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劇団おぼんろ 『瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった』を見てきた

劇団おぼんろ 第19回本公演『瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった』を見てきました。


あらすじ
主人公(初老の男性、殿清)はある夜、自殺をしようと大量の眠り薬を飲んだ。その夜、家に一人の少年が入ってくる。
少年は、持ってきた瓶を叩き割ると、瓶の中からたちまち海が溢れ出し、部屋は大海原に。そして少年は、殿清にこう言う。
「お前を裁きの場に連れてゆかないといけない。」
殿清の罪は、「小3の夏、夏休みの課題を提出しなかったこと...。」
殿清がこの世界に連れてこられた理由とは?少年と殿清の関係は?そして殿清は元の世界に帰られるのか?
殿清と仲間達は、「夏休みの課題」を完成させるために、海が広がる不思議な世界で冒険に出る。

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感想、何がすごかったのか

このお話はファンタジーでした。そのため、舞台ではシーンが大きく移り変わります。基本的に舞台セットは上記の写真のまま変わらないのですが、ある時そこは1人の男性が暮らす家に、ある時はそこは大海原広がる世界に、またある時は銃撃戦が繰り広げられる戦場に。ただ、シーンは大きく変わるのに、舞台に全く違和感がありませんでした。つまり、舞台セットと僕たちの想像力が合わさって、この舞台はどんな場所にも変容してしまう。それが演者の演技力によるものなのか、巧みな照明技術のためか、はたまた演出のためなのか、鑑賞者である僕たちは何の苦労もせず、その想像と現実が組み合わせってできた舞台に、なんなく入り込めてしまう...。それがすごいと感じました。

面白いのはこれだけではなくて、僕たちが想像した舞台の中にちゃんと彼らが立って演技をしている。舞台鑑賞という枠を超えて、同じシーンを共有している仲間として、鑑賞者の僕たちも作品に入り込めてしまっているような、そんな感覚を味わいました。

想像することで舞台が完成し、想像することで僕たちは鑑賞者ではなくなる、そしてさらに、想像することで彼らと最高の景色を共有することができる。この演劇は、僕にとって新しい経験をさせてくれ、想像することの面白さ・素晴らしさを実感させてくれる作品でした。
(あまり触れませんでしたが、ストーリーもとても面白かったです。)

蛇足

この経験は、漫画『アクタージュ』5巻で、主人公の夜凪景が、演技だけで銀河鉄道を再現したシーンに近いかもしれない...。
(↑連載中止にはなったが、とても面白い漫画でした。)

あとは、恩田陸の『蜜蜂と遠雷』を読んだときに、小説から情景とともにピアノの音が響き渡った(と僕が思った)感覚に近いかもしれないです。

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