[ビジネス思考シリーズ①]なぜカフェに電源やフリーWiFiがあるのか?
カフェはコーヒーや軽食を販売する飲食店である。
また、コーヒーや軽食は1人当たりの消費量が限られるので、利益を上げるには客の回転率を上げることが求められるように思える。
しかし、スタバを筆頭として多くのカフェに電源やフリーWiFiが完備され、利用客は快適なワーク環境を満喫することができる。
実際に私もカフェの電源とWiFiを利用した経験があるが、コーヒーを飲み切っていても作業が終わるまで滞在していた。
このように、余分に滞在する利用客がいるとそれだけ腰を下ろす場所や作業場所を探している他の潜在顧客を逃してしまう恐れがり、それが回転率低下につながってしまう。
そのリスクがあるにもかかわらず、現実には多くのカフェが電源やフリーWiFiを完備しているのはなぜか?
この原因を5フォースのモデルから解明したいと思う。
5フォースとは業界の収益性を圧迫する5つの主体との関係を分析するメソッドである。
5つの主体とは①競合他社、②買い手、③売り手、④代替品、⑤新規参入者であり、それらがカフェ業界とどのような対抗関係にあるのかをこれから見ていく。
①競合他社
カフェの有名チェーンと言えばスタバ、ドトール、コメダ、タリーズと数多くのブランドが思い出され、大きな駅の近くにはたくさんのカフェがひしめき合っている現状なので、カフェ業界は競争が激しい業界と位置付けられる。
つまり、カフェ業界は利益を奪い合う構造になっている。
②買い手
利用客にとってカフェチェーン間の価格や質の差別化はあまりできておらず(スタバとドトールのコーヒーの違いを正確に指摘できる人はほとんどいない)、カフェはあちこちにある。
そのため利用客にとっては選択肢が多く、スタバが混んでいればタリーズに行けばいいといった具合に、買い手はカフェに対して交渉力が強い状況が生まれる。
③売り手
売り手には豆など原料の売り手と土地など不動産の売り手がおり、原料の売り手に関してはあまり詳しくはないのだが、カフェチェーンはこだわり抜いた高品質高単価なコーヒーを売りにしていないので、アフリカや南米などたくさんの豆農家から選べる立場にあると思う。
そのため、原料に関しては売り手の交渉力がそれほど強くないと予想される。
一方で立地に関してはカフェチェーンの選択肢が限られる。
そもそもカフェに行くためにサイトで予約するような人は少なく、人通りの少ない立地だと収益が見込めなくなってしまう。
その結果、いい立地を販売している不動産の売り手の交渉力が高まり、高い賃料じゃないと貸してくれないという圧迫を受ける。
④代替品
カフェでなくても、腰を落ち着けて飲み物が飲める場所といえばマックやファミレスがある。
それらの飲食サービスもチェーン展開されていてどこにでも出店しているので、品質に目立った差が見られない限り、カフェ店の代替サービスとしてカフェ業界は利用客を奪われる状況にある。
また近年、どのコンビニでも出来立てのコーヒーを安価で味わうことができるようになり、カフェが出すコーヒーに劣らないサービス提供を可能としている。
さらに、インスタントや家庭用の焙煎機などの発達・普及でお家でカフェを再現できるようになったので、カフェの存在意義が薄らいでいる。
⑤新規参入
最近くら寿司に行ったときコーヒーやカフェオレがメニューにあったのを見て、勢いのある飲食チェーンは簡単にカフェ並みのコーヒーを出すようになると推測でき、カフェ利用客が取り込まれる可能性が高い。
このように①~⑤を見てみると「腰を下ろしてコーヒーを飲む」というサービスはあらゆる業界において参入が激しい状況で、利用者側からすれば多くの選択肢がある。
その中で立地が厳しいため低価格競争をするわけにもいかず、またコーヒーの品質を上げて高品質高価格なサービスにするわけにもいかず、結局は「ゆっくりコーヒーを楽しめる空間」として差別化するしかない現状である。
(割とじり貧だが苦肉の策なのかもしれない)
それが電源やフリーWiFiの設置につながっていると考えられる。
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