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新設インパクト投資ファンドにきて5か月|インパクト投資奮闘記

お久しぶりです。イギリスでインパクト投資の仕事をしているすずかです。
数か月間混沌としたとにかく忙しい日々を送ってきましたが、少しずつ落ち着いてきたので久しぶりにnoteを書いてみたいと思います。

投資実行!


2月にやっと、勤務先のファンドが2件目の投資を実行しました!!!
私がリードした案件ではないけれど、プレス周りとか色んな支援をして、やっぱり形になっていくのは喜ばしい。
大手チャリティーからの投資とあって、10以上の新聞メディアやラジオに取り上げられ、反響が喜ばしいやら恐縮するやら。
日本でいうとイメージは、赤十字やあしなが育英会がインパクト投資の2件目を実行しました!みたいな感じです(すごいざつですが。。)
すぐ横でソーシングから投資決定までを経験することができて貴重な経験になりました。

ポートフォリオレベルでのインパクト評価指標を考える


私の働くインパクトファンドはパイロット段階で、考えながら走りながら色んなことを決めていくスタイル。

投資先は全て、英国のがん患者の生活に資するスタートアップである(=何かしら統一的な評価が可能なはずな)のに、ポートフォリオ全体でのレポーティング手法は非常に簡易なものしかなかった。
各社とインパクト評価マトリックスは合意しているものの、会社Aと会社Bを比較したり、投資先企業(ポートフォリオ)全体のバランスを見るのは非常に簡易で主観的なものにとどまっていて。
やっとポートフォリオ企業が2社になり、来年以降のファンド活動の方針を決めるタイミングがもうすぐあるので、改めてポートフォリオレベルで何をするか考えようという話に。

周りの規模やステージの誓いインパクトファンドにヒアリングして、どうやら多くのファンドがIMP5/Five Dimensions of Impactを使っているようだったのでそれに沿ってやってみようということになった。お互い以下の教材を事前に読んできて、1時間の打ち合わせでドラフトを作り、以降新しく会うベンチャーで試しながらファインチューンしている。
参考にしたのはImpact Frontierさんの資料。
Module 4: Impact at the Portfolio Level | Impact Frontiers (10min)
Module 5: Impact at the Investment Level | Impact Frontiers (25min)

ちなみにImpact Frontierさんは、インパクト評価の基準を広める団体として世界的に権威ある団体で、いろんなケーススタディも載っている。
おまけだが私が愛読している「インパクト投資入門」の著者である須藤奈応さんがDirectorも務められているのが、同じ日本人として勝手に誇らしく思って元気をいただける。

ダイバーシティの話

私の勤務先は英国の伝統的チャリティーとあって、ぱっと見では部署全体の90%が白人女性。
私は英語が主言語ではない、唯一のアジア人として、ダイバーシティの観点から採用で少しは得したかもしれないと感じることもある。

働いていると、私は英国の医療の仕組みについて全然知らないし、ヘルスケアの英単語も勉強しながらだから不得意だし、なんか本当にこんな私でごめんなさいと思う瞬間が度々あって。

でも最近、確かに私は私で貢献できることがあるんだなと感じたことがあった。

インパクト投資チームはドイツ人男性のベッドと私の2人。
今の仕事はヘルスケアVCと共同投資することなので、VCの人とネットワークを築き、共同投資の機会を紹介し合うことが重要な仕事の一つ。
同じネットワーキング会場にヘッドと一緒に行くこともあるが、ほぼ必ず違う人と繋がったり親しくなってくる。ざっくり、白人男性の上司は白人男性とよく喋っているし、私は自分と年齢の近そうな人、ヨーロッパ出身でない人と仲良くなりやすい。
もちろんお互い色んな人と話しかけるように努力しているが、共通点が多いと話が弾みやすい気がする。ロンドンの転職活動大変じゃない?とか、この国のヘルスケアの仕組み謎だよね、この間あれのこと勘違いしてた!とか。笑
当たり前と言えば当たり前なんだけれど、あぁこれが、チームにダイバーシティあるといい理由のひとつか、と妙に納得してしまった。

3歳の娘を見ていても、以前は男女分け隔てなく保育園の友達と親しくしていたけど、最近は同じプリンセスが好きな女子と連んでいることが多く、やっぱり趣味とか共通点があると人って親しくなりやすいものだなと感じている。

私は社内の他部署との関係においても、比較的外交的な私は、ランチタイムに同僚とオフィスでおしゃべりして同僚の本音とかメールには書かないことを聞き出すのが好きだ。そこからみんなの意図が見えてきて協力できる分野を探したりするのも好き。多くの同僚がアラサー女性なのも助かっている。
ヘッドは一人で集中することが得意なタイプ、効率重視でアジェンダに沿って話していく。オフィスにもあまり来ないので、こんなへっぽこな私でも意外とチームの役に立っているなと感じられることもある

「財務分析やりたいの!?笑」-新しいチームでの人間関係

メンバーが一人減って(今度別途書こうと思う)チームはヘッドと私の二人になった。ヘッドと私は上述のとおり性格も働き方も全然違う
あまりに淡々と物事を進めるヘッドを、私は一時ロボットみたいだな、感情があんまりないのかな、全然つかめなくてなんか怖いなと思っていた(ごめんなさい笑)。

ある時ヘッドがリードしていたデューデリジェンスで、私に相談なく「この財務分析は複雑だから提携しているコンサルに支援してもらう」ことが決まっていた。中身を見てみると、元銀行員の私が得意な内容…ということがあり。外部に委託するより私がやりましょうか?と申し出たら、「(今こんなに忙しいのに)え、これやりたいの!?笑」と言い返されて驚いた。

私は財務分析が比較的得意というか、財務情報を見ているのがとっても好きだ。やりたいの?の質問の答えはもちろんYESなのだけど、金融バックグラウンドがないヘッドはそんな答え想定していなかったようだ。
(この案件は他にも事情があって外部に支援してもらうことになった。)

この一件から、私は自分の過去の仕事について入社面接以外でヘッドに聞かれたことも話したこともなかったと気づいたし、彼のことも知らないと気づいた。入社当時何度か質問したことはあったけど、いつも目先に迫っている仕事が優先になってしまい、「また今度」と数回言われてなんとなく申し訳なくなり、以後4か月以上が経過していた。

勇気を出して「今度雑談がてら昔の仕事の経験を聞きたい」と改めて申し出たら、喜んでその機会を設けてくれた。その時から、少しだけ私の中で彼の人柄や経験の解像度が上がった気がして、働きやすくなった。自分が必要だと思っていることは複数回あきらめずに頼んでみることも重要だと改めて学んだ。

昔話だけど、銀行員のときはオフィスでの対面の仕事や食事の機会が多かったし、頼まなくても昔の話をしてくれる先輩がいっぱいいた。(みんな武勇伝ありすぎ…笑)そこから人となりを理解して、チームとしての関係を築いてきたように思う。完全リモートワークの17時退社がマストの世界にずっと生きてきた今のヘッドのような人とは、チームを理解する方法や、知りたいこと・どのくらいそれを重要に思っているかも違うんだなあと考えさせられた。

大規模なRedundancy (リストラ)


会社の経営上の都合で、組織改革があった。インパクト投資とは関係ないけど英国らしい(西欧らしい?)経験だと思ったので書き残しておきたい。
私が入社して1ヶ月でhiring freeze(新規雇用の停止)が始まり、3ヶ月でredundancyの第一弾が大規模に行われるとのアナウンス。
いわゆるリストラで、会社都合で仕事の数が減ることになり、その仕事についていた人が組織を去ることに。
私の部署はイノベーションと系の新しいことをやるチームが3つ所属する部署で、その中で一番大きなチームがなくなった。結果、20人くらいいた部署で残ったのは10人。
インパクト投資をしている私たちのチーム(2人笑)は生き残ったものの、私がオフィスで一緒にランチを食べていた人たちはほぼ全員いなくなった。
チームヘッドのようなシニアクラスから比較的若手まで。多くの人が職務内容を少しずつ変えながらこの会社に5ー10年は勤めていて、たまたま今この仕事に就いていた…という感じだったので、ショックが大きかったようだ。
このプロセスが辛かったし、日本で日本の会社に勤めていては滅多にない経験だったように思う。
奇妙だったのは、誰がRedundancyの影響を受けたかという発表はなく、会社との交渉期間の1ヶ月間は(今打ち合わせしてる目の前の人がもしかしたら影響を受けていて、今会社に残る術を交渉していてダメだったら数週間後にいなくなるかもしれない…もしかしたら影響受けてないかもしれないけど)という状況が続いたこと。送別カードが回ってきて対象者だったことを知る感じだった。最後に盛大に送り出すとかいう感じではなかったのが寂しかった。


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長くなってきてしまったので、今回はこのあたりで。
とりとめもない英国での奮闘記をここまで読んでいただきありがとうございました。☺️

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