30歳以後の絶望感は、何を惹き起こすか

”永遠の青年”を内側から突き崩す絶望感

ピーターパン人間の人生は、30歳をすぎた頃から大きく崩れはじめる。
かつての青春の夢はいまだに実現せず、喜びと興奮の日々は永遠に来ないようだ。しかし本人にしてみれば、これは理不尽なことにちがいない。
なにしろ、ピーターパンをそっくり真似したのだ。
それなのに、なぜ自分はみじめなのだろう。
けっして責任をとらず、いつもグループの意見どおりにし、不安を押し隠し、自分のセックスの不調を相手のせいにしてやってきた。
大人にならないよう、ありとあらゆる努力をしてきたつもりだ。
都合の悪いことには、いっさい目を向けず、それを否認することこそ、永遠の青年になる鍵だと思っていた。
それなのに、いまや絶望に襲われている。
落胆に打ちひしがれ、ついには死だけが自分を興奮させてくれる唯一のものだと考えるようになる。
ただし、はたから見ると、彼の内面のそうした絶望とは裏腹に、毎日のライフスタイルは一見結構なように見える。
このために、人付き合いが怖い彼の絶望感はかえってややこしいものになる。
■参考記事:人付き合いの怖い
可愛い妻と子がいて、立派な家に住み、安定した仕事があって、休暇もたっぷり取れる。
友だちも立派な人間ばかりで、見かけだけは、大人の暮らしの条件が彼を取り巻いている。
それなのに、本人はちっとも居心地がよくない。
そうするのが社会の常識だから、そうしているだけだ。
彼は、みんなに認められるために、社会公認のシナリオを演じているのであって、その役割に心の底から没頭しているわけではない。
まわりの人達がそうした大人の暮らしに結構満足しているのが、彼には不思議でならない。
彼だって、ごく表面的にはそのフリをしている。
しかし大人の生活を楽しんでいる人達の実態に触れて、彼の信念がゆらぐ時もある。
彼はひそかに身もだえし、心の中で指しゃぶりをはじめ、「これだけってことはないだろう。約束どおりのお遊びは、いつになったらはじまってくれるんだ」と泣き言を言うことになる。だがしかし、いくら自分を憐れんでみても、無慈悲な現実が幻想的な夢を打ち壊してしまうために、ひび割れたナルシシズムの鏡を修理することはむずかしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?