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旅行業に未来はあるか

私は旅行代理店で働いている。2020年は散々な年だった。まだ2020年は終わっていないが断言できる。本当に散々な年だった。
新型コロナウイルスが世界中で大流行。国際線は止まり、インバウンドの観光客が減ったことで経済で大打撃を受けた。
すぐに仕事は無くなった。給料も減った。ボーナスもない。だが出勤が減って精神的に安定したのもまた事実。以前は風邪をよく引いていたが全く引かなくなったし、残業もほぼしなくなった。心にゆとりが生まれた。
しかしその心のゆとりは数ヶ月だけ。最近はお金が無くなっていく焦燥と低下していく仕事のモチベーション。仕事のやる気が出ないのだ。

なぜこの仕事をしているのか考える時間も増えた。

そんな中、発表から開始まで短期間で準備もままならないまま始まったGoToトラベル事業。連日の報道により、ネットでは旅行代理店が叩かれることもあった。
現場は準備が追いついていなかったし、普段の繁忙期の夏とは違い、苦い夏だった。

今でさえ世界中で新型コロナウイルスの感染拡大は止まらないが、withコロナの時代へ突入し、感染拡大防止に努めながら国内ではGoToトラベル、GoToイートを推し進めている。観光業、航空業、飲食業、必死に頑張っている。
しかし心ない言葉に傷つくこともしばしばある。
ネットニュースのコメントなんて、誰かのしがない言葉だと普段なら聞き流せるのに、今の状況では心に深く突き刺さった。

少し泣いた。

私のやっている仕事は何のためにあるのかわからなくなっていく。


そもそも旅行は完全なる「娯楽」であり、旅行が好きな比率が大きいからなんとなく受け入れられている趣味の一つにしかすぎない、と思う。
自分の住んでいる土地から離れ、さまざまな刺激を受ける。知らないものに触れる。発見する。人と出会う。非現実感を味わえる。現実逃避ができる。
そういった感覚が幼い頃や修学旅行などで半ば強制的に「植え付けられる」から好きになるのかもしれないと思った。考えすぎかも。

そんな中、台頭してきたVR旅行。近い未来ではVR旅行が主流になるかもしれない。VRで「そこにいる」ことが実感できれば人は満足できるのだろうか。果たしてそれで満たされるのか。リラックスできるようになるのか。


VR旅行の良さもたくさんある。誰でもどんな時でも旅行体験ができる。手軽に楽しめる。お金と時間の掛け方が全く違うし、以前よりも旅行する人は増えるかもしれないし、ライフワークの1つに組み込まれているかもしれない。

私は旅行の醍醐味は五感を駆使することだとも考えているが、VRでも可能になっていくのだとしたら、現地に行くなんて馬鹿馬鹿しいと思う時代が来るかもしれない。

OTA(じゃらんや楽天トラベルなど)での予約が主流になっている今、VRの勢いがさらに増していくと旅行代理店はどんどん無くなっていくに違いない。

でも実際にその場に行く旅行がなくなることは決してないと思う。決してなくならないとは思うが、体系や考え方は大きく変わっていくだろう。そこに旅行代理店は何の価値を見出せるのか。このままではいけない。

出張もわざわざ行かなくともオンライン会議で済ませられるものも多いと知ったからには、コロナ前のようにはきっと戻らない。

飛行機やホテルが無くなることはないが、数は減っていくかもしれない。

私はこのままでいいのだろうか。変化の早い時代についていけるのだろうか。何をしたらいいのか。そもそもこの仕事を続けられるのだろうか。続けたいのだろうか。辞めたい気持ちもずっとある。でもなんとか踏ん張ってみたい気持ちもある。この仕事は好きだ。

希望を持ちたい。
でももう少し時間がかかりそうだ。

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