大人になれないの基本症状「孤独感」
大人になれない人のファミリーには、経済的には何の苦労もない家族が多い。
子どもに、愛情の代わりに小遣いを与える親たちだ。
親は、お金の稼ぎ方を教えることもない。
子どもたちも、食物や家、それに安全を当たり前だと思っていて、何かお金で買える新しい遊びはないかと、探しまわる。
制限なしの豊かさは、子どもたちにドミノ効果(将棋倒し効果)を引き起こす。
まず、勤労の価値が真っ先に崩壊する。
快楽は働いてはじめて手に入る価値ではなく、むしろ当然の権利とみなされる。
次に、あまりにも時間を持て余し、彼らは個人としてよりも、むしろ家庭があまりにも不安定なために、グループとしてのアイデンティティを求めるようになる。
必死になって、自分たちの居場所を探そうとする。
パニックすれすれの金持ちの子どもたちは、商業主義のいいカモだ。
「これが流行だ」「皆が使っている」、この一言で簡単についてくるのだから、笑いが止まらない。
一度「流行」病に取りつかれると、いくら高くても、皆と同じになるために買わなくては、というプレッシャーからいっせいに飛びつく。
しかも、そうやって同じになるためのモノを先を争ってそろえることで、まだ多少なりとも残っていた自信をきれいになくし、自由の精神を忘れてしまう。
たえず「仲間外れ」にならないように神経を張り詰めているうちに、仲間であるという連帯感の楽しささえも忘れていく。
その結果、残るのは孤独感である。
現代社会の、いちばん深刻な悩みはこの孤独感である。
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大人も子どもも同じように悩んでいるが、子どもたちに与える影響のほうがはるかに大きい。
不安で無責任なピーターパン人間たちは孤独感の発作に襲われると、たいへんもろい。
だから、彼らはなんとかして友達を見つけたいとあせるけれど、あせればあせるほど孤独感にさいなまれる。
ドラッグに溺れたり、手当たりしだいにセックスをしたり、気を紛らせてくれそうなものに次々と手を出す。
孤独感と豊かさは表裏一体である。
勤労の価値を実感できない子どもたちは、自分たちが何かをやり遂げることを誇りに思えない。
そうした子どもたちは、毎日がサバイバル・ゲーム(生き残りゲーム)という厳しい環境で育った子どもたちとくらべると、仲間の重圧に簡単に負けてしまう。
都市部の貧しい子どもたちも仲間が欲しいことに変わりはないけれど、彼らは同時に、自分たちが安全に生活していない分だけ、ピターパンシンドローム症状が進行しないともいえる。
一方、農村の子どもたちは労働の習慣を身につける機会も多く、同じように、ピーターパンシンドロームになりにくい(注・アメリカの農村部には、日本のような土地成金の子どもは少ない)。
豊かさがピーターパンシンドロームの引き金になることを考えると、ピーターパンシンドロームは金持ち階級の多い郊外病と呼ぶこともできる。
ごくまれな例外もあるが、ピターパンシンドロームは中流から上流の子どもに多く見られる。
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