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平民金子「 ごろごろ、神戸。 」【 本の紹介 】

2020年の初読み( 1月7日読了 )を紹介いたします。

平民金子さんは、2015年に神戸に引っ越してきました。そして、娘さんをベビーカーに乗せて、時には缶チューハイ片手に、ごろごろと神戸の街を歩いては、どこからでも取り出せる「 おもちゃ箱 」に、ささやかであたたかな物語たちを、放り込んでいったのです。

しかし、ボクはこのエッセイを、自分自身と娘を主人公にして、舞台をいつも暮らしている場所( 神戸 )に設定して、あり得たかもしれないもう一つの現実と思いながら、小説のように読み進めました。


そんな読み方を可能にしたのは、著者とは6歳違いでほぼ同世代だということ、ボクが足立に生まれ浦安で育った幼少期と、大学の四年間の小平暮らしが著者の描く東京の姿と重なるということ。そして、著者の引っ越し先の神戸での行動範囲が、ボクが通算30年以上住んでいる神戸で、娘をベビーカーと自転車で連れ歩いた4年間と重なっていたからです。( きっと行く先々で平民さん父娘とすれ違っていたに違いありません。日記を取り出して日にちを確認することまではしませんが )

さらに、決定打は娘同士が同い年であり、男親が子供を連れ歩くことで初めて出会った世界に対する見え方、感じ方がよく似ていたからでもあります。共感のあまり、ウンウンと頷きながら涙がにじんだこと数回。

あと、地味に嬉しかったのは好きな場所が度々登場したこともありますが、好きな作家の名前が、ひょっこりと登場したときです。中島らもや筒井康隆( 平民さんは垂水の筒井宅邸へは行ったのだろうか? )の名前が出てきてようやく、平民さんの文がなぜよく身体に馴染んでくるのかが分かりました。

今度読み返すときは、おもちゃ箱から気まぐれに、おもむろに、気に入ったおもちゃを取り出すようにしてから楽しもうと思います。

追記1、上のレビューが2月2日のインターネットラジオ「 ゆめのたね関西チャンネル ぐーりんの本スキークラブ 」で紹介されました。

追記2、2月10日に著者の平民金子さんが、元祖平壌冷麺屋にご来店下さっていた(らしい)。ご本人のTwitter投稿を見て気づくという不覚。ごあいさつしたかったです( たぶん嫌がられたでしょうけど笑 )。ご来店ありがとうございました。


追記3、「 はるか136号 」に掲載されました。4歳の娘が、どれどれ?読みたーい、と顔を近づけたので、近い近い近〜い!(笑)と、ツッコミを入れたのでした。

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