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元祖平壌冷麺屋note(9)

完売御礼の日は、感謝の気持ちと同じくらいの疲労困憊が身体を満たしていて、帰宅して遅めの夕食を取り、食後のコーヒーを飲んだ後は、布団に吸い込まれるようにして眠りの国へ迷い込む。

冷麺屋のドアが開いた。手押し車のおばあちゃんが「焼肉丼と、焼肉丼のお肉をカルビではなくてホルモンミックスにしたやつを一つ、お持ち帰りで」とオーダーした。

店内はすでに満席の、てんやわんやだった。厨房に注文を伝えると、数分後に、完成した焼肉丼と、それから白ごはんの上に生のママのホルモンミックスを袋詰めにしたものを添えた「ホルモン丼(になる前のもの)」が渡された。

これは、ひどい。厨房にクレームを入れる。いくら忙しくても、いくらメニューにないものだとしても、流石に良くないよ。

と、伝えるうちに、おばあちゃんは手押し車で憮然として、帰路を急いでいた。呼び止めて、お金を返そうと、追いかけようとしたらカウンター席で、しばらく会っていなかった友人が二人焼肉をしながら、自分を呼び止めた。

懐かしい気持ちで話を交わしたい気持ちを抑えながら、おばあちゃんを追いかけた。思いの外、速い。追いつかない。走っても距離が縮まらない。

そこで、目が覚めた。はあ。寝てても仕事していたら疲れが取れないよ。


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