懐かしの土地

先日、応募した企業様から面接への案内が届いた。
面接については、呼ばれればどこにでも行くと決めている。
そうでないと、直前になって否定的な感情が生まれ、行くことすら嫌になるからだ。とにかく行く。話はそれからだ。

先方へは、公共交通機関を使って赴いた。
駅からはタクシーに乗り、面接場所まで行く。
この街は、私が大学を出て、初めて働き始めた場所だ。
たまたま、最初の会社で受け持っていた地区の近辺に企業様があった。
車窓から外を眺める。だいぶ様変わりしているものの、うっすら記憶にある建物もある。
当時は、まだ学生気分が抜け切らず、社会へ出ることになったものの、これから自分がどうすればいいか、さっぱりわからなかった。ただ、朝起きて、何かを食べ、働く。同期入社の同僚との関係性が良かったことを覚えている。お互い、独り身だから、終業後食事に行くこともあった。その時の誘い文句も耳に残っている。
「徘ちゃん、吉牛いかん?」「ええなぁ、行こか」
しかし、生活は荒れていた。新卒で入ったものの、当初聞いていた就労環境と全く違う働き方で、先の見通しもない。同期の同僚は次々と辞めていく。そのころは決して労働市場が良好でなかったのに、辞めていくのだから、その環境は推して知るべしというところだ。帰宅が遅いため、生活がどんどん荒れていく。学生時代は、身辺を小奇麗にしていたのに、帰って寝るだけの生活だ。これでいいのか、という悩みもあり、休日は読書に逃避していた。

結局、その後、数ヶ月の労働でその会社を自己都合退職することになるのだが、離れてみれば懐かしさを感じる。あの頃は、真面目に働きさえすれば、何とかなると楽観できた。今となれば、あの心持ちが貴重なものだったと思えてならない。現在では、環境は選ばなければならないが、全ては運だと思う。結婚と同じで、会社も働いてみなければわからない。働き続けることがこんなに難しいことだとは思いもしなかった。


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