容を理解できている自分に気づきました。 ブレイクスルーは、ある日突然やってきて、 あまりの唐突さに、呆気に取られて、感動する暇さえ与えません。 仕事に直結する英語、最優先の外国語であるドイツ語とは異なり、 フランス語は「趣味の外国語」として接してきたので、 「分からなくても良いから響きを楽しみたい」程度に、 何年もちん

【英語】可算・不可算名詞なんてない

引き続き「英語の歴史から考える 英文法の「なぜ」」(朝尾幸次郎著 2019年)の一部受け売りです。 この文を読んだとき、雷に打たれたような衝撃を受けました。 「可算名詞」「不可算名詞」という区別は名詞に内在せず、 同じ名詞でも、話し手の認識次第で数えられたり、数えられなかったりする、ということです。 日本語でも、話し手の認識次第で同じ名詞でも捉え方が変わることはあります。 例えば、 「あ、車がある」 と 「あ、車がいる」  いずれも正しい日本語の表現です。 これを

ドイツ語学習者が古英語を覗いてみると

仮定法をきっかけに英語史に興味を持ち始めました。 今回の記事は「英語史入門」(橋本功著、2005年)の受け売りです。 ドイツ語学習者として興味を持ったのは古英語(西暦700~1100年)です。 古英語は複雑な語形変化を持っており、ドイツ語との類似点が多いためです。 英語を今のイギリスにもたらしたアングロ・サクソン人の故郷が今のドイツのシュレスヴィヒとホルシュタインなので、似ているのもうなずけます。 本来なら比較するドイツ語の方も同時代のものとすべきですが、今回は現代ド