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純喫茶保存協会 山之内遼さんへ

2023/07/22
目の前の仕事にもがいているこの頃
身体は元気だけど、心は疲れているとわかっていた。
30歳の僕は変わらず自分を見つめる時間を減らすとすぐ道がわからなくなるタイプである。

昨日、友人のバンドが10年目の節目をもって
無期限休止ライブをすると知った。
これだ!と思った。
もちろん10年という20代全てをバンド活動を続けたことを尊敬しているが
友人はどんな思いで表現するのか興味があった。自分のヒントにもなると思った。


東京から2時間
千葉駅まできた。

ライブは18:00から
2時間ほど早めに着いたから
ふらふらと周辺を散歩してみる。
普段と違う行動をすることで
何か転換機を探す僕の癖でもある。

パッと目に入った、
激辛ラーメン中本に食欲をそそられ
昼を済ませた。
結局千葉まで来て、チェーン店かよと内心呆れながら喉を潤すために簡単に入れるカフェを探した。

ささっとGoogle mapで調べると
徒歩10秒圏内に純喫茶「ヨーロピアン」を見つけた。
外観は緑のカーテンがかかった古めかしい二階建の一角だが、周りにある画一化されたデザインの中で魅力を放っている。

これまで多くの人が握ってきた
人に馴染んだ丸い黄土色のノブが地域に根ざしていることを物語っている。

中に入るとタバコとコーヒーの香りが混じったどこか懐かしい匂いがした。

店内は木彫なカウンターが7席とテーブルが3席
こじんまりとしているが
木造のニスの光がが柔らかい光に照らされて
外の世界と隔離されたような静かな場所だ。
BGMも控えめで人の話し声とスプーンの混ぜる音、コーヒを引く音や氷のカラカラ音が響き合う。

案内されたカウンターに座ると
目の前に茶色い年季の入った本が数冊並んでいた。
ふと「47都道府県の純喫茶」という本が目に入ったので何となく手に取ってみる。
どうやらこのお店も取材されたようで
赤い付箋が貼ってあった。

どんな人が書いたのか気になり、1番後ろのページを読む。

著者は山之内遼さん。
通算4000件の純喫茶に通い純喫茶保存協会を運営している変な会社員らしい。
コピーライターと肩書きがあり近いしい業界の方みたいだ。
1984年生まれだから僕と9つ違い、
出版は29歳。僕と同じだ。

へえ。渋いいい趣味してんなあ。
やることもないからコーヒーを待っている間に
Twitterで検索してみた。

あれ?
出版した2013年に更新も止まっている。
本を出してここからなのに、
この活動の継続は大変だったのだろうか。

Googleで検索してみる。
すると一般のブログがヒットした。

どうやらこの本を出した1週間後に交通事故でお亡くなりになったようだ。

偶然入った喫茶で偶然手にした本。
悲しい気持ちにはならなかった。
ただ素直に山之内さんをかっこいいと思った。

自分が大好きな喫茶の本を出して
お気に入りの喫茶店に本が置かれ
たまたま本を目にした喫茶好きの人が
次の喫茶店をメモしたり、
山之内さんの文字を楽む時間を
作り出しているなんて、
小さいかもしれないけど
死んでも影響を与え続けているんだから。

やりたいことを後回しにしていたら
死んでしまう。
人生は一回しかないのだから。

山之内さんに改めて教えてもらったみたいだ。

本でおすすめされていた
水出しのダッチコーヒーを飲みながら
店内でこの文章を書きった。


さあ10年好きなバンドを続けたかっこいい友人を見届けに行こう。

山之内さんありがとう。
またどこかの純喫茶でお会いしましょう。

店をあとにして
ライブハウスへ向った。

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