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インパクト投資ファンド立ち上げインキュベーターを創る|インパクト投資奮闘記@コンサルvol4

最高気温23度くらいがずっと続いていた8月なのに、今週は熱波で31度にあがっているロンドンからお届けします。体感的には27度超えるとしんどく、東京出身の私も数年でずいぶん体が暑さに弱くなったなと感じます。
今の会社はオフィスにも冷房がないので、一番暑かった日は半休を取って娘と水遊び場に行きました。(天気次第で休暇を取るのって英国らしい…といまさらながら感じます。)

2か月ほど更新が空いてしまいましたが、近況を。

インキュベータープログラムを創り、率いる


今勤務しているホールセーラーで、「このプログラムの担当お願いできる?プログラムのデザインとかとりあえず好きにやってみて」と頼まれた仕事。
財団から助成金を頂いてプログラムの実行が決まったものの、資金も期間も限られているなかで、人様が参加するプログラムをゼロから作るのはただの銀行員だった私には荷が重すぎる仕事だと感じた…。

どんなプログラムか

これから初めてインパクト投資のファンドを立ち上げようとしている人たちに向けたインキュベーター。対象はこれまでインパクト投資になじみの薄いコミュニティにフォーカスしていること(ざっくり、人種マイノリティ….英国ならではのコンテクストなので詳細割愛)。
日本の(マニアックな)イメージでいうと、休眠預金の資金分配団体で、初めて投資ファンドをクローズしようとしているチームが対象。

「初めてファンドを立ち上げる」難しさ(First-time Fund Manager)

投資家(LP)からファンドへの投資は過去の実績をベースに決定されることが多いため、初めてファンドをクローズすることは簡単ではない。
例えばその辺の誰かが「ファンド立ち上げるので投資家お願いします」といっても、「で、誰?」「過去の投資実績は?」となる。投資実績を積み上げることは重要なことだけど、誰しもが投資の元手資金やお金持ちネットワークを持っているわけではない。どうやって投資実績の壁を超えるか、について様々な議論があったり研究も存在するとこの仕事を通じて知った。
特に今回はインパクト投資にはなじみの薄いコミュニティ当事者の人たちがファンドを立ち上げることを想定しているので、いろいろむずかしさがあった。

対象者

参加者のイメージはこれまで社会起業家のアクセレレーターをやっていた組織(例えばETIC.さんのような…)やマイノリティコミュニティの支援をやっている組織(難民の自立支援など)。
18ヶ月の伴走プログラムで、参加は3組のみ。学びの最大化のため(議論の余地があるのは認めるが)終わる頃にはせめて1組は1st fundのクローズが決まっていてほしい…というのが理想。
となると、今から始めてやってみます!と言う人を対象にしていてはなかなか難しく、既にファンド組成に向けて動き出している人を今回は対象にしている。

難しさ

◆新しい分野で選抜基準を決める、方向性をすり合わせる
応募要件や選抜基準を決めることに多くの時間を使った。
というのも、「初めてのファンドをクローズするためのインキュベータープログラム」は結構ニッチ。さらに人種マイノリティ、インパクト投資、となると、何を以て「いいチーム」と言えるのか。
ファンドクローズに近い人を選ぶほど、ファンド組成直前での悩みをより知ることができる一方、比較的恵まれた環境(privileged)の人たちのみを支援することになる(ことはこの業界ではタブーと思われがち)可能性が高まる。クローズに近いところまで自力でやってこられた人は、色んな力や経験があったり、既に色んな支援が周りからあるでしょ、と言う具合に。
プログラムの対象者くらい決まっていて当然でしょ、と入る前は思っていたが、真っ新だった。詳細は割愛するがシニア船頭が多いユニークなチームなので、この方向性をすり合わせるのは大変だった。

◆未経験のものをゼロからほぼ一人で作る
私の過去の経験と真逆に感じることが多く、「一人で」やることが最初は不安だった。もちろん担当シニアはいて方向修正はしてもらえるものの、週に30分時間をとれるかどうか。基本的には自立・自走が求められていた。
私は新卒から「大きめ組織の若手」ポジションが長く、自分の仕事をマイクロマネージされたり、周りの同僚が自分が何をやっているか知っている状況に慣れていたので、誰もほぼマネージしてくれないという状況自体に漠然とした不安を覚えていた。そもそもプログラムの内容も門外漢だし。

何をしたか

類似プログラム運営者にヒアリングさせてもらったり、1号ファンドクローズ経験者にインタビューしたり。
このようなヒアリングを多くさせてもらえるのは、(少なくても前職の文化にはなく)、インパクト投資業界の強みでもある気がする。Linkedinで突撃メッセージして話を聞かせてもらうことも。

First-Time Fund Managerだからこその難しさについて、そしてどのように意思決定の偏見をなくしていくか、デスクリサーチも時間をかけて行った。

仮の応募条件や選抜条件をドラフトしたうえで、そもそもどんな人がプログラムへの興味を持っているかもわからないので、サウンディングをしてみて、方向性の最終調整をした。
「誰が応募してくるかわからないならSNSやメールで聞いてみようよ」とアイディアを出して2週間後には実際に形になっているのは、ベンチャー気質の今の職場ならでは。わからないことが多い業界・新しい取り組み(マイノリティにとってのインパクト投資)では、このような機動性が重要な役割を持っていると感じる。

プログラムローンチ!

サウンディングの結果を受けて微調整も終え、外部の選抜委員の協力も得て、やっと公募開始!
こんな感じでやってます。

振り返ってみて

弊社はホールセーラーとしてどんなIntermediaries(中間支援団体/資金分配団体?)を作っていきたいか、既存のソーシャルインパクト投資の業界の中で、今経営に苦しんでいるビジネスモデルは?などのディスカッションに割く時間が多く、英国のインパクト投資業界についての知識を深めたい私には有難い環境だ。

リリース直前の ちょっと待ったぁ! はしばしばだし、わたしたちの具体的なターゲットは誰なのか、議論しながら調整していく環境。

最初は慣れない環境に戸惑ったし、一人でやらなくては、と背負うものが大きかったけれど、2か月たってやっとプログラムがリリースされ、人々が応募してきているのを見て、やっと日本語で文章に落とす気持ちになれた、という感じかもしれない。

自分がほぼ1人で作ったプログラムに多くの人が興味を持って応募してれるのは、不思議な感覚。嬉しさより、大丈夫かな…?という気持ちが強い。

ロンドンで銀行のとある部署で1人の営業部員として働いていたのがたった1年前なんて、何だか不思議な世界だ。どちらの仕事が向いているのか、まだはっきり言いきれないほどこの仕事の最初のショックが大きかったけれど笑、自分にもできる、と思えたこと、ここで繋がったり得た知見やつながりが財産だと感じる。

転職活動


ちょっぴり別の話題。長い間noteを更新していなかったのは、前述のプログラム創りで頭の中がいっぱいだったことに加え、転職活動を優先させたかったため。
無事に先日転職活動を終えたので、また落ち着いたら記事にしたいと思う。1社応募するためにも作文を複数しなくてはならず、本当に疲れた。笑 基本的に英国では面接に呼ばれることが難しいので、この作文が一番本気入れるところ。やはりプログラムで1年間インパクト投資の経験があることは確実に自分の助けになった。

10月半ばから少し日本に帰る予定…1年ぶり!
残りのプログラム、走りきるぞ~と張り切っています。

では。


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