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学生スポーツ記者とは?もっと広まってほしい「記者育成の場」

マヂカルラブリー村上、ミルクボーイ、ハナコ岡部、ラランド、令和ロマン…。

スポーツを観るのも好きだがお笑いを観るのも好きで、大学時代は新宿歌舞伎町にある劇場「新宿パティオス」に通っていた時期もあった。お笑いファンの人はすぐに分かると思うが、最初に挙げた5組にはある共通点がある。そう、「学生お笑い出身芸人」という共通点だ。

お笑いサークルや落語研究会は東京や大阪の大学を中心に数多く存在しており、彼らは学生主体で大会を開催ししのぎを削っている。私が在籍していた早稲田大学にも「お笑い工房LUDO」というサークルがあり、ハナコ岡部のほか、ひょっこりはん、にゃんこスターアンゴラ村長、Gパンパンダらを輩出している。

芸人といえば下積み生活からスタート、という印象が強いが、大学で経験を積み“即戦力”としてプロの道へ、という芸人も今では少なくない。近年は「M-1グランプリ」「キングオブコント」などの賞レースでも学生お笑い出身芸人の躍進が際立っている。

知られざる「学生スポーツ記者」の世界

記者(今回は“スポーツ”記者の話に限る)の世界にも、似たようなものがある。「大学スポーツ新聞」の存在だ。学生記者が学生スポーツを取材し、ウェブで発信したり、新聞を制作したりするサークル。おそらく想像される以上に、本格的に活動している。

私は「早稲田スポーツ新聞会」(通称早スポ)に所属していたが、「慶応スポーツ新聞会」(ケイスポ)、「明大スポーツ新聞部」(明スポ)、「東洋スポーツ新聞編集部」(スポトウ)など関東圏には同様のサークルが多数あり、関西圏にも「同志社スポーツアトム編集局」(同志社アトム)、「関大スポーツ編集局」(カンスポ)などやはり主要大学には大学スポーツ新聞がある。

中でも早スポは規模が大きく、私が入部した当時は3学年(3年で引退のため)で約150人が在籍していた(現在の人数は不明)。肌感覚だが、150人のうち100人くらいはとにかくスポーツが好きな人、25人くらいはマスコミ志望の人、25人くらいはなんとなく入った人、というイメージ。ちなみに私は浪人時代にネットで記事を見たのがきっかけで、サークル目当てで早稲田を受験した「マスコミ志望の人」だった。

44部活(当時)すべてを取材するため、一人7〜8部活程担当する。各部活に「チーフ」と呼ばれる責任者(2、3年生)がおり、全体を統括する編集長がトップに立つ。基本的にすべての大会、リーグ戦に帯同し、時には練習取材やインタビュー取材、対談取材なども行う。記事はホームページで随時公開するほか、月一で紙媒体の新聞も発行。新聞は大手スポーツ新聞社の一角を借りて制作し、レイアウトも自分たちで手がけていた。

その他、広告を取るための営業や新聞の校閲、新聞配布やホームページ管理、会計なども部員の仕事。取材活動の傍ら、各部員がそれぞれの役割を担っていた。取材にかかる交通費や経費はすべて自費。当時使っていた手帳を確認したところ、私は計22回遠征取材をしたらしく、夜行バスで10時間以上かけて向かい、取材後はネカフェで静かに過ごしていた日々が懐かしい。今思えばあまりにもブラックだが、サークル活動であり労働ではないので当たり前といえば当たり前だ。

経験の大切さと地方大学の現状

具体的な思い出話はまたの機会に書こうと思うが、伝えたいのは、「マスコミ志望者にとっては入って損はないサークルです」ということだ。東京六大学野球や各競技の全日本選手権などでは大手マスコミに混じって取材することができるし、オリンピックに出場したり、プロ選手になったりするようなトップアスリートとも普通に接することができる。

実際私は大学卒業後新聞記者になってからも浮き足立つことはなかったし、大学時代の反省を活かした質問・アプローチの仕方を心掛けながら取材していたつもりだ。また先述したように記者以外の仕事も経験できたことから、他部署の社員に感謝しながら働くこともできた。フリー転向を早い段階で決断できたのも、自分の力だけで記事を生み出す経験があったからこそだと思う。

西日本遠征の際には必ず行っていた定食屋「宮本むなし」

一方、地方の大学にはこのような文化が波及していないのも事実。同様のサークルが存在する大学もあることにはあるが、機能していると言えるところは少ない。また部内のマネージャーらがホームページ等で発信するのも素晴らしい取り組みだが、やはり「メディア」とは少し異なる。たしかに、トップアスリートが集まりやすいのは関東、関西かもしれない。それでも、地方にも取材すべきことはたくさんあると知っただけに、もっと全国に広まればいいなと最近になって感じるようになった。

記者に資格は必要ないし、手段も方法もない。学生時代に別のことに打ち込んでいても優秀な記者、ライターになる人は星の数ほどいる。ただ、経験がものを言う職業でもあるため、こういう選択肢もあるということを少しでも知ってもらえたら嬉しい。

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