ヒゲサワ・ジョリー

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「純潔は来世まで」第3話

「第3話 漂流と滞留」 本文 あの世に行ってしばらくたったある日の休憩時間。ふとテルシさんのことが気になった。 あたしは前職と違って、クレームや汚い人間関係もない。だけど、テルシさんは役所務めだ。 いざこざやクレーム対応で心が疲弊しているに違いない。 交換してもらった連絡先にお疲れ様です。元気ですか。と入れると数時間後返信があった。 「辛いです。」 これは一大事だ。電話で話を聞こうと思いあたしは彼と通話する約束をした。 週末の夜、晩御飯を食べ終えたあたしはテル

    • 「純潔は来世まで」第2話

      「第2話 優しい思い出」 本文 「てゆうかそもそもあたしが誰かとキスしたり、性行為できんのか。」 朝いちばんに妙な独り言である。 この女30歳という若さで急死。あの世で彼氏探しを始めた恋愛ひよっこの処女だ。 今日はあの世での職場である駅前の花屋さんに初出勤日だ。 別に働かなくても良いんだけど、タダ飯っていうのがどうも許せなかったから働くことに したのだ。 適当に綺麗に見えるメイクしてさっさと服を着替える。 接客業とか学生時代のアルバイトぶりだ。うまく出来るか

      • 「純潔は来世まで」第1話

        あらすじ ある日、平凡な看護師のミスイは原因不明の突然死によりあの世へ送られてしまう。処女であり、彼氏いない歴=年齢の彼女は来世に期待し、さっさと転生の手続きを済ませようとする。そんな時、あの世の役所で出会ったのは明るい性格の転生案内人のテルシだった。テルシいわく、転生までの間に恋人を作れば一緒に転生出来るらしい。生前親の言うことしか聞いてこなかったミスイはここで彼氏を作らないと自分は来世もつまらない人生になると確信し、まさかの、死んでから「彼氏」探しをスタートする。果たして

        • 月が眠るまで 第2話

          第2話 「職探しと満月」 目覚めると体をずっとうずめていたくなるような温かさの布団の中にいた。 隣で穏やかに眠る少年は、昨晩の情事などまるで知らないような顔だった。 雪のような肌に絹のような髪。 これはまるで、 「天使みたいだな。」 「魔女だよ。」 サクが照れ隠しに笑う。 改めて思うが妙なやつに拾われたものだ。 「待っててねアイリ。今朝食を用意するから。」 「待て、俺も手伝う。」 改めてキッチンを見るとやはり見たことがないもので溢れていた。 人間の指や食用花入り

        「純潔は来世まで」第3話

          人は多面体

          最初に言いたいことの全てをまとめます。 「人間って、サイコロみたいだから。1つの面だけに注目してもその人の全てはは見えないし、理解できないよ。」 人間関係において、 「毒親とはもう関わるな。」 「その彼氏と縁を切った方が良いよ。」 よく耳にするし、私自身も、よく言われてきました。だけど、本当に両者が救われるのって「別れ」という選択だけでしょうか。 決めつけるようで、すみません。この問いかけに対して、きっと皆さん、こんな台詞が出てくるでしょう。 「はあ?あいつが私を壊したん

          華やかイヤリングの佐藤君 第一話

          あらすじ 内気な少年、丸川亮。いつも一人ぼっちだったオタク高校生の元に派手な転校生がやってくる。名前は、佐藤流伽。ルカとの日々は丸川少年の世界を彩っていく。 ルカはノンバイナリーでメイク好きの少年。ルカと過ごしたり、彼のことを知るたびに丸川は変われることのうれしさを知り、おしゃれの楽しさ、生きることの楽しさに気づいていく。 しかし、いつも明るいルカが抱えていたのは重く暗い心の闇だった。 強いから武装するんじゃない、弱いからこそ強がるんだ。 男子×お洒落の青春ストーリー開幕。

          華やかイヤリングの佐藤君 第一話

          月が眠るまで 第1話

           第1話 「運命の交わり」 いつから殴られているのか分からない。体中の力が抜けて、抵抗する気も起きなくなってきた。 俺は血のにじむ視界で、何とか相手をにらみ返した。 すると、目の前の大男は太くて重い棍棒を思いっきり振って、俺に最後の一発を食らわせた。 「これに懲りたらもう二度とうちの店のモンを取るんじゃねえぞクソガキが!」 ドンッ 革靴で股を蹴られ、じんとした鈍い痛みとともに、血が滲んできた。思わず堪えていた涙が出る。 「ざまあみろ。」 肉屋の大男はそう言って、笑

          月が眠るまで 第1話