見出し画像

サウナで泣いた話

「だめだなんか集中できない」

ある平日の夕方。
どうも作業に行き詰まっていた。

どうにか気持ちを切り替えようと
近場のサウナに足を運んだ。

「申し訳ございません。
男性浴場のサウナが故障中でして…」

おいおいおいおい!
サウナなかったら頭空っぽにできないじゃないか!

「バーデゾーンならご利用可能です」
どうやら男女共用の水着で入れるエリアのサウナは使えるらしい。
ゆっくりじわじわとサウナに篭りたかったが仕方がない。

1セット目
おじさん数人とカップル一組。
バーデゾーンのサウナは広くおそらく30人キャパ。
5、6人では少し寂しい空間だがこれはこれで集中できる。
12分時計が一周したところで1セット目終了し水風呂→外気浴。

そろそろかな…
身体から立ち上る湯気が収まるのを確認し
2セット目に向かうと

サウナ室の前に人だかりができていた。

ちょうどアウグブースの時間のようだ。
(アウグブースとは熱したサウナストーンにアロマ水などをかけて、立ち昇った蒸気をタオルなどであおぐパフォーマンスのこと)

再びサウナ室へ…

滑り込みで中に入ると
老老女女女男ぐらいの割合で先ほどとは異なり
ほどほどにサウナ室が埋まっている。
室内では道端で行われている世間話で盛り上がっている。


おばちゃんトーク炸裂。
さっきの方が静かに入れたな…とか思いつつ

アウグブースの担当が登場

箸休めサトシさん

「今日はブルーハーツの曲に合わせて行います」

そんな演出があるのか!
静かにタオルであおがれて終わりかと思っていたので驚いた。
(いよいよ静かに集中するという感じではないな)

一曲目、
ブルーハーツの歌声が自然とみんなを黙らせる。
じっくりと温度を上げていく。
まだだ。もっとを温度を上げてくれ…
こんなところで終わってくれるなよ…
心で唱える。

二曲目
さらに温度が上がる。
まだ足りない。もっと温度が欲しい…!

とジリジリしていると目の前で
箸休めさんがアクロバティックに
タオルを回し始めたのだ。

タオルをピザのように回し、
手放しで空中回転をさせたり、
タオルに意志があるかのように
身体の周りを高速で旋回させたり今まで体感したことないタオルパフォーマンスを披露する。

目の前で大道芸人のショーを見ているようだ。
正直全く予期していなくて「おおっ」と声が漏れた。
おばちゃんたちもも自然と歓声と共に拍手。
音楽に合わせて手拍子が巻き起こった。

三曲目
この曲だけは覚えている。
フィナーレは『TRAIN-TRAIN』

見えない自由が欲しくて〜
見えない銃を撃ちまくる〜

歌詞に合わせてアロマ水が
ジャンジャン石に注がれる。
温度は最高潮だ。

「TRAIN-TRAIN!走っていく!」

目を閉じてみる。

「TRAIN-TRAIN!どこまでも〜!」

熱風と手拍子と汗と音楽が共鳴している。
みんな歌詞を口ずさんでいる。
気づけば参加者を巻き込む一体感がそこには生まれていた。

「TRAIN-TRAIN!走っていく!」

高速で回転するタオルから
熱風がとめどなく降り注ぐ。

「TRAIN-TRAIN!どこまでも〜!」

ああ、なんだこの空間すげえ…
なんだか目から汗が…

「TRAIN-TRAIN!走っていく!」

泣いてもいいだぜ?
汗か涙かわかりゃしないさ。

「TRAIN-TRAIN!どこまでも〜!」

隣のおばさんたちが手拍子をする中

たくさんの汗と共に涙が頬を伝った。
だれも気づいていないだろう。
この予期せぬ空間に感動してしまったのだ。

「TRAIN-TRAIN!どこまでも〜」



アウグブース終了後
箸休めサトシさんに一言
「めっちゃよかったですありがとうございました。」と感謝を伝えた。

あれは単なるサウナ体験じゃない。
エキサイティングなショーそのものだった。

一本の映画を見たような余韻をまとい
仕事に戻ったのだった。



箸休めサトシさんのTwitter

画像引用/舞台:庭の湯


この記事が参加している募集

#私のストレス解消法

11,502件

じょうの活動に共感してくださった皆さんへ。 サポートやホームステイ先のご提案など受け付けております。 サポートして頂いたお金はホームステイ芸人の企画費用とさせて頂きます。 よろしくお願い致します。